65. 波乱の幕開け
65. 波乱の幕開け
今日は夏帆と買い物に出掛けている。なんか調理器具を買いたいと言われ無理矢理連れ出された。まぁ週末に夕飯を作ってもらってるので文句は言えないが。
「うーん。ねぇ先輩これとこれどっちがいいと思いますか?」
そう言って見せてきたのは包丁だった。正直分からない。面倒だから適当に答えておくか。
「こっちの方が切れ味良さそうだな」
オレは適当に指差した。すると夏帆はニヤリとした顔を見せた。
「なるほど……分かりました!」
夏帆は笑顔でレジに向かった。なんだ? なんでそんな嬉しそうなんだよ。
「先輩!次はお鍋買いましょ!寒くなる前に用意しておきたいんです!ほらほら早く」
急かすように腕を掴まれ、引っ張られる。
「ちょっ!?待てって!まだ買うのかよ……」
「当たり前じゃないですか!せっかくならいいものを揃えたいですからね!」
そして鍋コーナーに着くと色々と吟味し始めた。
「あ、この土鍋可愛いですね……。でもちょっと高いかなぁ……。あっ!この片手鍋もいいかも……。いやでもやっぱり大きい方がいいよね……」
ぶつくさ言いながら真剣に選んでいる。
「おい、夏帆。もうよくないか?そろそろ帰ろうぜ」
「ダメですよ!ちゃんといいものを買っていかないと!私と先輩のラブラブなお鍋なんですから!」
何を言っているんだこいつは……。相変わらず変なことばかり言う奴だ。
「よし決めた!これにします!これで美味しい美味しいご飯食べられますね!嬉しいです!」
はしゃぎながら夏帆はレジに向かう。その姿を見てオレは思った。
「あのバカ……。本当にしょうがないやつだな……」
思わず笑みがこぼれた。そしてオレ達は店を後にする。帰り道の途中、オレは夏帆に言った。
「お前、本当料理好きだよな」
「はい!大好きです!」
満面の笑みで答える。いつも見ているはずの笑顔なのに何故かドキッとする自分がいた。そんな時、新たな始まりに波乱が起きることになる……。
「あれ神原君?」
「ん?黒崎!?」
「誰ですか先輩?」
そこに立っていたのは同じクラスの黒崎冬花だった。どうやら偶然通りかかったらしい。ヤバい……恐れていたことが起きてしまった……。よりによって学級委員の黒崎に見つかるとは……。
「えっと……。ああ。その子が噂の1年生の彼女?」
「いやこいつは……」
「あなた先輩の何なんですか?もしかして彼女の座を狙っているんですか?残念ですけど譲りませんからね!」
「お前は彼女じゃねぇだろ!もう黙ってろ!」
「ふぅ~ん。そうなんだ。へぇ~」
黒崎の顔つきが変わる。まずいな……。このままだと夏帆との関係がバレてしまう。どうにかしないと……。