12. プリンは買わん
12. プリンは買わん
オレと白石はカフェにしばらく滞在し、注文した飲み物を飲んでから、お会計を済ませて外に出た。
「いやぁ……すごく美味しかったですね!」
「そうだな」
「今度来た時は別のメニューも頼んでみよっと!」
こういう無邪気にはしゃいでいる姿は、本当に可愛らしいと思う。そう思って白石の顔を見ているとオレと目が合う。
「どうしました先輩?もしかしてキスしたくなりました?」
「そんなわけないだろ!」
「えー、じゃあなんで私の顔を見てたんですか?可愛いなぁって思ってたんじゃないんですか?」
「うぜぇ……」
相変わらずこいつはオレをおちょくってくる。まあそれもこいつの個性だからいいんだけどさ。その後、帰るために駅に向かって歩いていたのだが、不意に白石が口を開いた。
「あっ!先輩!あのぬいぐるみほしいです!まだ時間ありますし、ゲームセンターによって行きましょう!」
「ゲームセンターか……まあいいけど」
「やった!じゃあ行きましょう!」
そしてオレ達はクレーンゲームコーナーに行き、100円玉を入れてアームを操作する。このUFOキャッチャーは結構景品の種類が豊富で、いろんなアニメのキャラクターグッズが置かれていた。その中の一つにあるペンギンのぬいぐるみが白石の欲しがったぬいぐるみだ。
「先輩!私の彼氏なら、あのペンギンちゃんをこの箱から救いだしてください。私は先輩の愛を信じてますよ!」
「だから彼氏じゃねぇだろ!なおさら取りたくないんだが?」
「えっ!?どうしてですか!?」
「なんでもだよ!!」
全く……こいつと一緒にいるとツッコミ疲れるんだよ……。その後も白石は『先輩ならきっとできる』とか言ってオレに何度も挑戦させた結果、何とかそのペンギンを取ることが出来た。
「ほらよ」
「ありがとうございます!大事にしますね!」
「はいはい」
嬉しそうな表情を浮かべながら、白石はそのペンギンを抱きかかえる。喜んでくれているようで何よりだが、こうやって喜んでいる姿を見ると、やっぱり女の子なんだなって思う。
「あの先輩?」
「なんだよ?他にも取りたいぬいぐるみがあんのか?」
「ううん。やっぱり先輩は優しいなって思って。結局ペンギンちゃんを一生懸命取ってくれましたし。私は愛されてますね?」
「うるせぇ……そのペンギンのせいで金がなくなったから、しばらくプリンは買わん」
「えぇ!?あっ!そのプリンも私のために買っておいてくれてますよね?先輩食べてるところ見たことないし!ねぇねぇ先輩私のためなんですよね?」
くそっ本当にうぜぇ……。でもたまにはこうやって、白石と外で遊ぶのも悪くないなと思うオレがいるのだった。