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第1章の2話 チアキとシシドとクコン


【高速道路のサービスエリア大分】
そこは2階建ての大きな複合施設だった。
1階はフードコートエリアと土産物の物産展。
2階は日常品生活雑貨と電化製品等を販売しているのだ。こちらは旅行中に買い忘れて、後で補うためかな。

僕達を乗せたスクールバスが、サービスエリアに入ったとき。
僕達の腕時計型携帯端末にあるデータが送られてきた。
それを僕のAIナビがサポートしてくれる。

【スバルのAIナビ ロイ】
人型のAIナビで、青を基調としたボディに幼さが残る、男の子タイプだ。

【アユミのAIナビ リス】
こちらも人型のAIナビで、ピンクを基調としたボディに幼さが残る、女の子タイプだ。

『スバル君。今僕の元に届いたのはここのランチメニューだよ。何が食べたい?」
「そうだな~~」
『もうアユミちゃん! いつまで寝てるの!』
「もう少し……くぅ……」
これには僕も苦笑いだ。
『むぅ……スバル君にパンツ見えちゃうよ!』
「え……」
「きゃ!!」
あたしは慌てて起き上がった。その際、ゴツンとあたしの後頭部がスバル君の顎にクリーンヒットしたのだった。
バタンと倒れるスバル君。石頭のアユミちゃん「あっ」と呟く。
その様を見ていたロイとリスは、「あっ」と漏らしたのだった。
その後、あたしは倒れたスバル君を介抱したのだった。ごめんねぇスバル君……。


☆彡
【1階 フードコートエリア】
その後、僕達はサービスエリアに入り、フードコートエリアに歩みを進めた。
その道の途中、入れ替わるように出てきたのは洗浄作業を目的としたアンドロイドだった。
そのアンドロイド達は、手際が良くバスの窓や車体を綺麗にクリーニングしてくれる。
なんて気が利くアンドロイド達なんだ。一家に一台欲しい。
と、問題は僕達だ。
『スバル君、メニュー決まった?』
『アユミちゃん、まだメニュー決まんないの?』
「う~ん……」
「う~ん……じゃあそばで」
「じゃあ僕もそばで」
『『2人とも渋い!!』』
そうして僕達2人のメニューが送信されて、そのデータを厨房にいるアンドロイドが受け取り、さっそくそばを茹で始めた。
その間僕達はやることがないので、2人して物産展を見に行った。


☆彡
【物産展・土産物屋】
僕達は土産物屋のアクセサリーコーナーに着ていた。
「何がいいかなー?」
アユミちゃんが選んでいるのはキーホルダーだ。キラキラしていて、さすが女の子だ。
僕はそのついでに見ている程度だ。たいして興味がなく無駄遣いだからだ。
「……」
そんな僕達の様子を俯瞰して見やる少女がいた。

(やっぱりどの人も死相が見えよる……んっあの子は……)

そんな少女が僕達に目を止めた。もっと正確にいえば僕に。
気になる、よーし。あたしはさりげなくあの子達に話しかけてみることにした。
「何かお探しで」
あたしはにこっと笑みを浮かべて、この子達に話しかけた。きっと同い年くらいやわ。
僕達から見たその子の印象は、とても可愛らしい子だった、髪の長さや髪形はアユミちゃんと同じで、同じ黒い瞳。そしてアユミちゃんと同じくらいの豊胸だった。
違うのは顔つきと服装くらいだ。
「……あなたは……?」

【チアキ(11歳)小学6年生の女の子】
着ている服装は、白を基調としていて、ふちが赤いワンピースだった。

「あたしはしがない占い師志望のいたいけな少女です。チアキといいます、よろしゅう」
「あっこれはご丁寧に。あたしはアユミ。でこっちの子が」
「スバルといいます」
この瞬間、あたしはグッとこの少年に近づき、その瞳の色を見た。
その瞬間流れ込んできた未来が。
1つ、例の宇宙探査機がとんでもないことをしでかす。
1つ、この地球の最先端テクノロジーが壊れてゆく世界。
1つ、火の手が上がる森。
1つ、横たわる少女。
1つ、目に見えない何かに話しかけるこの少年、そして光と共にどこかへ飛んで行った。
1つ、この少年が黒い人になって横たわり、死の淵をさまよう。
1つ、謎の水溶液の中にいて、そこから出た後、目に見えないどこかの女性みたいな人と会談する。
そんな滑稽な未来が流れ込んできた。
だが、今一番の問題は、ズイッと目の前まで迫るこの少女に気圧されたスバル君だ。
「あっあの……」
これには参るスバル君。
「近い近い! スバル君から離れて」
とあたしはこの子とスバル君を引き剥がしにかかる。
「あっ……」
「むぅ」
ムスッとするアユミちゃん。
あたしは冷静さを取り戻して、彼に話しかけてみることにした。
「なんかごめんや」
あたしは手を合わせて謝った。
「そうやなぁなんかお詫びせな……う~ん……」
売り場に目をやるうち。ダメやどれもピンとこんへん。
でもその中に1つだけ、目についたものがあった。
「うん、これがええな」
うちが選んだのは『おしゃれな瓶』だった。
「それ……星の砂が入ってるやつじゃない……」
「でもこれには、何も入ってない」
「「?」」
これには僕達も対応に困る、なんてものを選ぶんだこの子は。
「でもきっと! 君はこの『おしゃれな瓶』を気に入ると思う。この中に地球の土でも詰めるんや!
そして君は将来必ず、宇宙に関係するお仕事に就く! 凍りついた地球も必ず……ううん何でもない」


☆彡
――その後、僕達はチアキちゃんと別れ、フードコートエリアに向かうその道の途中。
「不思議な子だったね」
「うん……」
女の子に顔をマジマジと見られるなんて、アユミちゃん以来だよ。
と当人のアユミちゃんが取り出したのは、土産物屋で購入したアクセサリーだ。
思い出すは彼女とのやり取り。
『う~ん……このアクセサリーがええんじゃなかろうか』
と彼女が手に取ったのは2つで1つのアクセサリーだ。
それは俗にいうロケットペンダント、中には写真を忍ばせることができるものだ。さらに鈴つきだ。
カラーは2種類、赤と青。
ボディタイプは地球のように球体だった。
『青は待つ人用、赤は旅立つ人が持つとよかよ!』
それは端に僕等を指しているようで。不思議な少女だった。
――僕は自分の手相を見ていた。そしてそれが口をついて出た。
「『初めに火の相』が強く出ているか……」
「でも変わってるよね? 『女難の相』でも『水難の相』でもないんでしょ」
「うん……不思議ちゃんだった……」
「不思議……?」
「うん、アユミちゃんと声の質が同じだった」
後これは当人には言えないが。
(おっぱいの大きさも……!)
後、髪形や髪の色なんかも同じだった。違うのは顔つきくらい。
「あぁ――確かに!」
これにはあたしも妙に納得した。
――とその時だ。
僕達の横を小学校違いの団体さんが横切ったのは。
中央には僕と同じくらいの男子生徒がいて、その周りには女子生徒の取り巻きだった。
僕が目についたのは、主に男子の方。

【シシド(11歳)小学6年生の男の子】
着ている服装は、紺色のブレーザーで、襟とフロントラインにはオレンジ色の蛍光色が用いられている。長崎学院の制服姿だった。

「……」
僕は彼の事を流し目で見送っていた。
とその時だ。
「ちょっとスバル君!」
「痛っ!!」
なんとアユミちゃんが僕の耳を引っ張る。
「あたしという女がいながら、どこ見てんのよ!」
「いてて! 見てたのは女の子達じゃなくて、男の子だって!」
「はっ、まさか悪癖なんじゃ……」
これにはさすがにあたしも、スバル君の性癖を疑う。
「ち、違うッッ!! あいつ炎みたいだな――って!!」
「ホントかしら?」
とあたしはスバル君の耳から手を放して、1人フードコートエリアに歩みを進める。
「痛て……どちらかというと『女難の相』なんじゃ……」
僕はこの時1人で、耳をさすったのだった。


☆彡
――フードコートエリアというだけあってそのジャンルは幅広い。
和洋中とあり、施設の中にいろいろな店が入り込んでいる。
定番の日本料理のそばにとんかつ定食。
洋食のナポリタンにシチュー。
中華のチャーハンに海老シュウマイ。
そしてピザにグラタン、バーガーなんかもあった。
その手の料理を作るのは人間ではなく、主にアンドロイド達の仕事だ。
これはもう、私達の知るフードコートエリアとは、別物の世界であった。

僕達はその出来立てのそばを乗せたトレーを持ち、テーブルを探した後、向かいの人達に一言告げる。
「ここ開いてますか?」
「おぉ座れ坊主」
「嬢ちゃんも」
「はい」
「どうもありがとうございます」
彼等はどこかの工事会社の人達であった。
僕達2人は仲良く相席する。
「坊主達はどこから来たんだ?」
「長崎県大村市です!」
「何だ俺達と同じか!」
「へーそうなんか」
「あぁ珍しいこともあるもんだな!」
とそんな他愛もない会話を交わす。
と言っても高速道路上の上り線なのだから、こーゆう偶然もあるのだ。
さっそく僕達は食事にありつく事にした。
麺をすするスバルとアユミちゃん。スバルは至って普通に面をすすり、アユミちゃんは女の子ということもあり、ゆっくりお上品にすするのだった。
「君達仲がいいんだな!」
「えぇまぁ」
「幼馴染なんです、あたしたち!」
「あぁなるほどだからか……!」
おじさん達は妙に納得した。

――とそこへ、他所の小学校の学生さん達が続々と入ってきた。
僕とアユミちゃん。そして、おじさんたちはその行列に振り向いた。
「リス! あれって」
『うん、ちょっと調べてみるね!」
とアユミちゃんのAiナビリスがあの小学校の事を調べ上げる。
とそれが出た。
『『長崎県立長崎学院』の生徒達みたいね!』
「『長崎県立長崎学院』って全寮制の優等生達じゃない! あたしでもそれ知ってるよ!」
「全寮制……」
これには僕も驚いた。
なんと驚いた事に彼等彼女等は親元から離れ、勉学に勤しんでいる優等生達なのだ。
僕達とは住む世界が違う――僕はただただ驚いた。
『あそこは頭が良くないとそもそも無理だからね! 後は出支してくれる親元の財源とキャリアがないと……」
――ズ~~ン……
と僕達2人は酷く落ち込んだ。僕達と優等生達とではそもそも住む世界が違うからだ。
そんな彼等彼女等が選んでいるのは、どれも高額の食べ物ばかり。ステーキや大トロのマグロ、フォアグラやキャビアやトリュフという単語(ワード)も飛び出した。
僕達はただただ落ち込んだ。
そんな時、おじさん達が呟いた。
「聞いた事があるな。親元を離れた子供達が、小1から寮生活を送っているって噂」
「あれは本当だったのか。偉いもんだな、とてもうちの坊主じゃできねえよ」
とおじさん達も目の前の料理に手を出す。
「にしてもあの坊ちゃんや嬢ちゃん達の数を見てみろよ」
「すげぇ生徒数だな。これは引率の先生方も大変だぁ」
「「……」」
僕とアユミちゃんは彼等彼女等の着こなしている制服に憧れた。
男子生徒は紺色のブレーザーを着こなし、女子生徒はワインレッドのブレーザーを着こなしていた。
そのブレーザーの襟やフロントラインには、蛍光色入りのオレンジ色があしられていた。
とても上品な印象だった。
「でもさ、なんで襟元やフロントラインがオレンジ色なんだろう?」
と僕は素朴な疑問を抱いた。
と僕の質問に答えてくれたのが、AIナビのロイだった。
『それはねスバル君! あれは蛍光色入りなんだよ。わざと目立つようにしてるんだ!
このご時世、子供を狙った窃盗事件が相次いで危険だからね。
昔、あの学院でも色々あったそうだよ。
ちょっと待ってて、過去に起きたレアケースの案件を調べてみるから……。
ん……あの学園のデータベースにアクセスできたよ。
それはね。今回みたいな修学旅行中、夜の深い森の中や、雪山に迷い込んだ時、見つけやすいよう、あんな色合いの施しをしたのが発祥となってるんだよ。
またここ最近のニュースでは、スクール活動中に、海で遭難した生徒達を発見する事にも一役かってるんだって!!」
「ふ~ん……そんな事が会ってるんだぁ」
と僕はそんな素っ気ない返事を返した。
そんな僕の返事を聞いたロイの反応は『……』で、まるで僕は興味を示さなかった。
僕は、しばらくあの学院の生徒に見入っていた。
あの子は外国人なのかな、それともハーフなのかな。イケメンや可愛い子の比率が多く、時にはぽっちゃり系がいた。
「あーゆうところにはどーゆう人が行くんだろ」
とそんな呟きが漏れた。

――そして、そんな中でも特に異彩を放っていたのが、やっぱり彼だ。
(いた)
と僕は遠くから反応を示した。
その現場では。
「シシドく~ん!あたしと相席しましょ!」
「あたしも!」
「あたしも~!」
彼は可愛い子達にモテモテであった。どこかのアイドルか、このクソ野郎。
と僕の顔が歪む。
だけど、当人はとてもうんざりした顔で、安請け合いしていた。
「あぁわかったわかった」
それはまるで、日常風景のようで。
「「「きゃ~!」」」
黄色い声を上げる可愛い子達。
だが。
「ケッ!」
おっやはりというべきか。どこにも敵はいるようで。
シシドという少年が、彼女達から黄色い声援の集めている中で、彼を快く思わない男子生徒達は、彼を毛嫌いしていた。
彼は僕の目から見ても、端正な面持ちで、つまりイケメンでかっこいいのだ。
僕とは、非対称的である。
と僕がそんな事を思っていると。
何気なく横にいるアユミちゃんに振り返ると――。
「……」
彼女の視線は、彼に釘付けだった。
「そんな……」
と僕からそんな呟きが漏れた。開いた口が塞がらない。口角が震え、その手に持った箸から、麺が滴り落ちる。
そして、それはスープの中へ、音を立てて落ちたのだった。
しかも、行儀が悪く、スープの雫がトレイの周りに広がる。
衝撃的だった。
僕も彼女も、とここで驚いていたアユミちゃんの目元が下がり、平静になる。
「……嘘……ッッ!」
「アユミ……さ……ん……」
僕は平静を装えない。
「あの子……あの有名ジェットパイロットの息子さんじゃない!? 確か世界協議アスリート選手の……!!」
「えッッ!!?」
これには僕も驚かされた。
「何っ!?」
「えっ嘘だろっ!!」
これには僕だけではなく、向かいの席にいたおじさん達も驚いた。
「リス!」
『今調べてみるね! あったわ動画! 再生してみるね!」
アユミちゃんの腕時計型携帯端末から動画が映写される。

――それは当時のTV中継だった。
ジェット機が次々とゴールをくぐっていく。
「ゴール!!! 優勝はホサカです!!」
とアナウンスが流れ。
現場にTVリポータが駆けつける。
「世界大会優勝おめでとうございますホサカ選手! 今のお気持ちは!」
「いや~言葉にはいい表せませんね! でもきっと、この会場にカミさんと息子が着てて、恥ずかしいところを見せられなかったってところですよ!」
「息子さんが着てらっしゃるんですか?」
「ええ」
――と次に映写されたのが、ホサカ選手とまだ小さかった頃のシシド君だった。
「ははっ、さすがに恥ずかしいぜ」
「恥ずかしがることはありませんよ、ホサカ選手! さあ、僕の名前は?」
「……」
この頃のシシド君は恥ずかしそうに、パパの後ろに隠れた。指を咥えているところがまた可愛い。
「ははは! こいつの名前はシシドっていうんです。まだ小さいんで許してやってください」
とそんな恥ずかしい頃の動画が流れたのだった。

――これを見た僕達は。
「「「「『『本物だぁあああ』』」」」」
すぐにアユミちゃん、続いておじさん達が駆けだしたのだった。
「あの!! シシド選手!!」
これには当のシシド選手(?)もビクッとする。
「ちょっと何よあんた!! って何!? 後ろのおじ様達!!」
いやぁと照れるおじ様達。もうこうなれば勢いだ。
「ホサカ選手のファンなんです!! サインください!!」
とそんなやり取りがあった。
それを離れたところから見ていた僕は1人、溜息ついたとさ。
しかもよりによって、こんなところでホサカ選手の名前を出すものだから、現場はもう大パニックだ。
「えっホサカ選手!!」
「えっ嘘マジ!!」
「違う違う!! シシド君はその息子さんよ!!」
「馬鹿ッッ!!」
これには当人のシシド君も騒ぐものだから、火に油を注ぐばかりだ。
僕は離れたところから、それを強かに眺めていた。
あ~有名人じゃなくてホントよかった~


☆彡
【豪華客船】
――現場が大騒ぎしている中、フードコートエリアのエアディスプレイには、次のニュース映像が流れていた。
「はーい! こちら現場リポーターのニューズです! 今あたしは、『WSL(ワールドシステムロード)社主催の豪華客船に着ています!」
その豪華客船のフロントロビーが映し出されていた。
目に行くのが広々とした豪華な室内、絢爛豪華なシャンデリア、ガラス張りのエスカレーターに、女性の方が好きそうな螺旋階段。そこに栄えるようにステンドグラスが美しい。
付け加えて見目麗しい受付嬢達に。美人タイプの人型アンドロイド。なんて贅沢なんだ。
「この豪華客船は9階建てで、壮大で大きく、見所満載です!!」
と床パネルから飛び出す映像のイルカ。
「きゃ!」
それは水しぶきの映像付きで、いかにも栄えていた。
「びっ、ビックリしたぁ!」
ホログラム映像だとわかっていても、これは迫力がある。
『現場のニューズさん、今回の一押しはなんですか?』
「はい、今回の一押しは、『絶滅動物達』です!!」
『絶滅動物達ですか……これはまた……』
『と現場のニューズさん、隣にいるのはまさか……』
「はい、今あたしの隣にいるのは、当豪華客船のオーナー久保星斗総帥です!!」
『『やっぱり……』』

【久保星斗(37歳)WSL(ワールドシステムロード社総帥)】
世界各国に設けてある巨大会社の大取締役。
その会社を上げ出したらキリがないので、割愛させていただく。
基本、今回はオフの日なのでどこにでもいる人のような恰好での登場だ。
ってかプリントされた服を着ているあたり、服のセンスはダサい。
「やあ! 私がWSL社代表、久保星斗だ! みんなよろしくな!
皆には総帥なんて言われてるけど、私はそんな柄じゃないので、気さくに星斗と呼んでくれって構わないよ!」
軽っ。仮にも総帥である人に恐れ多くて言えるか。ありありとニューズの顔に危機の香りが迫った。
「ありがとうございます、星斗代表!」
「あれ、もっと砕いてくれていいのに」
できるか、恐れ多い。あたしは営業スマイルで事に臨む事にした。
「ではさっそく、絶滅動物達がいらっしゃる所へ行きましょう!」


☆彡
【北極大陸と南極大陸にいた絶滅動物コーナー】
――会場は、当時の環境をできるだけ再現するため、意匠が組まれていた。
例えば、特定の時間帯で空模様が変わり、オーロラが見られるなんて事も。
足元は氷のリンクで覆われていて、スパイクシューズが無料で貸し出してもらえる。
そして、ペンギンやホッキョクグマやホッキョクギツネやアザラシがいて、来場者の方々に怪我をさせないようゲージで囲っているのだ。
また、ところにより海中水族館仕様で、長い橋が設けられていた。天井も壁も床もガラス張りで、ここから見る海中動物達は生き生きとしている。
海中に住む動物達はクジラにシャチ、タツノオトシゴにクリオネ等がいた。
「これはすごい!! よくこんなに絶滅動物達を集めましたね!」
「ええ、大変苦労しました……! なにせみんな世間では絶滅してますからね。
ですが、正確には、ある保護団体が今まで匿っていたのですよ! おっと団体名は明かせないのでそこはお願いしますよ!】
「なるほど……そんな団体が今まで潜んで……」
あたしは無性に感動した。いい話だ。
とあたしはあるものに気づいた。
「あれはなんですか?」
ニューズは、そのホッキョクグマの首につけられている首輪を指さした。
「あぁあれはIDプレートですよ。あれで保護管理してるのです。船内から無断で持ち出しできないようにね」
「なるほど……それは必要な措置ですね」
「えぇ私の夢なのです。
当時の動物達を復活させ、彼等の楽園を作るという。そこには敵も味方もいませんよ」
あたしには久保星斗総帥が輝いて見えた。


☆彡
『現場のニューズさんありがとうございました』
現場から手を振るニューズの姿があった。
『――では次のニュースです! ここで朗報があります!
次元トンネルを通過した宇宙探査機は、無事、アンドロメダ銀河に辿り着いたとのことです! これがその映像です!」
TV画面が移り変わり、TV局から宇宙空間を漂う宇宙探査機の視点に変わる。
『この映像は、何万年光年も離れたアンドロメダ銀河から送られてきたもので。
次元トンネルを介している為、できるだけリアルな映像との事です!』
既にそばを食べ終わったスバル(僕)は、その映像に見入っていた。
さらに、あれだけシシド選手で騒がしかった現場だが、今は世紀の瞬間を固唾を飲んで見守っている。
そして、あの謎の美少女が呟いた。
「起こる……オーロラ大厄災の火種がもう間もなく」
そして、その少女は離れたところから僕を見るのだった。

宇宙探査機は、アンドロメダ銀河に辿り着いていた。
そこから見える景色は、天の川銀河とは違い、太陽は赤く、公転周期上の星々達の距離は近かった。
今、宇宙探査機が向かっているのは、2つの赤い惑星の1つだ。
赤く見えるのは赤い太陽からの影響で、おそらく恒熱量が低いせいだろう。
なお、天の川銀河の太陽は黄色く、恒熱量は中ぐらいだ。
「あれがアンドロメダ銀河……」
と僕が呟いているとき、アユミちゃんが帰ってきて、静かに座り。
「あたしも初めて見た」
と呟いた。
宇宙探査機は吸い込まれるように、2つある惑星の内の1つに近づいていく。
赤く、大きく雄大で巨大であり、そのスケールは地球よりも大きい。

『――地球の皆様方、ご覧ください! アンドロメダ銀河に浮かぶ2連星です!』
その様はまるで地球とお月様じゃなくて、惑星と惑星です! その大きさは地球の直径よりも大きいくらいです!!
これはすごい重力かもしれません!!
あの惑星を例えるならば、兄弟星と言えるのかもしれません!
互いの重力で引き合いながらも、自転運動を繰り返し、付かず離れずの中で、お互い助け合って、赤い太陽の周りを公転軌道を取ってるのです」
「公転軌道?」
僕の頭に謎が浮かぶ。
「公転軌道というのは、太陽の周りを365日かけて回る事よ。
で自転運動というのは、地球が一周するのに朝昼晩の24時間かけて回る事よ。わかった?」
「はい……アユミ先生」
アユミちゃんが僕にわかりやすく教えてくれた。なるほどそーゆう事か。不思議運動だなうん……。
『他にもいくつか、こうした惑星が見て取れますが……。地球のような岩石惑星でかつ、ハビタブルゾーンに適した星は、この両星だけみたいですね」
「ハビタブルゾーン……?」
再び頭の中で謎が浮かぶ。
「ハビタブルゾーンは別名生命活動領域といって、私達人類が移住できそうな星のことを指すのよ!
まぁ最も、酸素や水や草木がないと私達人類は移住できないんだけどね。
で、岩石惑星というのは地球のような星で、私達が移住できる条件の1つ。
例えば、太陽のような恒星はそもそも移住できないし、巨大な氷とガスできた海王星なんてもってのほかよ!
太陽に1番近い水星は熱くて、私達人類はすぐに蒸発しちゃうし。
太陽に2番目に近い金星は雲が厚くて、秒速100mにもなる超高速の風スーパーローテーションが吹いて、4日で金星の周りを一周して危険だし。
太陽に3番目に近い地球でようやく、あたし達人類が暮らせるのよ! わかった!?」
「は、はい……」
な、なんとなくわかりました。アユミ先生。
「むぅ……わかればよろしい……」
さすがあたしね。昨日さんざん勉強しといてよかったわ。
多分、あたしの予想通りなら、修学旅行が明けた後、今回の一件で宇宙の話が出て、テストがあるはずだからね。
今のうちに予習しとかないと、いい大学にいけなくなるんだもの。
『今あたしは感動しています。こうして間近で赤い太陽を拝めるなんて……感動ものです!!』
宇宙探査機のAIナビは感動していた。
それを見ていたあたしは人知れず呟いた。
「でも赤い太陽なんて初めて見た。地球のは黄色いというからきっと恒熱量(こうねつりょう)が低いんだわ。
だから公転軌道上、星々の距離が近いのね」
「赤があるという事は青があるってこと!?」
「えぇその場合は、きっと恒熱量が高くて、公転軌道上、星々の距離が離れると思うわ
そうじゃないと理屈に合わないもの!」
「う~んなるほど」
これには僕だけじゃなく、いつの間にか戻ってきていたおじさん達や、長崎学院の生徒達も納得するのだった。

――とここで、宇宙探査機の注視を奪う、あるものが観測される。
『おおっ綺麗ですねー! あちらには冬の夜空の代名詞! おうし座に含まれるプレアデス星団が見えます」
「ねえあれって!」
「うん」
僕は嬉々として喜び、アユミちゃんは頷いてくれた。
プレアデス星団なら僕だって知ってる。なぜなら……。
「プレアデス星団は英語名で、日本語ではスバルといいます」
コクコクと頷くスバル君。なんだか可愛い。
また牡牛座は日本名で、英語名ではTaurus(タウルス)と呼称されています!
見頃は1月24日頃で、地球がその公転軌道を通るのが4月20日~5月20日頃です」
「ん…?」
僕は疑問を覚えかけた。
「どっちが正解なの?」
『言った通りの意味だよスバル君……」
これにはロイも呆れ顔だ。
『つまりこーゆうことかな……!? 見頃は1月24日頃だけど……。僕達が今乗っている地球が、その公転軌道に乗るのは4月20日~5月20日頃だという事だよ!』
『その通りよロイ! それを『太陽暦』ってゆーの! 『太陽暦』ってゆーのはあたし達が普段から使っている365日の暦の事を指すの!
でね! 例えば、今日あった占い師志望のお嬢さんを出すんだけど……。
占い師達が使っているのは『太陽暦』だけじゃなくて『太陰暦』を使ってるの!
または、その両方を組み合わせた『太陽太陰暦』に加えて、本来の占星術、心理学、数秘術、タロットカード、恒星占星術等を総合的に用いているのよ!』
「へ~そうなんだ」
とロイとリスが話をしめた。アユミちゃんも初めて知ったらしく。なるほどそーゆう事かと思った。

『――地球の皆様は、お月見とお月見うどん。月見団子に添えるクコン酒の由来等は、ご存知でしょうか!?』

【クコン(11歳)小学6年生の女の子】
着ている服装は、ワインレッドのブレーザーで、襟とフロントラインにはオレンジ色の蛍光色が用いられている。長崎学院の制服姿だった。

「ん……?」
「もしかしてクコンちゃんって」
「違う違う。あたしはお酒とは関係ないから!」

『これはさる人物の死後の物語――昔々のお話です!
その神田の稲から原材料を採取し、食に用いたのが起源だとされています。
現在、その郷土資料集は、あの第2次世界大戦・第3次世界大戦経て。
そして、大震災や大浸水の折、海中の底へ没しました……』
ここにも歴史の古い爪痕があった。
『いくつかは消失されましたが……一部は厳重に保管され、一般公開される事はまずあり得ません。
けれど今回、特別措置法に基づき、その数の少なさから、有力視されている1項を、簡潔に読み上げます』
そして、昔々話が始まる。
『大昔――あるお父さんと娘さんと貧しくも仲良く暮らしておりました。
そして、その家にはある狐が飼われていたのです。
ある時、その娘さんが流行り病に患(わずら)い、お亡くなりになりました……。
娘さんがまだ生きていた時代、取り組んでいた事業は、日本由来のお米から生成されるお酒でした。
原酒の原型ですね。濁り酒であって、清酒ではありません……。
――その後、長い年月が経ち、いくつもの四季が過ぎ去りました……。
そのお父さんにも、シワができ白髪が生え出してきました。
そのお父さんは、おじいさんと呼ばれるまでになりました。
――そのある日の晩、おじいさんは夢の中で、亡くなった娘さんに出会いました。
それは、当時の面影そのままであり、体から光を発していたのです。
体は透け、うつろっていたと云われています』

『お父さんやったよ。やったね! ……あの産まれてくる狐の子も、私だと思って大事に育ててね……』

『――それだけ言い残し、夢の中から去りました。
朝、おじいさんが起きると、信じられない事が起きていました。
1匹の愛らしい幼い狐が誕生していたのです。
そして、日本由来の原酒、濁り酒の完成も……!
『おじいさんは心に決めました!
その生まれたばかりの幼い狐の名前を、娘と同じ『クコン』と名づけようと……!
それが日本由来の古い原酒、濁り酒の誕生でした……!』
――時の天皇様に献上したところ、いたく気に入られ。後日、呼び出されたのです。

『この味、この奥深さ、この舌に残る香り、郷愁の風土……これは誠に、野をかけ、稲を育む、狐の姿を夢想したものじゃ。良い出来ぞ』
『はい、ありがとうございます』
『そちに褒美を取らそう』

『――その後、おじいさんは、時の天皇様から承った『神田(かんだ)』と名を改めたのです。
神の田んぼと書き、神田と読みます。
そして! おじいさんは、天皇様から一部の領土を任せられ。田殿(たでん)を耕かし、その広い敷地に農業と酒造の場を立てたのです。
ですが齢年並、病は待ってくれませんでした。ある時期を境におじいさんは死期を悟りました』

『儂ももう長くない……! 儂の酒を継ぐ者はおるか、く、クコンは……! ゴホッゴホッ』

『――儂は死期際に、多くの弟子達の中から、特に徳の高い子を3人選び、家督を継がせた!
そして! 後生として、ある願いを託した……それは……!』

『お前達……儂の死後、3人一丸となって儂の可愛い狐、クコンの事も頼む……ッッ。
く……クコンは神の酒の化身も同然なり、儂の可愛い娘を、お前達3人の手で……ッッ頼んだぞ……ガクッ……』

『――それがおじいさんの最後の言葉でした。
そして、お爺さんの死後、雑木林(ぞうきばやし)の丘に、神の化身が通る門として、鳥居と神宮が建てられたのです。
その神宮の拝殿には、狐に似せた石像が安置され、その御膳(ごぜん)には、御神酒(おみき)も添えられるように。
また、毎年参拝者が訪れるようになりました。
そして、その丘の上には、時の天皇様から任せられた神田畑が今なお息づいているのです。
『――その後、現代まで至るまで。
そのクコンが生まれた命日を祝うように、またおじいさんを弔う意味も兼ねて、
陰暦(いんれき)8月15日と9月13日の夜に、月見団子と御神酒を添える運びとなりました』

「あたしと同じ誕生日!」
「「嘘ーッ!!」」
これにはクコンばかりかその友人達も驚きを隠せなかった。

『――さあ、雑談はこれくらいにしまして! 当機はいよいよアンドロメダ星に着陸態勢に入ります』
いよいよかと、スバルが、アユミが、チアキが、シシドが、クコンが、そしてフードコートエリア中の皆が、その映像に注視する。


TO BE CONTIUND……

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