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第4話 『ヒーローの絆』



 阿修羅を無事に確保したヒーロー。阿修羅の攻撃を受けた者たちも数日経てば、動ける程度にはなるようだ。



 犯人には逃げられたが、あれだけの戦闘がありながら死者は一人も出なかった。
 しかし、



「ウィング、りんご持ってきたぜ」



 病室にやってくる職場の仲間。ベッドで横になっているのはウィングだ。



「ああ、すまない」



 ウィングはあの戦いの時、天狗の仮面を被った敵と戦っていた。その時に深い傷を負っており、今は入院中である。



 ウィングは空からイナズマもアシストするのがあの時の役割であった。しかし、空中からの奇襲攻撃を受けて、天狗の仮面に負けてしまった。



 イナズマは椅子を置くと近くに座る。その後ろでグラビティと石崎は見守るように立った。



「なぁ、ウィング」



 イナズマは真面目な声で声をかける。真面目そうな雰囲気で話しかけられたので、何を話すのかと興味を持ったウィングがイナズマの方を向くと、変な顔をしていた。



「お前……何をしてるんだ…………」



「どうだ? 新しい顔芸」



「…………」



 イナズマの顔芸にウィングの動きは止まる。
 グラビティたちも苦笑いだ。



 その後、少し話をして30分ぐらい経った時。石崎の携帯に着信が来る。



「はい、もしもし…………」



 石崎が電話に出てしばらく話した後、イナズマたちに言う。



「事件よ。急いで向かって!」



「了解!!」



 イナズマとグラビティは急いで現場に向かった。石崎とウィングが病室に残される。



 沈黙の時間。ウィングは無口なタイプではない。だが、入院してから元気がない。



 それに気づいたイナズマたちはどうにか元気になって欲しいとあれこれしたが、あまり効果がないようだ。



 病室の窓から外の景色を見る。外には鳥が羽ばたき、大空を飛んでいる。



「石崎さん、俺はヒーローとして失格だ」



 窓の外を見ながらウィングがポツリと言った。



「もしもあの時、俺が敵を倒せていたなら、イナズマが犯人を取り逃すこともなかった。全て俺の責任だ」



 ウィングはあの時に天狗の仮面をした共犯者を取り逃したことを後悔していた。
 自分のミスでイナズマまで犯人を逃すことになり、さらには阿修羅の接近を知らせることもできず、警官たちに被害が出てしまった。ずっとこれを悔やんでいた。



 そんなウィングに石崎はバッサリと、



「そうね。あなたにはヒーローの資格はないわ」



 そう、ウィングに言い放った。それを聞いたウィングは下を向く。



「そうだよな。俺には……」



 そして落ち込む落ち込むウィング。それに石崎は近づくと頬にビンタした。



「下を向いている人にヒーローを名乗る資格はないのよ」



 ウィングの頬は赤く腫れる。



「ヒーローはいつだって人々の希望なの。それが責任だどうだって…………自信を持ちなさい!!」



 石崎はウィングに背を向ける。



「あなた、いや、あなたたちは立派なヒーローよ! 今までどれだけの人を救ってきたのよ。見るべきは下じゃない。あとは自分で考えなさい」



 そう言うと、石崎は病室を出て行った。






 市街地にてヒーローと破壊者(クラッカー)による戦闘が起きていた。



 イナズマは高速で移動して敵を撹乱する。
 そして混乱している敵を次々と倒していった。



 そして残りは最後の一人。リーダーである破壊者(クラッカー)を倒せば終わる。



 イナズマはその男の背後に行くと、頸に蹴りで攻撃をする。しかし、イナズマの攻撃は防がれた。



「その程度か? ヒーローイナズマ」



 リーダーの男は黒いスーツ姿の男。葉巻を咥えて、目の下には傷がある。
 彼はイナズマの足を片手で掴んだ。



「ふ、俺も俺なりに欲望を貫いてきた男だ。ヒーローごときに遅れはとらん」



 イナズマを地面に叩きつける。



「お前たちもいつまで寝てる! さっさと起きてヒーローどもを駆逐しろ!!」



 男の声に反応し、イナズマに倒されたはずの手下たちが次々と立ち上がる。



 男の名はドンパンジー。能力は支配者(カリスマ)。使役する者を支配する力がある。
 無意識な者にも効果がある。



 意識のないドンパンジーの部下たちは、イナズマやグラビティ、応援に来ていた警察官に襲いかかる。



 イナズマは立ち上がると、ドンパンジーに再び攻撃を仕掛ける。しかし、ドンパンジーはイナズマの攻撃に対応し、全ての攻撃を避ける。



「お前がどれだけ早く動こうと、俺には敵わない」



 ドンパンジーはイナズマの腹にパンチする。イナズマは腹を押さえてその場に倒れ込む。



「ぐっは……」



 倒れたイナズマの頭をドンパンジーが踏みつける。



「何がヒーローだ。この程度で何ができる」



 イナズマの頭に泥を塗るように靴を左右に動かす。



「俺たちは貴様らに抑制される気はないんだよ」



 ドンパンジーはイナズマを蹴り飛ばす。イナズマは地面を転がりながら、力尽きて倒れる。



「イナズマさん!!」



 グラビティはドンパンジーの部下に襲われる警察を助けていて、イナズマの元に向かうことができない。



 グラビティの重力には一度に使える時間と質量に限界があり、すでにそれを超えている。
 ドンパンジーの部下を抑えるので精一杯だ。



 ドンパンジーは懐からハンドガンを取り出す。そして倒れるイナズマに向けた。



「ヒーローイナズマ。貴様はここまでだ」



 ドンパンジーが引き金を引こうとした時、空から何かが降ってきて、ドンパンジーのハンドガンを持つ腕を切断した。



「ぐぁー!!」



 ドンパンジーは残った腕で痛む消えた腕を抑える。



「な、なにが……」



 空には白い翼を生やした男。



「ヒーローウィング参上!!」



 そこに現れたのは、病院服ではなくヒーロースーツを着たウィングの姿。



 イナズマは朦朧とする意識の中、ウィングを見つける。そして安心するように気を失った。



「新手か……だが、どれだけヒーローが現れようと、俺には勝てん!」



 ドンパンジーは歯を食いしばり、痛みを我慢している間に、ハンカチで傷口を結んで出血を止める。



 そして地面に落ちているハンドガンを拾う。



「弾丸か。そんなものは俺に当たらない」



 ドンパンジーはウィングに向けてハンドガンを撃つ。しかし、ウィングは空中で弾丸を回避する。



 そのまま急降下すると、剣を構え、ドンパンジーを斬りつけた。



「応天門!!」



 ドンパンジーはウィングの剣で斬りつけられ、その場に倒れた。
 ドンパンジーを倒したことで、能力が解除され、意識のないドンパンジーの部下たちは次々と倒れる。



「ヒーローウィング、完全復活だ」




【後書き】

 復活しました。



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