ー 揺れるアールタラ(3) ー
「こちらのリボンでよろしゅうございますか?」
「ええ、特に希望はないわ」
差し出されたのは、漆黒のシルクに軍服と同じ
サイドは残し、他を全て一纏めに高く結い上げた髪にスカーフリボンを結び、その結び目に家紋のポニーフックを差し込む。
「お嬢様、お疲れ様でございました」
「ありがとう。完璧だわ」
礼服も髪も完璧に仕立て上げてくれた侍女が下がったと同時に、どこからともなくヘスティアが現れ、お茶を淹れてくれた。
「ふぅ…。やっぱりヘスティアの淹れるお茶が一番美味しいわね」
しみじみと呟くと、彼女は優しくニコリと微笑む。いつも通りのやり取りだ。
「さて、そろそろ行こうかしら」
ちなみに魔王軍は、スノトラ隊、ヘルモーズ隊、エイル隊、ノート隊の四部隊で構成されている。リントヴルム竜騎士隊は臨時招集部隊なので、ここには含まれない。
————スノトラ隊。
要人警護や儀仗(礼式)を主任務とするため、魔法や武術に長けるのみでなく、礼儀作法や賢さなどの素養が求められる。
軍服は、清廉な
フォルセティお義母様は、ここで
————エイル隊。
魔王軍の後方支援部隊。
軍服は、薬草をモチーフとした
テュールお父様が
————ノート隊。
魔王専属の諜報部隊。
任務内容は秘匿性が高く、魔王の命令しか受け付けない魔王の影である。
所属隊員は「ヴァールの誓い」という特別な儀式を持って認められ、ノート隊に所属した者は、以後、他の部隊に配置換えされることはない。儀式では自決用の呪詛が身体に刻まれ、魔王を裏切ろうとすれば直ちに絶命する。国から出ることができない魔王の手となり足となり、様々な任務を遂行させ、魔王から特別に厚い信頼を得た者へは【ロキ徽章】が授与される。【ロキ徽章】持ちは、命令がなくとも「魔王の益となること」という判断基準において自由裁量を認められるが、その反面、判断を誤れば呪詛により死んでしまう危険性もある。
軍服は、闇夜に溶け、返り血が目立ちにくい
アルヴィスお義兄様は、ここで
(アルヴィスお義兄様は、いったい今どちらにいらっしゃることやら…)
しばらくお顔を見ていないお義兄様に思いを馳せつつ、屋敷を出たところで妖精の羽翼を顕現させる。
いつも通り、
とんっと軽く地面を蹴り、妖精の羽翼の