20. 気分的に新しいもの
20. 気分的に新しいもの
そして約束の週末。朝早くにインターホンが鳴る。
「おはようございます!先輩!」
「ふわあぁ。お前早すぎるだろ?何時だと思ってんだよ?まだ7時だぞ?」
「えへへー、先輩とデートですからね。張り切ってきちゃいました」
「デートじゃないからな?オレはただお前の作った手料理を食べるだけだ」
「だから料理デートですよね?とりあえずお邪魔しまーす!」
白石はすごく元気だ。なんでこんなに元気なのかは知らんが……もう少し寝てたかった。まぁ仕方ない。
「あれ?ねぇ先輩、調味料がないんですけど?」
「は?お前……オレの部屋で作るのか?自分の部屋で作れよ……」
「それじゃ料理デートになりませんよ!あっ!器具も全然揃ってないじゃないですか!もう……まずは買い物デートからですね!ほら先輩着替えて!」
「おい押すなって!分かったから!着がえるって!」
なんだこの展開……。こいつ……強引すぎるだろ。でも確かに自炊をしないから調理器具や調味料がないのは認めるけどさ……そんな急ぐことか?
それからオレは着替えて白石と買い物に行く。
「あっ先輩。手を繋いでください」
「嫌だよ」
「えぇ〜。だって今日はデートなんですよ?恋人同士なら普通に手を繋ぐはずですよ?」
「だから付き合ってねぇし。これはデートでもなんでも……」
すると白石はいきなり腕を組んでくる。これはヤバい……。当たっている感触が……。
「おまっ!?離れろよ!」
「先輩が手を繋がないからですよ?」
「いやそういう問題じゃなくて……当たってるんだって!」
「当ててるんですよ?ふふっ。私にドキドキしてますよね?」
「バカ野郎!してねぇよ!いいから離れろって!」
本当にこいつは面倒くさい女だ。そのまま調理器具を買い、そのあとはスーパーに行くことにする。
「ねぇねぇ先輩、何食べたいですか?」
「お前が作れるもので別に構わないぞ。」
「じゃあ定番のオムライスでいいですか?ケチャップでハート書いてあげますね?」
「結構だ。というかなんの意味があるんだよそれ……」
まずは卵と鶏肉と玉ねぎだな。確か米はあるはずだ。
「卵だろ……次は……」
「ちょっと先輩!ちゃんと日付見たんですか?ダメですよ卵とかお肉は日付見ないと!」
「……今日食べきれる量だと思うんだが?」
「ダメです!気分的に新しいものの方がいいです!もう、先輩は彼女の私がいないとやっぱりダメですね。ほらカートを押してください。次は野菜コーナーに行きますよ?」
いや……間違ってないんだが……なんか白石に言われるのはムカつく。だが実際オレは何もできないから従うしかない。こうして、オムライスの材料を購入したのだった。