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ダリヤとぼく

私は、彼女を抱きしめ、耳元で囁き続けた。「大丈夫。ずっと一緒だよ」それから、私達はひとつになった。そして翌日。私たちは、海へ向かった。私は自分の体にナイフを突き刺して自害した。これですべてが終わると思ったからだ。しかし、不思議なことに痛みはなかった。私の身体が光り輝いていたのだ。やがて私は、人魚の姿となった。
私の目の前には巨大なサメの影があった。私は、それをじっと見つめた。私の中に入って来たサメの気持ちが理解できた。「そうか、これが私なのか。お前たちは私なんだ。私の一部であり、私ではない。私が生きている限り彼らは存在し続けるんだ。
私の命を喰らうことで永遠に生きることができるんだ」
私の体から何かが出ていく感覚を覚えた。それは魂と呼ばれるものだろうか。その途端に意識を失った。気が付くと私は病院のベッドの上だった。「どうやら君のおかげで事件の真相が明らかになったようだ」
私はジャックを睨み付けたが、彼は私を抱き締めてきた。彼は何もかもお見通しのようだった。私は彼にすべてを告白することにした。私は彼の腕の中で眠りについた。私は彼の温もりの中で安らぎを得た。
こうして、私の復讐劇が終わったのである。
俺は、ダリアという女が嫌いだ。彼女を見るとイラつく。何故なら、彼女の外見は美しいからさ。
顔立ちが良くスタイルも抜群だ。そんな女性が、俺の前でだけ素顔を見せてくるんだぜ。その優越感といったら言葉に表せないほど最高だったよ。
彼女との付き合いは高校1年の時に遡る。同じクラスだったが、最初はほとんど会話をしたことがなかった。ある日、彼女が転校生で両親がいないことを知った。俺の両親は離婚しており母に引き取られていた。俺が再婚したいと考えている女性が現れたが彼女は拒否して独り身のまま。その話を聞いた俺の母も結婚をあきらめてしまったらしい。そこで、父さんは彼女の家に連絡したそうだ。だが、彼女は独り身の理由を話したがらなかった。仕方なく、彼女は両親のいない家で一人暮らしをしているということになった。
この話を聞いて、俺は彼女を憐れむと同時に、俺と同じ境遇であることに興味を抱いた。だからといって、いきなり話しかける勇気などなかった。そんなある日のこと、教室に入るとダリアがいた。「レンタル木魚、一緒に愛でない? かわEよ」なんて意味不明なことを言って笑っていた。もちろん無視したがな。すると、彼女はしつこく話しかけてきて、いつの間にか友達になっていた。
俺とダリアの関係は、学校では友人として接し、家に帰ってからは電話をする間柄になった。お互いのことをいろいろと話し合ったが、彼女が両親がいないことだけは教えてくれなかった。俺は別に知りたくもなかったけどね。ただ、彼女がレンタル木魚が好きだということだけはわかった。そして、彼女は俺のことが好きだということにも気づいた。
しかし、当時の俺は恋というものがよくわかっていなかった。俺は、恋愛ゲームで疑似体験するだけだった。まぁ、ダリアとは毎日のように遊んでいたから、疑似恋愛みたいなものだったと思う。でも、それじゃ満足できなかったんだよね。もっとリアルに感じたいと思ったわけ。だから、脱いだ。体育の授業中に脱いだ。そしてマッパで教室の彼女に向けて叫んだんだ。俺は運動場の中心で叫ぶような奴ではなかったが、その時ばかりは違った。
「好きだ! 付き合ってくれ!」って大声で言ったんだ。すると、ダリアが真っ赤になりながら俺に近づいてきた。そして、俺に抱き着いてこう答えたんだ。「あたしも好き。大好きだよ、タケル君」
こうして俺たちは恋人同士となった。その日から、レンタル木魚夫婦になったんだ。
おわり。

 
挿絵


あとがき。いかがだったでしょうか。これにて完結です。最後まで読んでいただきありがとうございました。この作品を書くにあたって、一番苦労したのはダリアの設定ですね。当初は金髪碧眼という設定だったのですが、なぜか黒髪茶瞳になってしまいました。

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