82. 間接的だけど
82. 間接的だけど
10月下旬。日々寒くなっていくな……そんなことを考えながら下校していると、夏帆に出会う。
「あっ!先輩!一緒に帰りましょ!」
「ああ」
オレと夏帆は学校から帰ればオレの部屋で夜まで一緒だが、学校では一切関わらないようにしている。だから帰り道に偶然遭わない限り一緒には帰らない。
「…………」
「…………」
お互い何も喋らず歩き続ける。なんだ?なんかあったのか?いつもならもっと話しかけてくるはずなのだが、今日はずっと黙り込んでいる。
「夏帆。なんかあったのか?」
「え?何がですか?」
「いや……お前黙ってるからさ」
「学校帰りに仲良くお喋りすると先輩に悪いかなって思って」
なんで急に気をつかうんだこいつ?今までそんなこと気にしなかっただろ?
「……別にいいよ。今更遠慮なんてしなくて。もうオレとお前は付き合ってるって噂されてるし」
「そっそうですよね!じゃあ普通に話します!えへへ〜」
「おい!引っ付くな!」
「だって寒いんですもん〜ほら手もこんなに冷たいです!」
と言って夏帆は自分の手をオレの手に絡めてきた。急に元気になったなこいつ。しかもこいつは本当にスキンシップが多い。多すぎる。しかもウザい。
「あ!そうだ!先輩!ちょっと寄りたいところあるんで寄ってもいいですか?」
「ん?ああ、別にいいけど」
というわけで近くのコンビニに入った。そして温かい飲み物を買う。
「はい。先輩コーヒーどうぞ?どっちがいいですかブラックとカフェオレ?」
「どっちでも……お前まさかまた白黒とか言うんじゃねぇだろうな?」
「違いますよ!今回はそんなこと考えてませんよ!」
「ならブラックでいいよ。お前甘いのしか飲めなそうだし」
「むぅ……失礼ですね!私だってブラックくらい飲めますよ!」
と言いながら夏帆はブラックコーヒーを一口飲む。
「苦ぁ!?」
「ぷっ……」
「笑わないでくださいよぉ!」
「ほら。飲んでやるから。お前はこっちのカフェオレを飲め」
そしてそのままコーヒーを飲みながら家に帰る。やっぱり夏帆は色々しゃべっていた。まぁその方が、こいつらしいからいいか。
「あっ!」
「どうした?なんか買い忘れたのか?」
「先輩……それ間接キスしちゃいましたよ!?」
「ぶっ!!ばっか!変なこと言うな!!」
「ふふふー顔赤いですよ先輩!」
「うるさい!」
くそっ。意識しないようにしていたのによ。その日、夏帆は部屋にいる時ずっとニヤニヤしていたのだった。本当にウザいやつだ。