153. 春と夏の攻防戦
153. 春と夏の攻防戦
なぜかオレの部屋の雰囲気が重苦しい……。夏帆はキッチンで夕飯を作っている。千春はソファーに座ってテレビを見ている状況だ。
「あっ!千春ちゃん。苦手な食べ物とかありますか?」
「大丈夫です。」
「分かりました!じゃあ今日は先輩の胃袋を掴んだ、夏帆ちゃん特製絶品オムライスを作りますからね!」
「そうなの秋兄?」
「まぁ……間違いじゃないけど……」
「ふーん。オムライスって誰でも作れそうだけどなぁ……。」
なぜかすごいマウントをとり始める夏帆。そしてそれを煽る千春。なんだこれ?ここはオレの部屋だが、この空間にオレがいる意味あるのか?そんなことを考えながら、オレは料理をする夏帆を眺めていた。
「出来上がりましたよー!」
テーブルの上に並べられたオムライスを見てオレは思わず声を上げる。
「おぉ!!いつ見てもめっちゃ美味しそうだな!!」
「ふっふっふ。私の手にかかればこんなもんですよ!」
「なんか普通に見えるけど……」
胸を張る夏帆。それを否定する千春。誰か助けてくれ!もう耐えられん!とりあえず三人揃って手を合わせると、早速一口食べる。うん。やっぱりめちゃくちゃうまいわ。オレが食べてることを確認するように、夏帆はチラチラと見てくる。なんだろう……可愛いんだけどすごくウザい。
「どうですか先輩!?」
「あっああ……美味いよ。」
「ですよね!やっぱり先輩は私の料理の虜ですもんね!」
「そうなの秋兄?」
千春はすごい蔑んだ目でオレを見てくる。あれ千春ってこんなに怖い子だったかな?それにしても何なんだこの空気……。誰かなんとかしてくれぇ!!!
「そろそろ帰ろうかなぁ……」
夕食を食べ終えると、千春は帰る準備を始める。
「えっ?もう帰るんですか?」
「だって明日学校ですし。それに私がいたら迷惑だから」
「いえいえ全然いいですよ!むしろ大歓迎です!」
「お前が決めんなって!千春が迷惑してるだろ?」
「じゃあまた明日ね。秋兄、夏帆さん。」
そう言って千春は自分の部屋に戻る。そのあとなぜか知らないが夏帆は独り言のように「おとなしいふりしてかなり強気ですね。侮れません」とか言っていた。