101章 くじ引き大会3
くじ引きは終盤にさしかかっていた。
残っているあたりは、「特等」が1、「1等」が1である。「2等」、「3等」については、たくさん残っている。
18:00になったので、会場に残っている参加者に対して夕食を与える。本日の夕食は、おにぎり3個、1000ミリリットルの水である。満腹にはならなくとも、小腹を満たすことはできる。
参加者はおにぎりを受け取ると、かみしめるように口に運んでいた。食べられることへの、感謝の気持ちが伝わってくる。
家で何を食べようかなと思っていると、アシスタントのココアから声をかけられた。
「アカネさんにもおにぎりがありますよ」
「ありがとう・・・・・・」
コンビニで売っていそうな、おにぎりを口に運ぶ。「セカンド米+++++」と比較すると、食材の良さが出ていなかった。最高級になれてしまっているからか、おいしいとは一ミリも思え
なかった。
ココアはおにぎりを食べると、瞳がうるんでいた。
「どうかしたの?」
「米を食べられることに対して、私は感動しています」
付与金をもらえるまでは、米を満足に食べることもできなかったのか。「セカンドライフの街」の住民の生活レベルは底辺をいっている。
「米は食べられなかったの?」
1キロあたりの値段は、500ゴールドである。生活が苦しかったとしても、食べられるような気がする。
「最近は安くなったものの、2年前までは高額な値段をつけていました。10キロあたりで、100000ゴールドくらいでしたね」
米1キロで10000ゴールドもしたのか。生活費を満足に稼げない人たちにとって、あまり身にも重すぎる金額である。
「三年前に農家が荒らされたために、米は全滅してしまったんです。それゆえ、あっという間に値上がりしてしまいました」
害虫などが大流行したのかな。いつの時代になっても、自然の前では無力である。
「他の食材も買えなかったため、バナナと水だけの生活を送っていました」
バナナと水だけの生活を想像すると、悲しさがこみあげてくる。食事というよりは、拷問に近いレベルだ。
「バナナばかりを食べていたのはどうしてなの?」
ココアからかえってきた回答は、実に分かりやすいものだった。
「バナナが安かったからです。当時のバナナは10房で10ゴールドでした。それゆえ、生活に困窮している住民は、バナナで飢えをしのいでしました。バナナは栄養、水分補給の両方で優れてい
ます」
1本ではなく、1房で1ゴールドなのか。こちらの世界のバナナは、値崩れを起こしている。
「バナナはどうして安いの?」
『「セカンドライフの街」では、1年間でバナナが、100億トンもとれるんです。あまりにも取れすぎるからか、値段はつかなくなりました』
大量にある食材の値段は下がっていく。これについては、現実と全く同じだった。
「私の家は非常に貧しかったこともあって、3年以上にわたって、バナナだけで過ごしたことも
ありました」
1日、2日ならまだしも、3年間もバナナだけで過ごすのはきつい。彼女はどのような思いで、バナナを食べ続けていたのだろうか。
「バナナ生活は苦しくなかった?」
「苦しいと思ったこともありますけど、生きるためにはやむをえない状態でした」
バナナだけの生活を送っていたにもかかわらず、立派に生きようとするのはすごい。アカネが
同じ立場なら、生きることを放棄すると思われる。
「アカネさんがやってきてからは、生きる希望を持てるようになりました。本当にありがとうございます」
満足な食生活を送れなかった女性に、アカネのおにぎりを渡そうと思った。
「残ったおにぎりをプレゼントするよ」
「いいんですか?」
「いいよ。これを食べて」
「アカネさん、お腹は空かないんですか?」
「うん。どうってことないよ」
ご飯を一口も食べなかったとしても、永久的に生きていくことができる。
「水すら口にしていないので、身体が心配になります」
「水、食べ物を摂取しなくても、私は生きていけるんだ」
「そうなんですか・・・・・・」
「特殊な身体をしているから、飲食を必要としないんだ」
「でも・・・・・・」
「私のことを気にするより、自分の幸せを願った方がいいよ」
「ありがとうございます」
ココアはおにぎりを受け取ると、鞄の中にしまっていた。アカネはその姿を見て、家族に食べさせようとしているのかなと思った。