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102章 くじ引き大会4

 20分間の中断を経て、くじ引き大会の続きが行われる。

 残りの人数はおおよそ3000人ほどである。誰が「特等」、「1等」をゲットするのだろうか。

 15くらいの男の子がくじを引く。緊張しているのか、手が震えてしまっていた。

 男の子がくじを開くと、「3等」と書かれていた。

「カップラーメンです」

 男の子はカップラーメンを受け取ると、寂しそうな表情を見せる。その様子を見て、「1等」を狙っていたのかなと思った。

 次は40くらいの女性だった。身体についた脂肪は、女性の醜さを象徴しているかのようだった。

 女性がくじを引くと、「はずれ」と書かれていた。

 ココアがポケットティッシュを渡そうとすると、女性は軽い舌打ちをする。あまりの態度の悪さに、悲しさを覚えることとなった。

 女性が帰ろうとしていると、見慣れない人たちがやってきた。

「イイヅカサナエ 50万ゴールドの借金罪で逮捕する」 

 500万ゴールドをゲットして、借金の穴埋めをしようと考えていたのかな。「セカンドライフ
の街」においては、借金をした時点でアウトとなる。

 次に現れたのは25くらいの男性だった。力仕事をしているのか、力こぶが盛り上がっていた。

 男がくじを引くと、「2等」と書かれていた。迫力は「特等」クラスであったものの、くじの
結果はそうはならなかった。筋肉の量とツキは比例しないようだ。

 夕食再開後、1000人がくじを引いた。「特等」、「1等」は出ず、残りは1のままだった。

 アカネとしては最後まで残ってほしいと思いが強かった。当たりの入っていないくじを引くほど、辛いと感じることはない。

 40くらいの男性が前に立っていた。アルコールを摂取しているのか、酒の匂いがプンプンとす
る。ココアは我慢ならないのか、鼻をつまんでいた。

 男がくじを引くと、くじには「1等」と書かれていた。

『「1等」があたりました。おめでとうございます』

 男はあまりに嬉しかったのか、両手でガッツポーズをしていた。

「よっしゃー。500万ゴールドをゲットだ」

 男は興奮が冷めやまないのか、すぐ近くにいる人間を持ち上げてしまうこととなった。酒を飲んだことで、分別がつかない状態となっている。

「やめてください」

 20くらいの女性は、明らかに嫌がっている。アカネは同じ女性として、助けなければいけないと思った。

「会場で迷惑行為をしたので、拘留所に送り込みます」

 アカネは瞬間移動の魔法を使用して、男を拘留所に送り込む。会場に集まった人たちは、人間が瞬時に消えたことに対して、驚きを隠せない様子だった。

 酒に溺れていなければ、人生を守ることができていたかもしれない。酒というのは、人間にとって有害なのかもしれない。

 男から開放された女性が、地面に落ちようとしている。アカネはクッションの魔法を使い、女性の衝撃を0にする。

「大丈夫ですか?」

「はい、ありがとうございます」

 痴漢をされたことで、女性は元気を失っていた。

「迷惑男はどこに行ったんですか?」

「拘留所に送りました」

「ありがとうございます。心の傷は深いですけど、気分はすっきりとしています」

 女性はくじを引いた。紙には「特等」と記されていた。傷つけられた女性に対する、ほんのさ
さやかなご褒美のように感じられた。

「おめでとうございます」

 男が引き当てたお金についても、渡すことにした。慰謝料としては足りないかもしれないけど、少しくらいは報われるのではなかろうか。

「アカネさん、ありがとうございます」

「特等」、「1等」がなくなったにもかかわらず、参加者の人数は減らなかった。「2等」の5万ゴールドをあてにしているのかなと思った。

 2000人くらいの参加者は待ち続けたにもかかわらず、「特等」、「1等」を当てる権利を失った。このままでは待ち続けた人が報われない。

『「1等」を2枚追加するよ。お金については、ポケットマネーから出すことにする』

 魔法の力を使って、「はずれ」を「1等」に変える。

「アカネさん・・・・・・」

「待ち続けた人にも、当選してほしいと思っているの」

 小学生の頃を思い出す。5時間も待ち続けたにもかかわらず、目の前であたりが消えてしまっ
た。そのときのショックは、20年後もはっきりと覚えている。

「アカネさんのお金が減ってしまいますよ」

「大金を得られる目途がついているから、これくらいならどうってことないよ」

 ココアは顔を下に向けていた。彼女なりに何かを考えているのかもしれない。

「アカネさん、こんにちは」

 見たことのない女性だったからか、アカネの脳内に大量のクエッションマークが浮かんでい
た。

「誰?」 

「占い師をしている者です」

 骨が浮き出るくらいやせていた女性が、たっぷりの脂肪に包まれている。数ヵ月間で別人にな
ってしまった。

「ご飯を食べられるようになったからか、30キロ近くも体重が増えてしまいました」

「そうなんだね・・・・・・」

 数カ月で30キロも増えてしまうとは。満足に食べられるようになったことで、食欲のリミッターが崩壊したようだ。

 足が急激に重くなった身体を支えられていないのか、身体が左右に揺れている。

「ダイエットをしないといけませんね」

 体重を増やすのは簡単だけど、減らすのはかなりの労力がいる。彼女は体重を元に戻せるのだろうか。

 占いやの女性がくじを引くと、「はずれ」と書かれた紙が出た。

「参加賞のポケットティッシュです」

「ありがとうございます」

 ポケットティッシュを受け取った女性は会場を後にする。一歩ごとに、「ドスン」、「ドスン」という音が聞こえるような気がした。

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