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100章 くじ引き大会2

 100人がくじを引き終えた段階で、3等以上が出た者はいなかった。

 4000個以上のあたりが入っているにもかかわらず、一個も出ないのは明らかにおかしい。くじに不正が施されているのかなと思った。

 くじを透視すると、特等、1等、2等、3等と書かれた紙を発見する。くじの中には、きっちりと当たりが入っており、くじを引いた人間の運が悪かっただけのようだ。

 101人目は小さな子供だった。身長から察するに、サクラと同い年くらいだと思われる。

 小さな子供がくじを開けると、「1等」と書かれていた。

「1等、おめでとうございます」

 1等を当てた子供に対して、500万ゴールドを手渡した。子供はお金の価値が理解できないのか、喜びの感情を示さなかった。

「マサオ、よくやったね」

 母親は頭をやさしくなでていた。

「ママ・・・・・・」

「今日の夕食は牛肉をごちそうするね」

「ママ、ありがとう」

 102人目以降は「ハズレ」が続くこととなる。あたりがなかなか出ないことに対して、もどかしさを感じることとなった。

 150人目の順番が回ってきた。これまでのあたりは、男の子の1等のみだった。

 20くらいの女性がくじを引くと、「3等」と書かれていた。

「おめでとうございます。カップラーメンになります」

 女性は悲しそうな表情をしている。カップラーメンよりも、現金を望んでいたのかもしれない。 

 20代の女性の後は、「2等」、「3等」がちょくちょく出ることとなる。これまでが外れすぎていたので、確率は収束しているものと思われる。 

 500人目までくじが進んだ。これまでのあたりは「特等」が0、「1等」は1、「2等」は3、「3等」は50だった。確率からすると、3等に偏っているように感じられる。

 501人目は見覚えのある顔だった。

「ユラも参加していたんだ」

「はい。特等の『セカンド牛+++++』をゲットしてみせます」

 ユラの狙いは「セカンド牛+++++」か。 

 周囲は口にしないものの、「外れろ」、「外れろ」という空気を醸し出していた。ユラが牛肉をゲットしてしまうと、当選する確率は極めて低くなる。

 ユラがくじを引くと、「3等」と書かれた紙が出た。「3等」を当てた女性に対して、カップラーメン50個をプレゼントする。

「アカネ先輩、ありがとうございます」

 ユラから10人連続で、「3等」が当たることとなる。アカネとしては、「特等」のくじを早く引いてほしかった。

 1000人目の参加者は、マツリだった。

「マツリさんも参加していたんですね」

「はい。私も一人の住民ですから」

 マツリがくじを引くと、「2等」と書かれた紙が出た。「2等」をゲットした女性に対して、5万ゴールドを渡した。

「アカネさん、ありがとうございます」

 くじ引きは進められていく。あたりを当てて喜ぶもの、ハズレを引いて悲しむもの、2つに完全に割れていた。

 時刻が12時を迎える。くじ引きに並んでいる人たちは飲食をしていないので、何かを口にしたいと考えているのではなかろうか。

「食事を配りますので、しばらくお待ちください」

 アカネは行列に並んでいる人たちに、おにぎり2個、ペットボトルに入った1000ミリリットルの水を配っていく。こちらについても、付与金から捻出されている。

 くじの順番が離れている人は、おにぎりと水を口にしていた。順番が回ってくるまでに、しっかりと栄養補給をしたいようだ。

 昼食後に一人の女性が手を挙げる。アカネはどうしたのかなと思い、そちらをうかがうことにした。

「どうかしましたか?」

「トイレに行きたいです」

 ご飯を食べたことで、トイレに行きたくなってしまったようだ。

「わかりました。私が代わりに並んでいます」

「ありがとうございます」

 女性はトイレの方角に向かっていく。トイレをできないというのは、かなりつらいことなのかもしれない。

 女性は五分ほどで戻ってきた。

「アカネさん、ありがとうございました」

 女性は元の位置に戻った。それを確認すると、アカネはくじのところに戻ることにした。

 アカネがいない間に、くじ引きは5人ほど進行していた。いずれもはずれを引いたたため、ポケットティッシュと共に帰っていったようだ。 

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