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「……なんだか意外ですね」
 言ってしまってから、はっとした。馬鹿にしたように聞こえてしまっただろうか。
 しかしメイドはしれっと答える。
「キアラ様は姫様ですし、お客様もご親戚や貴族のお嬢様ですが。少女であられる方々のプライベートの集いですわ。このようなお歌を好まれるのは当然かと」
 それもそうである。王室開催の公的イベントではないのだ。あくまでも『超・高級女子会』と思っておけばいいらしい。
「そ、そうですよね……。大丈夫です。これとこれは歌ったことがありますし、こちらも楽譜はすぐ手に入るかと」
 指を指して示していく。
「そうですか。では譜面のご用意などは不要ですね。こちらではなにが必要でしょうか」
「では、譜面台と、あと失礼ですが間に飲ませていただくお水などございましたら……あと……」
 普段仕事で使っているものがあるにはあるが、バーの備品なので持ち出せやしないし、王室にはふさわしくないだろう。なので思いつく限りの必要なものを紙に書いていく。幾つか並び、それ以上思い浮かばなかったので「とりあえずこのあたりがあれば、お仕事は可能かと」とサシャはメイドに提出した。
「ではこちらをご用意いたしましょう」
 打ち合わせは一旦終了となり、メイドがテーブルの上の呼び鈴を鳴らして使用人を呼んだ。
 『メイド』といっても、それは『王室付きメイド』。今、この国では上流階級の部類にも入るので、むしろ『メイドさん』と呼ぶほうが失礼かもしれない。

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