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 でもそこで思い浮かんだのは、リゲルのこと。
 目を丸くして、声をひっくり返らせていた。明らかに照れた様子を見せていた。
 でも。
 リゲルのその照れたような反応は、悪いばかりとも思えなかった。
 もし、もし、あれが。
 『ライラが恋人なんて、そんなふうに考えたこともなかった』という驚きではなかったのだとしたら。
 万一、万一よ。
 ライラは自分に対して、じゅうぶんに前置きをして、それから頭に思い浮かべた。
 ……少しでも恋の気持ちで好いてくれているから、そんなふうに言われて恥ずかしくなった、とか。そういう、可能性。
 前置きをしっかりしておいたというのに、顔が一気に熱くなった。
 あまりに都合のいい思考だ。でもまるで可能性が無いとはいえない、と思う。少なくとも、カケラくらいはあると思う。
 ああ、こっちの理由だったらどんなに嬉しいだろう。リゲルの赤くなった顔と、しどろもどろになった様子が頭に浮かんで、ライラの胸の奥をあまく締め付けた。
 さっきのこと。少なくとも自分のことを、そういう意味で意識してくれただろう。
 彼の気持ちがどういうものかはわからないけれど、そういう存在、恋人という関係になることだってある存在だと、少しは思ってくれただろう。
 その点ではあのおませな子に感謝しないと、と、着替えのための部屋に入りながら、ライラは思ったのだった。
 普段のワンピースに着替え終わっても顔の火照りは取れなかったので、冷ますためにしばらく部屋で過ごすことになってしまったけれど。

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