160. 静かな鼓動
160. 静寂な鼓動
なぜかオレは今、黒崎と千春と共に『ラブ☆メモリーズ』という恋愛シミュレーションゲームをやっている。夏帆は『どうしてもラノベ読みたいんで!読んだら合流しますから浮気しないでくださいね!どうせ声聞こえるので心配してませんけど!』とかウザいこと言っていた。
「うわっ、この子超可愛い。主人公のこと好きなんだね」
千春がそう言う。ヒロインの伊織が主人公のことを好きだと気づくシーンに感動している。
黒崎にやり方を教えたが、何回やってもうまくいかず、今は千春がやっている。
ちなみに千春はこのゲームをやったことがないらしい。なのに何故かめちゃくちゃ上手いし、選択肢も完璧だ。何なんだよお前……。これが女心なのか……。オレは黒崎を見る。
「ん?何かしら?」
「いや。別に……」
すると、ゲームの中の主人公がヒロインである伊織に向かって言った。
『君ってさ……もしかして近くにいる人のこと好きだったりする?』
その瞬間、千春の顔が真っ赤になった。そして、
「ち、違うもん!そんなんじゃないもん!」
「あっ千春?」
「秋兄お休み!」
と言ってコントローラーを投げて、自分の部屋に戻ってしまった。どうしたんだ?と思いながら黒崎を見ると、ニコニコ笑っていた。
「まだまだ雛山さんには刺激が強かったかもしれないわね?」
「……なんだよそれ?」
「まぁいいわ。これで邪魔者はいなくなったわけだし。大親友の私と一緒に楽しみましょうか神原君!続きは私がやっていいのよね?」
「えっちょっと待て!なんでそうなる!?」
オレは黒崎の持つコントローラーを押さえながら言う。ダメだここで黒崎に渡したら絶対ゲームオーバーになる。せっかくここまで千春が攻略してくれたんだ、ここでしくじったら最初からで、頭おかしくなるぞ
「ちょっと離して神原君。」
「落ち着け。黒崎。よく考えろ。ここは二人で協力プレイだ。そうすればきっとクリアできるはずだ」
「……確かに。一理あるわね。じゃあ一緒にやりましょうか」
そう言って黒崎が急に力を弱めたのでコントローラーを引っ張ってしまい、バランスが崩れた。
「ちょっ!?」
オレはそのまま床に押し倒されてしまい、黒崎がそのまま覆い被さってくる。手の位置が黒崎の胸の辺りに……ヤバイ……動かせん。しかも黒崎のいい匂いがする……。なんかもうこのままでも…… って何を考えているんだオレは!!
しかも黒崎は驚いているのか固まったまま動かない。黒崎の温もりと静かな空間の中で心臓の音だけがドクンドクンと聞こえて、妙に緊張してしまうのだった。