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「サーシャ様。お飲み物はなににいたします?」
「で、ではお紅茶を」
 思いつかなかったので無難に返事をすると、メイドはしれっと「ではわたくしはブラックコーヒーをお願いしますわ」と言った。使用人がすぐにふたつのカップを持ってくる。どちらもあつあつの飲み物が入っていた。
「それにしても、どうしてわたくしなのでしょうか」
 用事も済んだので、流れで世間話になってしまった。この〆のお茶を飲んだら解散であろうが。サシャは疑問を口に出す。
「言いましたでしょう。キアラ様たってのお願いですと」
 メイドはコーヒーになにも入れずに飲みながら、しれっと言った。
「それはそうなのですけれど。……キアラ様は、わたくしが高貴な身分などではないとお分かりだと思いますが」
「好奇心旺盛なお方ですからね。サーシャ様が歌姫をされていると聞いて『私、違う意味のお姫様にお会いしたわ』と、パーティーのあとから随分はしゃがれておりましたよ」
 少女にしたら、物珍しいのもあるだろうが興味を引く出来事や話だったのだろう。
 そのあたりはやはりシャイに似ている、とサシャは思った。身分など気にしない、それより好奇心を優先してしまうカジュアルな気質。そういう性格も影響しているのだろう。だからこそサシャのことも気に入ってくださったのかもしれなかった。
「そう、なのですね……。あの、お礼を申し上げてくださいませ。身に余る光栄です」
 サシャは今度は心から頭を下げた。シャイの妹様だという以外にも、素直なキアラ姫の気持ちが嬉しかった。メイドはやはり素っ気なく「お伝えしますわ」と答えただけだったが。

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