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第1章の9話 彩雲の騎士VS災禍の獣士

――一方、アユミは。
あたしはあの後、生きている人がいると思われるところを目指したの。
それがここだった。
現場は山火事で、幾人もの子供達の血の海が広がっていた。とても凄惨な現場だったわ。
あたしは1人1人呼びかけた。ホントに怖かったわ。呼びかけるだけでドキドキしちゃう。
そして、その中で1人だけ生きている人を発見したの。
女の子だったわ。この子は長崎学院生ね。初めて見る顔とレッドワインのブレーザーを着ていたんだもの。
あたしはやったと思った。
あたしはすぐにこの場を抜け出そうとして、この子に肩を貸してこの場を離れようとした。んだけど……。
突然、目の前に大きな火の球が現れた。
(死んだ……)
ごめんねスバル君。
あたしは死を悟り、目を瞑ってその時を待った。
だけど、いつまで待っても、この身に痛みは走らなかった。
あたしはなぜかと思い、その重い瞼を開けてみたら……。
周りには炎の壁が出来上がっていた。
「なに、もしかしてあたし達を焼き殺す気!?」
なんて邪道な……
あんたなんて、正義の味方にやられちゃえばいいのよ。
「ゴホッゴホッ!」
咳き込むあたし。口元を手で覆い、直接煙を吸うのを防ぐ。
(けどこの炎の勢い、ここにいるだけで蒸し焼きになりそうだ)
あたしはたまらず、この子に肩を貸していたんだけど座り込んでしまった。
気絶しているところ悪いんだけどその子は、膝を折ってその場に倒れた。
ごっごめん。だけど許して。
――その時、ついでに野イチゴも焙られていた。
その匂いは芳醇に漂い、ただ死を待つよりもいくらかマシだった。
(この匂い、ラズベリー系……。
そう言えば宇宙人だったな……。
確か宇宙の匂いって、ラズベリーを焙ったような匂いだって、確か昔、誰かが言ってたような……。
この匂いに包まれて死ぬなんて……縁起でもない……)

――その様子を俺は離れたところから俯瞰していた。俺がいるのは枝木の上だ。
その近くの枝木の上には、2匹の炎獣がいて、その口から火炎放射を放っていた。
炎の勢いが強いのには訳があった。
「このまま焼き殺すのもいいが味気ないな……お前達!」
「「!」」
炎獣達はその攻撃をやめた。
「充分だ! お前達はこの森に散り、さらなる与力としろ!!」
「ワン」
「クゥ~ン」
炎獣達は頷いて答えた。
だが、さらなる与力とはいったい……。
「そして、一気に地球人達の街を滅ぼす!! さあ、行けっ!!」
そして、炎獣達はこの森に散っていったのだった。

ゴォオオオオオと炎の勢いは衰えない。
激しさを増すばかりだった。
(……どうにかしてここから逃げられないだろうか……)
その時、あたしの脳裏にある考えが過った。
だが、その炎の壁はあたし達の身長よりも高く、その炎症範囲も広い。
ここから走って飛んで逃げるなんて、そもそも無理だ。
そんな自殺行為できる人なんていない。
(他に手は……)
あたしはあいつを探した。左右を見渡し、顔を見上げて探して、大きな炎を発見したんだ――
(――いた)
あんな高いところの枝木の上にいる。大きな炎が。
「見張ってる……あたし達を焼き殺す気だわ……! ゴホッゴホッ」
あたしを咳き込んだ。
その時、一酸化炭素中毒を起こし、視界がグニャと歪んだ。
(まずい……本気で死んじゃう……ッッ)
あたしは地に伏せた。
(ダメだ、もうダメだ。このままあたしは焼け死ぬんだ……短い人生だったなぁ……)
ジリジリと炎の勢いが増していき、段々と円形の炎が小さく狭まってきた。
迫りくる炎。
あたし自慢の色白の素肌に火の粉がチリチリと吹きつける。
あたしはその目を閉じた――

「……フッ、一思いに焼き殺してやる! 業火の人柱となれ!! 『堕威炎戒(だいえんかい)』!!!」
その時、『堕威炎戒』の炎は呼応した。
炎は今までにないくらい激しく燃え上がり。俺のいる高台の枝木の目線まで炎柱を上げた。
俺は手を上げた。
「さあ、散れ!!!」
俺は振り上げた手を下した。
火炎柱が一点に向かう。
それは地に伏したアユミの元へと――

その刹那、一直線に光が伸びた。

光は迷いなく激しく燃え上がる火炎柱に突っ込み。中心部から閃光を放って吹き飛ばした。
舞い荒ぶ大量の火の粉。
俺はその光景を高台の木の枝から見下ろしていた。
「……ッッ」
まさか……ッッ
舞い荒ぶ火の粉が光に当てられて輝く、虹色の光。
その者は光の柱を立て、1人の少女を抱き、地に伏した少女の横に立っていた。
新しく生まれ変わった者には、新しい名が必要だ。
その者の名は――【彩雲の騎士】だった。
それはスバルとLが融合した姿だった。


☆彡
俺は、高台の木の枝のところからその者を見下ろしていた。
その者は抱いた少女を労わるように、その頬に手を添えていた。
「アユミちゃん、アユミちゃん」
誰かがあたしを呼びかける声がした。
あたしは震える重い瞼を開けた。
あたしの視界が捉えたのは虹色に光る何かだった。
その人に抱かれて、何か温かいものを感じた。
ふ、ふ、震えるあたしの口からでたのは何もなく、声すら出せないまでに、酷く衰弱していた。
「…………」
「……わかったもういい。もう何も言わなくていい」
あたしはその人から優しい言葉をかけられた気がした。
あたしは笑みを作ろうとしても作れず、せいっぱいの笑みを浮かべた。
「……大丈夫。この子の隣にいて」
僕はそう言い。まるで幼い子供をあやすように、もう1人の名前すら知らない女の子の隣に寝かせた。
「すぐ迎えに行くから。バリア(エンセルト)」
僕は2人にバリア(エンセルト)を張った。
これでひとまず大丈夫。
「……」
僕は、高台の木の枝にあいつを睨みつけた。
「フッ、そうかお前はLだな! ハハハハハ! これは僥倖(ぎょうこう)だ! まさかあの現場に適合者がいたとはな!」
「許さない!!」
僕は本気で怒り、オーラが立ち昇る。
「クククッこれは少しは楽しめそうだ!」
「お前だけはっっっ絶対にッッッ!!」
「さあ、この体に眠る力を」
「許せないッッッ」
「試させてもらおう!!!」
彩雲の騎士は飛んだ。
災禍の獣士はその場から躍り出た。
空中で両者が相対する。
僕は殴らないと気が済まなかった。拳を突き出す、その拳にはバリア(エンセルト)が乗せられていた。
Lだ。Lも殴らないと気が済まなかったのだ。
レグルスはそれを炎上爪で応じた。
2人の業が空中で衝突した。エナジーアの圧と炎の圧と激しくぶつかり合う。
「グググ」
「オオオ」
「グググググ」
「オオオオオ」
「クァアアアアア」
咆哮を上げる彩雲の騎士と災禍の獣士。
競り勝ったのは彩雲の騎士だった。災禍の獣士をぶっ飛ばした。
彩雲の騎士(僕達)はすぐにその後を追う。


☆彡
――追い迫る彩雲の騎士。
彩雲の騎士は蹴りを繰り出す。
だが、スバルの時にはその足は折れ曲がり、粉砕骨折していた。
その足も新しい者に生まれ変わったとき、動けるまでに回復していた。
さらに、Lはその少年の身を案じ、かつ、勝つためにバリア(エンセルト)を攻撃に用いた。
その蹴りには、バリア(エンセルト)が上乗せされていた。
ぶっ飛ばされた災禍の獣士は空中で静止し、そのまま攻勢に応じる。
災禍の獣士の炎上爪。
「でや!!」
「ぬぅん!!」
ドンッとまたもや空中で2人の護りの蹴りと炎上爪が交差した。
互いのエナジーアの圧と炎の圧がぶつかった。
すかさず、災禍の従士はもう片方の炎上爪で攻勢に移り、彩雲の騎士はそれを護りの腕で受け止めた。
ドンッと炎の圧がエナジーアの圧を追い詰める。
だが、彩雲の騎士は負けまいとその身に宿る力を高めた。
「クォオオオオオ」
「ヌグググ」
両者の打ち合った炎上爪と護り腕の圧。
互いに奇怪な姿勢のまま、その圧を高める。
――ゴゴゴゴゴ
それに呼応して、空中に昇っていく火の粉がパァンパァンと爆ぜていった。
この勝負の競り勝ちは、

((エナジーアが強いほうが勝つ!!!))

それはLとレグルスの勝とうする意志の強さだった。
だが、エナジーアについて何も知らないスバルは、こう尋ねた。
(エナジーア……?)
(エナジーアというのは君達で言うところのエネルギーの総称! そのエネルギーの優劣によって勝敗が決まるといってもいい!
僕はなるほどと思った。
だが、それには当然過負荷がかかる。
圧を高めようとすれば、全身に力を込めるため、弱っている箇所にどうしても負担がいってしまう。それが過負荷だ。
スバルはエネルギー変換前、既に足を骨折していたがために、Lにも共有の痛みが及び、思うように全開の力が引き出せなかった。
一番最初の攻勢は、過負荷の事を一切考えてなかったから、競り勝っただけだった。
だが、今は違う。
「クッ……クッ……ッ」
く、苦しい。僕達は戦い始めから重いハンデを背負っていたんだ。
だからこそLは、浮遊することでその痛みを緩和しようとする狙いがあった。
「「ヌギギギギ」」
(イッツ~~)
Lと一心同体である僕にも過負荷がかかり、今にも泣きだしそうなほどの激痛が押し寄せてくる。
正直、痛い、泣きたい、みっともなくなく泣き出してしまいたい。
でも、だけど、僕達は負けるわけにはいかない、だからこれを我慢して戦うしかない。
(がんばって! 地球の子!)
(うっうん……! 泣けない……泣けばこの子にも不安を伝わり負けてしまう。それは申し訳ない……ッッ!! 僕は負けるわけにはいかないッッ!!
何か大切なものを失うぐらいなら、どんな事だって我慢できる!!
だから……今だけは――!!!)
僕は全身という全身の力を、この戦いで絞り出す気でいた。
「「クックァアアアアア!!!」」
――オォオオオオオ
と心の同調率と体の共有率が高まり、それが悲鳴を上げるようにパワーへと転化して、災禍の獣士を追い詰める。
こ、この若輩者共め。
「ぬ……ヌォオオオオオ!!」
俺はエナジーアを高める。だが。
な、なんだと、俺のパワーが競り負けてる!?
「「でやぁああああ!!!」」
彩雲の騎士はバリア(エンセルト)を上乗せした拳を突き出して攻撃した。
ドンッと災禍の獣士は大きく吹っ飛んだ。
「「――! いけるッ!!」」
僕達は押し勝っていた。いけると感じた僕達は好機(チャンス)だと思い、追い打ちをかける。
僕達は中空を駆けた。
僕達の足は、一度だって地面についてすらいない。これはもはや滑空と呼べるものだ。
その体感速度は、僕が今までに体験したことがないもので、どんなものよりも早く、その追随を決して許さないものだった。

【――それはスバルが生まれて初めて感じる、人知の及ばない隔絶した世界観だった】

(何だ視界が……)

【――それは目まぐるしいものだった。
初めは、周囲のものが目まぐるしい速度で駆け抜け。
どんなに遠くのものを見ようとしても、前方の一点だけしか見えず。近くにあったものは既に置き去りにしてしまう程の速さ。
さらに視界が急激に狭まっていき。前方の一点だけが遠くに遠ざかっていくような変な感覚――辺りの視界が暗くなるという、超高速を超えた世界。
そうこれは、高速、亜音速、音速を超克し、亜光速の域に迫ろうというものだった――】

(駄目だ……意識が置いて行かれる……)
待って。僕は手を伸ばしてそう叫んだ。
そして、あの子は先へ先へと進んでいった。

【――強大な力は時に、2人のシンクロ率を大きく妨げ、乱す要因となる。それだけ、まだ力の差がスバルとLの間にあったのだ――……】

僕はこの時、こう感じたんだ。
僕達の体は1つなのに対し、彼が1人で先行する程の力の差があったんだと。
また僕は、クラスのみんなだけじゃなく、この重大な局面においても、置いてけぼりくらうのか。くっクソッ……。

(待って――……)

――生死をかけたバトルが繰り広げられる。
彩雲の騎士の手が伸び。大きく吹っ飛んだ災禍の獣士の足をガシッと掴む。
「ッ」
(クソッ)
俺は連撃を食らう覚悟をした。だがな、そう、すべて上手くいかないぞ。
僕は連撃を叩き込む。喰らえッ。
――ドドドドドッ
僕は両の拳にバリア(エンセルト)を上乗せして、拳を強化して連撃を見舞った。殴る殴る殴る
普段の一撃一撃の重みは小さいだろう。だけど、それを補うのが工夫なんだ。
「クォオオオオオ」
殴る殴る殴る。
「だあっ!!」
力いっぱい殴られた災禍の獣士は地面に叩き付けられ、大きくワンバウンドした
「グッ」
(行くぞっ!!)
さらに連撃は続く。
僕は宙に浮かんだ災禍の獣士を蹴り上げた。
僕は両手にバリア(エンセルト)を張り、それをエナジーア弾にも上乗せした連続攻撃だ。
その名は。
「『エンセルト・エナジーア弾』!!!」
この時、僕は気づいていたかもしれない。
バリアを上乗せしてからエナジーア弾を撃つほうが威力が高まることを。
そして、まだ十全にこの体の潜在能力(ポテンシャル)を引き出せていないことを。
「連射だ――!!!」
僕は次々にエンセルト・エナジーア弾を撃ち続けた。
僕は頭上にいる相手めがけて撃ちまくる。ドドドドドッと小爆発が起こる。
「オオオオオ」
と悲鳴を上げる災禍の獣士。
背面からエンセルト・エナジーア弾の猛威が振るう。
――オオオオオ
その連撃を浴びる度に、上に上にその体が上がっていく。
マズイッこのままではマズイッ。
俺は苦手としているバリア(エンセルト)に手を出した。炎のバリア(エンセルト)、名付けて――
「――『炎上守護球』」
ドンッと災禍の獣士が張ったバリア(エンセルト)によって、彩雲の騎士の連撃は阻まれた。だが――
シュンとその場に彩雲の騎士が現れた。テレポート(チルエメテフォート)だ。
そして、そのまま――
「――『エンセルト・プシキキニシス・オディブ』!!!』」
「!!」
「忘れた!? バリア(エンセルト)は僕の十八番なんだよ!」
(しまっ!!)
『エンセルト・プシキキニシス・オディブ』。それはバリア、サイコキネシス、ドライブの三拍子が揃った彩雲の愚者が放つ必殺技だ。
その技の特徴は、相手が張ったバリア(エンセルト)の上から、さらに自身のバリア(エンセルト)を被せて、攻撃技に転じる技だ。
この技にかかったら、そうそう脱出なんてできない。
それは隕石も欠くやという速度で、斜め下方向に落下し。着激点から大きくドォオオオオオンと大爆発したのだった。
僕は空中からその爆発現場を見下ろしていた。
僕は手応えを感じ。
「勝った……!」
と呟いた。


☆彡
大爆発の衝撃と熱で、木々が粉々に吹き飛び、バチバチと燃え上がる。燃ゆる木の葉が舞う。
空中に舞い上がった燃ゆる木片が音を立てて、砕け落ち。
モゥモゥと立ち込める土煙。
僕はその状況を空中から眺めていた。
「…………」
(勝ったのか、こんなにもあっけなく……。いや、まだだ!)
僕は身構えた。
そして、土煙の中から「『堕威炎戒!!』」と声がした。
土煙の中から炎の轍(わだち)が双方へゴォオオオオオと燃え広がった。
双方の炎の道が駆ける駆ける。その炎はまるで炎の獣ようだ。
こちらを意に介さず、ある目的のために駆ける駆ける。
僕はそれを空中から見下ろしていた。
そして、それを呟く。
「これは……」
彩雲の騎士は、その高度だからこそ見えた。
炎の獣道が山火事と森林の中を一直線に駆け抜け。まだ燃えていない森林の奥深くへ。
そして、市街地が見える外周からグルリとまるで取り囲むように炎の壁が燃え広がっていく。
その様はまるで、もう逃がさないぞと告げているようであった。
それはまるで、炎の円壁だ。
「ッッ……クッ……」
ボクはむざむざと力の差を思い知らされたようで。
(わかっていた。わかっていたさ……隔絶した力の差が……ッッ!! だけどまさか……ここまでだなんてッ!!)
僕は圧倒的な力の差を、この時思い知らされた。
そして、その土煙の中で――
(――驚いたぞL、まさかこれほどの戦闘センスを秘めているとは……!
いや違うな、あいつは姫君とともに戦闘訓練を観察してたんだ。これぐらいはできて当たり前……!
……ならばLよ、お前の真価! この戦いで見定めてもらうぞ!!)
突然モゥモゥと立ち込める煙がオレンジ色に光った。
「……!」
いや違う、中で燃えたんだ。
――とその時。

「待って」――と手を伸ばしたスバルの精神が追い付いてきた。

そして1つになる。
(やっと追いついた……これは……!)
僕は現状を知ろうと土煙の中からオレンジ色に光るものを見た。
だけど彼は、戦闘に集中しているようで、気にも留めていないようだ。その証拠に。
(来る……ッ!)
異変を逸早く察知し、後ろに高速浮遊し距離をとった。
この時に、また僕と彼の精神とがかけ離れる。
ダメだ、反応速度が違い過ぎる。
まだ、まだ、早く。知覚速度を上げないと。

「『業火灰塵』ッッ!!!」

モゥモゥと立ち込める煙がオレンジ色に光った。
そして、大爆発が起こった。
粉塵爆発という爆発現象がある。
これは密閉された室内に小麦粉を霧状に巻いて、ライターの火を近づけた途端、引火し、連鎖反応が起き、大爆発を起こすものだ。
だが、今回の場合(ケース)は極めて稀で。
2人の激しい超高速バトルによって生じた千々となった木の葉、火の粉が舞い上がり。
それが周囲の土煙に含有される(一酸化炭素)に引火し、連鎖反応が起き、粉塵爆発が起きたものだ。
そして、それは閃光とともに爆発したものだった。
(光ッ!? うわぁあああ)
光ったと思ったらもう爆発が僕を襲っている。
(ダメだ死んだ……ごめん父ちゃん、母ちゃん……あれ、痛くもないし熱くもない)
押し寄せる大爆発の爆風。
だが、不思議となんともなかった。
その理由は、Lとの同調率(シンクロ)がかけ離れている証拠だ。
当然だ、体がないのだから。
つまり今の僕の状態は、精神体みたいなものだという事だ。
(あ……あれ!?)
それどころか何か強い引力のようなものに引っ張られ、彼のいる所へ誘引される。
(ま、また~~!? 引っ張られる、うわぁ~~)
そう、今や僕と彼は一心同体だ。
だがだけど、僕は彼と違い果てしなく弱く、それが現状に起因しているのだろう。
僕の精神体は、大爆発の中を突き抜け、焼ける森の中を強制移動していくのだった。
(……どこまで行くんだ!? まさか彼のもとへ……!? きっとそうだ、そうに違いない……! んっ何かがおかしい……こうして見ると爆発ってこんなに遅かったけ……!?)
ここで僕は、体感速度が大幅に向上している事実に気づいた。
これがまさか、同調率(シンクロ)の影響だとは。
(……)
ここにきて僕は、落ち着いてよーく辺りを見渡し、考える余裕が生まれてきた。
(う~んこれはやっぱり……僕の力が彼に遠く及んでいないんだろうなぁ……)
ともすればこう考えてしまう。
(この場合、力とはいったい何だろう……!?)
そこが出発点だ。
(強さ、力の強さ……うぅんなんか違うなぁ。速さ……かな!? いや……そもそも僕と彼とじゃあんなに早く動けないし……無理無理!)
僕は手を振って否定した。あんなに早く動ける地球人なんていないから。
(う~ん……何かが決定的に足りていないんだ……それさえわかれば僕も戦えるのに……力になれるのに……。う~ん……うん、戦いながら考えていこう……!)
僕は方針を改めた。
多分間違いじゃない。ここであれこれ考えたってどうせ、正しい正解には辿り着けないのだから。
それよりも前向きに考えていこうと思った。うん……それがいい。
そもそも地球人とアンドロメダ星人とでは、根本的に体構造が違うんだ。
互いに得手不得手があって当たり前。アンドロメダ星人が苦手としていることを、僕達地球人側が補っていけばいいんだ。
うん、それでいこう。
(と、あの一瞬の爆発……彼はどう応酬したんだろう?)
僕はそれだけが気にかかり。
どうせ引っ張られるんだから、この力に逆らわず、むしろ走っていこうとすら思えた。
(急いで彼の下へ)
だから走ろう。
(あんな怪物相手に、1人じゃ無理なんだ……!!)
急いで彼の元へ――


★彡
――場面はあの時に戻る。
「『業火灰塵』ッ!!!」
モゥモゥと立ち込める煙がオレンジ色に光った。
そして、大爆発が起こった。
それは地面ごと蒸発するほどの爆発力だった。
ゴゴゴゴゴと迫りくる赤々とした爆炎と爆圧。そして衝撃。
周り中の燃えている木の葉が爆圧によって押し出され、千々となって吹き飛んでいった。
それは周囲一帯を飲み込み、一瞬にして灰燼に帰すほどの大爆発。
(――)
爆発が迫りくるうなか、あの子は何かを言っていた。
何かを伝えようと、その口を上下に動かしていた。けれど、その動きが遅くて。
聞くという事はできなかった。
(やっぱり、僕が1人でやらないと……!)
感覚は共有できても、決して僕等には追い付けないだろう。少なくともこの戦いの間は……。
そうだ。それだけ僕達の間には隔絶した世界があり。
僕達はその中でも、高次元の生命体なんだ。
爆発が目前まで迫る。
(『バリア』(エンセルト)!)
僕はバリア(エンセルト)で身を護る。
これで少なくとも、バリア(エンセルト)を超えて、彼に痛みが届くのは防げるはずだ。
それは、Lなりの優しさと気遣いだ。
もう目前まで迫りくるう爆発。その爆発の中を突き破らんとする手が垣間見えた。災禍の獣士の手だ。
この爆発に乗じて、奇襲を仕掛けようとしていた。
あれもこのバリアで防ぐことは無理だろう。なら、やるべき事はただ1つだ。
(フッ)
ここにきて僕は、笑った。
彩雲に騎士は、大きく後ろに後退した。
災禍の獣士の炎上爪が迫る。
それに対し僕が取った行動は、手を突き出し、このバリアの密度を高め迎え撃つこと。
迫りくる爆炎と炎上爪を、強固にしたバリアで迎えうつ。
ガガァン、パリンとそのバリアが消失した。僕は受け止めたんだ。この結果は上々。
(チィさすがに硬いな……ッ!!)
(上々! 奇襲まで防げた……後はこいつに、僕の力だけで勝つだけだ……ッ!! 行くぞっ)
「クァアアアアア!!」
僕は咆哮した。

――ドンッ
と大気が爆ぜる。
両者の肉弾戦が山火事よりも高いところで始まった。
――ドンッドンッドンッ
と空中で何度も大気が爆ぜる。
――ドンッドンッドンッ
そして、それは空中戦から地上戦に移り、山火事の中を駆けながら、大気が爆ぜていくのだった。
その動きに段々と目が慣れてきた。
彩雲の騎士の右ストレート、災禍の獣士はこれを左腕でガード。
災禍の獣士は反撃に転じようとする、反対の手で彩雲の騎士の腕を掴みかかりにかかる。
だが、これを瞬時に発動できる小さな規模のバリアでガードした。
災禍の獣士はこれを「チィ」と舌打ちした。
(やり辛い……わッ!!)
災禍の獣士は燃える蹴りで、バリアを攻撃したドンッと。
(エナジーア変換装置の危険性――……。
それは有史を紐解いてみても、僕等アンドロメダ星人と異星人達とでは、体構造と速さがまったく違う!
速さが違えば、当然反射神経はもとより、シンクロ率に置いても大きく差異が現れる……今と君と僕等みたいに……ッッ!
だから! 僕1人で戦おう!)
それは、この重大な局面において、勝敗を分ける大事なものだから……。
この瞬間、スバルが置いてけぼりくらい。そこを災禍の獣士が斜め下方向に一過していった。
スバルの精神体はその場に取り残された訳だ――

先ほどの大爆発の影響で、上昇気流が発生していた。
斜め下に滑空する彩雲の騎士、それを追いかける災禍の獣士。それを認めた僕は――
(――使えるか)
と思った。
燃ゆる木の葉、それは上昇気流に乗り、一気に上へ持ち上げられていた。
彩雲の騎士も、その上昇気流に乗り、一気に上へ駆けあがる。
それを追いかける災禍の獣士も。駆け上がる。
僕は、その舞い上がる燃ゆる木の葉の上に足をかけた。その木の葉と足との相中にバリア(エンセルト)仕込む。その瞬間、パンッと弾かれた。
右へ左へ、斜め上やらを繰り返しながらグングン上昇していく。その様はまるでジグザグに走行し、まるで天架ける稲妻のようだ。
そして、頂点の燃えつきえんとする木の葉に足をかけて、一気に反転。
反撃に転じる。行くぞっ。
「『サイコキネシス』(プシキキニシス)!!』」
僕は、事前に足が付いた燃ゆる木の葉と周り中の燃ゆる木の葉を念力で操り、即興の武器に仕立てた。
そして、燃ゆる木の葉とともに落行攻勢を仕掛ける。
(念力かL!! では我の炎とどっちが上か……!!)
「『飛来炎上爪』」
飛来炎上爪で勝負を仕掛ける災禍の獣士。俺はこれを連続で打ちまくる。

((勝負だ!!!))

それは一瞬だった。
当然だ、この速度でこの弾幕量、両者の攻撃が空中でぶつかり合い、ドドド―ンと爆ぜた。
(この状態の僕達と共生できる民族は一握りだ……!
いや、例えエナジーア変換できたとしても、僕達の力に付いていけず、大きなしっぺ返しを食らい。
待ち受けるのは、体構造組織の寿命を大幅に削り、老衰に陥り最後は死んでしまう、惨めな結末……ッッ)
それがエナジーア変換システムのデメリット。
(僕は少なくとも君にはそうなってほしくない……ッッ!!)
弾幕量の打ち合いは互角だった。
そして、下から昇ってくる災禍の獣士の炎上爪が迫る。
僕はそれを燃ゆる木の葉たちに上乗せしたバリア(エンセルト)で迎え撃つ。
激しい弾幕の打ち合いだった。
そして、全ての弾幕を使い切ったLに対し、昇ってくる災禍の獣士は直接その炎上爪で攻勢を仕掛ける。
それに対し彩雲の騎士は凛然と待ち構える。来るなら来い、ただでやられる僕じゃないぞ。と。
僕は両手を下に突き出し、バリア(エンセルト)を張って、迎え撃つ。
(そうだ! 僕はアンドロメダ星のオーパーツなんだ! そんな僕と共生できる民族なんていやしない……!
ましてやパートナーだなんて……僕の隣に立てる人なんていやしない……ッッ)
わかってる、これは感傷だ。だから僕は割り切った。割り切ることで気を引き締めたんだ。
燃ゆる炎上爪を、意思の力で固めたバリア(エンセルト)で迎え撃った。
ドォンと空中で爆発が起きた。
その爆炎の中で――
(――チィ固い……!!)
(僕は1人なんだ……ッ!!)
僕は魂の雄叫びを上げた。
「クァアアアアア!!」
咆哮する彩雲の騎士。その高まるエナジーアによって爆炎がバァンと晴れる。
(心が高ぶるなL、続けていくぞ!!)
「ウォオオオオオ!!」
両者、バリア(エンセルト)もしくは炎上守護球を張り。
激しく幾度ともなくぶつかり合うドォン、ドォン、ドォンと。
上へ上へと上昇していき、再び、ドォンと。
そして、猛スピードで天へ駆け上がっていくのだった。


☆彡
――茜雲の雲海。
彩雲の騎士が、災禍の獣士が、ボンッボンッと雲海の壁を突き破り躍り出た。
両者、相対す。
その遥か上空にはオーロラ大厄災と真珠母雲の揺らめく姿が。
両者ここで、一度エンセルト(バリア)もしくは炎上守護球を解いた。
「あなたを倒す、レグルス隊長……いやレグルス!! あなたは間違ってる! 僕はあなたについていけないッ!!」


TO BE CONTIUND…

しおり