140. 祝福の桜吹雪
140. 祝福の桜吹雪
そしてお花見。オレたちは目的の公園にたどり着く。そして場所を確保して、桜の木の下にレジャーシートを敷いて腰掛けた。
「うーん!綺麗ですね」
「そうだな」
空は晴れ渡っていて雲一つない。絶好の花見日和だ。
「先輩、今日も私の隣に座ってくださいね?あーんしてあげますから」
「そんなのいらん。」
「いいじゃないですか。ほらほら早く座ってくださいよ〜。いつも通りにしてくださいってば!」
「オレはいつも通りだろ」
夏帆のやつ、なぜか知らないけど千春に見せつけるようにアピールしてくるな。正直ウザい。そんなことしなくても、千春はオレのことなんとも思ってないのに。
「秋兄と夏帆先輩、2人とも仲良さそうで羨ましい。」
「えへへ〜お似合いですよね?」
「え?あっはい。」
「自分で言うなよ。悪いな千春。こいつうるさくて」
「ううん、全然大丈夫。私お邪魔じゃないかな?」
「そんなことありませんよ。ねぇ先輩?」
「お邪魔?私は親友だから大丈夫よね神原君?」
こんな感じでしばらく他愛のない話をしながら花見を楽しむ。こうやって4人でいるのは初めてだから不安だったが、意外にも千春は馴染んでいるようで良かった。
「あら?飲み物がなくなったみたい。」
「は?飲み物は黒崎の担当だろ?」
「持ってきたわよ。私が持てる範囲で。」
「……それじゃ足りないだろ。お前の持てる範囲じゃ、ペットボトル3本くらいが限界だろうが」
「なら私買ってくるよ。入り口に自販機あったし。」
「ならオレも行くよ」
「じゃあ私はオレンジジュースがいいです!果汁100%の!」
「私は烏龍茶がいいわ。お願いね」
なぜか歓迎されるはずの千春と共に入り口にある自販機まで向かうことにする。それにしても、今日の千春の服……なんか大人っぽいというか。いつもより色気がある気がする。髪の色とか服装も変えてるみたいだし。
「ん?どうかした秋兄?」
「お前がいつもと違う格好してるなって思っただけだよ。髪型も少し変えたのか?」
「そっ、そうかな!?ちょっとメイクもしてみたんだけど……」
「似合ってるぞ。その髪型もいいと思う。」
「ありがと……」
千春は嬉しそうな表情を浮かべると、そのまま顔を背けるようにして前を歩く。そして少し歩いたあと、振り向きこう言った。
「あのね、私がおしゃれしているのは秋兄に見せたいからだからね……」
その瞬間。風が吹き、桜の花びらが舞う。舞い散った花びらは、まるで千春のことを祝福するように降り注いでいるかのようだった。