126. みかんとオレンジ
126. みかんとオレンジ
「ねぇ先輩?こうやってコタツに入ってみかんを食べてると幸せですよね?」
「そうだな」
「コタツの中で私に悪さしてもいいですよ?触ったりとか?まぁ私は許しますけど」
「しねぇよ。あとオレを変態扱いするのやめてくれないか?」
そんなことを言いながら、オレはみかんを口に運ぶ。
「ところで、来年は受験ですけど……先輩って大学に行くんですか?」
「うーん……とりあえず、大学は出ときたいと思ってるから行くと思うぞ」
「そうですか。でも大変ですね」
「まあ、確かにな」
みかんを一つ食べ終わると、次は別のみかんを手に取る。
「ちなみに先輩ってどこの大学に行きたいとかありますか?」
「別にないかな。特にやりたいことも決まってないし」
「そうなんですか……」
そう言うと、夏帆が少しだけ俯いた気がした。何かあったのかと思い、心配になって顔を覗き込む。
「え?どうしたんですか?キスしたくなりました?」
「ちげぇよ!お前大丈夫なのかなって思ってさ」
「何がですか?」
「いや、なんか元気なさそうだったから……」
「あと1年なんだなって思って。先輩が大学に行っても、就職をしても一緒にいれる時間が少ないなって……」
その言葉を聞いて、無意識のうちに夏帆の頭を撫でていた。今年1年が高校生活最後の思い出になるだろう。だから、少しでも夏帆と楽しい時間を過ごせるようにしたいと思ったのだ。
「先輩……」
夏帆はそのまま唇を近づけてきた。それをオレは拒むことなく受け入れる。
「えへへ……みかんの味しますね?」
「そりゃ食った後だしな」
「じゃあもう一回いいですか?私みかんとかオレンジとか好きなので!」
「調子に乗るな」
そう言って再び頭を押さえつける。
「痛たっ!もう先輩は乱暴ですね!」
「はいはい、すまんかったな」
「まったく誠意がない謝罪ですね。仕方ありません、ここは私の身体を差し出すしか……」
「うるさい黙れ」
こうした日常もいつか終わりがくる。それなら精一杯楽しまないと損だ。だからオレは夏帆と一緒にいたいと改めて思うのだった。