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一章第五節

 スマホを開いて、その辺の店を探してると。急に画面が暗くなり、空間震と赤い文字がでかでかと出てきた。
 それと同時に、スピーカーから最近聞いたことある音が聞こえてきた。
「空震警報音! 空震警報音! 付近で空間地震の予兆を観測しました。フリアージが出現します。付近にお住まいの皆様は避難指示が出るまで家から絶対に出ないでください」
「繰り返します。現在……」
「またか」
「あっちですね」
 ジャンヌが指をさしたのは何もない空だが、おそらくそこに空間震が起きていてヒーローが居るんだろう。
「わかるのか」
「もともと、聖遺物ですからね」
「これじゃ外食どころじゃないな、帰るか」
 俺はベンチから立ったが、ジャンヌはベンチに座ったままだった。
「帰るぞ」
「もう少しここにいていいですか」
 俺を見るジャンヌの目は、不安に揺れていた。
「何がそんなに不安なんだ」
「私には、あそこに空間震があると。フリアージがいるとわかります。なのに、目の前はこんなにも平和なんです。ずれているんです、私の知る感覚と。それがたまらなく恐ろしい」
 自分の両腕を抱きしめ、ジャンヌは俯いている。俺はどうするべきだ。
 本来喜ぶべきこの平和に。ジャンヌは平和こそが恐ろしいと、真逆の考えを抱いている。
 今すぐジャンヌの手を引いて、この場を離れるべきだろうか。それともこのまま、ジャンヌの隣にいるべきだろうか。俺はどっちを選ぶべきなんだ。
 わからない、どちらを選ぶべきなのか。
 昔なら悩まなかったのかもしれない。誰かのためにそばに寄り添っていたから。だが、今はそうじゃない。
 誰かのそばに寄り添うことを、やめてしまった今の俺には。なにを選ぶべきなのか、わからない。
 突っ立ている俺と、下を向いたまま動かないジャンヌ。結果的に、俺はジャンヌのそばに居続けた。
 そしてそのまま五分くらいが過ぎたころ、下を向いていたジャンヌが上を。さっき、指さした空に顔を向け鋭い視線を向けた。
「来るっ!」
 なにが、と。俺がその言葉を口に出す前に空が割れた。
 そしてキーンと空が鳴る。
 瞬きをして、もう一度見た。
 空が割れている。夕焼けの空に、向こう側の見えない、黒い亀裂が広がっていた。
 道を歩く、会社帰りの女性が。子供を連れた親子が。その場にいた、ありとあらゆる人が。空を眺めていた。
 そして、亀裂から黒いしずくが一つ落ちてきた。落ちてきたしずくは地面にぶつかると、水たまりのように広がり、そして徐々に形を取り始めた。
 辺りは静寂に包まれ、しずくが形を取るのを人々は傍観していた。
 徐々に、その形は鮮明になっていき。一つの形をとった。獣の形をしたフリアージに。
 フリアージは、首を動かし子連れの親子を見た。
 首だけでなく、体も同じ方向を向いた。
「Gaaaaaaa!]
 鳴き声とともにフリアージが地面を蹴り、親子に飛び掛かるその瞬間。その場にいたほとんどの人が動けないでいた。ジャンヌという一人を除いて。
 右手に槍を持ち、その身を鎧に包み。すでにフリアージの頭上に居た。
 槍がフリアージを地面に縫いつけ、動かなくなると同時にジャンヌが口を開いた。
「逃げてっ!」
 その一言に、動いていなかった人々が一斉に動き出した。悲鳴と怒号が飛び交い、平穏で平和なひと時が崩れ去った。
 その光景は、十年前を彷彿とさせる。阿鼻叫喚の世界が瞬く間に広がった。
 空から落ちるしずくは増えていく。
 誰かが逃げた先に、しずくが落ちる。そのすべてに対応することはジャンヌにはできなかった。どうにか襲われそうな人を助けることはできていたが。四方に散らばっていくフリアージには対応できないでいた。
 俺は、逃げなかった。いや逃げれなかった。動くことができないでいた。それは、ヒーローという力を手に入れてしまった代償なのかもしれない。
 幸いにも俺の周りにはフリアージが来なかった。今ネックレスに触れて、ジャンヌに声をかけて。体を入れ替えれば、今この場にいるすべての人を救うことができる。
 あの黒い炎を使えば、散らばっていくフリアージも倒すことができる。
 だがその行為を躊躇っていた。俺に何ができるんだと。あの時死にゆく妻を目の前に、何も出来なかった俺になにがと。もうあの時から誰かを救おうとすることをやめた俺に。何が、と。
 ペンダント握る手の、指にはめられた指輪に目が行く。妻からもらった指輪。優しいといわれていた、あの頃なら俺はどんな選択をするだろうか。
 どんな選択をすれば妻は喜んでくれるだろうか。
 どんな選択をすれば、由衣に恥じない俺で居られる。
 そう考えると、自然と体が動いていた。
『ジャンヌ、変われ』
『は、はい!』

 目の前が暗くなり視界が開けると、目の前には槍に貫かれたフリアージが居た。遠くには自分の姿が見える。
 辺りに居た逃げ遅れた人の数は減り、フリアージは新たな犠牲者を求めてこの場所より遠くへ行こうとしていた。
「どこに行くつもり、逃がさないわ」
 散らばっていくフリアージを燃やす。
 地面から炎の柱が空に向かって立ち昇り、フリアージを覆う。
 消えることない憎悪の炎で、フリアージを燃やし尽くす。
 逃げ遅れた人に飛び掛かろうとしているフリアージを、地面から槍を突き出して止める。
 そして、目についた逃げ遅れた子供に近寄る。
「なに泣いてるの」
「えぇぇぇん!」
「やかましいわね」
 子供の襟をつかんで、ジャンヌの所に地面を蹴って飛ぶ。
「ジャンヌ、これその辺に捨ててきなさい」
「任せてください、安全なところに連れていきます」
 捻くれたこの言葉遣いでも、ちゃんと理解してくれるのはジャンヌだけね。
 というか、この体に馴染んできたのかしら。口調だけじゃなくて思考すら変わってるんだけど。まあ気にすることじゃないかしら。
 それにしても自分の声でジャンヌの口調で喋られると、すごく変な感じよ。気持ちが悪いというか、ジャンヌには言わないでおきましょう。
 この姿になって、すぐに憎悪の感情に飲まれるかと思ったけどそんなことは無かった。平常心までは行かないけど、それなりに穏やかな感情のままでいられる。
 それは憎む相手がフリアージになったからかもしれないし。ああ、でもヒーローに思うことは一つだけあるわね。
「ほんと、ヒーローって使えないわね。ヒーローじゃない私がこんなことしなきゃいけないなんて。使えないわ。使えなさ過ぎて、イライラしてくる」
 落ちてくるしずくを、フリアージという形をとった瞬間に燃やすか、突き刺す。
 突き刺さった死体だけは消えることがなく、辺りは地獄と言われてもおかしくないよな光景になっていく。
 動いていない以上、死んでるんでしょうけど。消える消えないの違いは何なんなのかしら。
 燃やして刺して、それを何回も何百回も繰り返してると徐々にイライラが溜まっていく。
「あーもう、めんどくさい!」
 周りにはもう人はいない。いるのはフリアージだけ。なら派手にやってもいいでしょ。足を一歩踏み出す、それだけで、炎が地面を覆っていく。
「槍に刺された死骸だけじゃ味気なかったわ。でも、これなら地獄って言ってもいいわよっアグゥゥゥ!」
 左目に激痛が走る。あの痛み、体が侵食されるあの痛みよ。それが左目に走った。右目の視界に炎がちらつく。
 地面に落ちているガラスの破片に映る左目には、黒い炎が灯り目の周りが黒く浸食されていた。
「力を使い過ぎたのかしらっ!」
 徐々に痛みが引いてきたものの、浸食と炎はそのままだった。空にある亀裂の下、フリアージが落ちるすべての場所が黒炎の海になる。
 槍に刺された死骸すらも燃えて消えていく。落ちてくるフリアージは地面に着いた瞬間に燃えて消える。
「ふふふ、これですっきりしたわね。でも、あの亀裂どうしようかしら」
 フリアージはどうにかなったのよ。あとは大本の亀裂だけ。でも、あの亀裂をどうこうする考えは私にはない。そもそもヒーローじゃないし。知らないものは知らないよ。
 試しに炎を伸ばしてみても、高すぎて届かない。槍はそもそも論外。打つ手なしってわけね。
「ヒーロを待たなきゃいけないのって、こんなにも退屈なことなのね」
 落ちては燃えていくフリアージを眺めていると、空からフリアージじゃない何かが落ちてきた。
 現れたのは突然。まるで見えていなかったものが、急に見えるようになったみたいに突然だった。
 遠目にも、今ならはっきりと見える。あれはヒーロー、それも一昨日見たのと同じ格好の奴。
 ヒーローの姿を見た途端。内から、あのどす黒い憎悪の感情がうごめきだす。
 やっぱりヒーロは憎いわ。このまま落ちるところに槍を出したくなるくらいに。でも我慢しないといけないのよね、だってあの亀裂をどうにかできるのはあのヒーローだけなわけだし。
 落ちる場所にはもちろん炎があるけど。まっ、ヒーローならどうにかするでしょ。
 うごめく憎悪を必死に抑えて、落ちてくるのを待つ。
 落ちてくるヒーローは、地面に向けて剣をふるうと炎を吹き飛ばした。ちょうど人が一人立てるくらいの空間が落下地点に出来上がった。
「遅かったじゃない、ヒーローさん。いえ、アーサー」
「ありがとう」
「はぁ?」
 私、耳が悪くなったのかしら。このヒーロー「ありがとう」って言った気がするんだけど。一昨日殺されそうになったはずよね。あの時と別のヒーローとかじゃないわよね。
 たたずむアーサーを上から下まで見ても、あの時と変わらない姿で立っていた。
「ここに居た人たちを助けてくれたんだろ。だから、ありがとう」
「底抜けの馬鹿だわ」
 あら、ボケっとした面白い顔になったわね。でも、すごく腹が立つわ。なにをしても人をイラつかせる天才なのかしら。
「一昨日殺されそうになったの忘れたの?」
「忘れてない。でも人を助けてくれたことは事実だ」
「はぁ、ほんとあんたと話してると調子が狂うわ。さっさとあれどうにかしてくれないかしら」
「わかってる。聖剣開放」
 胸の前に掲げた剣が光始めると、周りの炎も消え始め。光が強くなるにつれてその範囲も増えていく。聖なる力に憎悪の炎が弱いのは当り前よね。だって弱点じゃないどう見ても。
「我が勝利は約束されている。エクス……カリバー!」
 上から下に剣は振り下ろされた。光る剣筋は空にある亀裂を切り裂き、夕暮れの空を取り戻した。光の剣筋が起こした衝撃で周りへの被害はない。
 うまく加減したのね。
 周りでの被害だけで言えば、私の方が破壊してるわよね。地面から槍を突き出すときにタイル破壊しちゃったし。ま、悪いのはフリアージだから私には関係ないわ。
「ほんとヒーローって嫌になるわ。美味しい所全部持っていかれるし」
「何を言ってるんだ、一番活躍してるのは君だ。大勢の人を助けてくれたじゃないか」
「助けるね。成り行きでそうなっただけよ。私はただ目障りなフリアージを殺しただけ」
「そうだとしても、助けたことに変わりはないだろ。それに君は教会に認められたヒーローじゃない。助けないで逃げることもできた。それなのに君は大勢の人を助けた。君は勇気があって優しいんだね」
 優しい、優しさ。そんなもの今の私にはないわ。あるのはそう、今にも飛び出しそうになっているヒーローへの憎しみだけ。
「優しいと本気で思ってるのなら、馬鹿馬鹿しい。私に優しさなんてないわ」
 一蹴り、それだけでアーサーの元にたどり着く。互いに手にした剣と槍がぶつかり合い、鈍い音を鳴らした。
「アーサー、あなたみたいなヒーローにはわからないかもしれないけど。世の中、優しさを持っていると損をするようにできているのよ。優しさに付け込まれて破滅する。だから優しさなんて必要ないのよ!」
「それは違う!」
「どこが!」
 もう憎悪の感情よりも、イラつきの方が勝ってる。
 それでもヒーローを憎んでいることには変わりがないから、攻撃の手は止まらない。
 それどころかもっと苛烈になる。
 槍を地面から突き出させ、不意を突こうとしたけど避けられた。
「誰かに優しくすれば、必ず相手も優しくしてくれる」
 その言葉にイラつき、手にした槍を突き刺そうとしたが剣で逸らされた。
「困ったときに助けてくれる。優しい人は、得をする人だ!」
「それにも限界があるわ。昔助けられたからって、力が弱い人間は力の強い人には適わないのよ」
 横振りの剣撃を槍を盾にすることで防ぐ。
「搾取され、道具のように扱われ、そして最後に待っているのは破滅だけ」
 盾にした槍をを剣に滑らせ、アーサーに近づき蹴りつける。 
「力の強いあなたには絶対に理解できないことよ!」
 しかし、剣を手放し地面を蹴って避けられた。手放した剣はいつの間にかアーサーの元に戻っている。
 ほんと、ヒーローって嫌になるわ。だってこんなにも強いんだから。こっちは殺す気で槍を振るってるのに、涼しい顔してるし。
 憎い憎い、憎くてたまらないのに、私の力は弱い!
 お互いに距離を取って、武器を構える。
「優しいだけで居られるのは子供のうちだけ。大人になったら、優しさは捨てないと生きていけないのよ」
 槍に炎を灯す。
「真っ白な心でさえ、黒く塗りつぶさないと生きてはいけないのよ」
「君に何を言っても無駄みたいだ」
 アーサーは正面に剣を構えた。その剣は光に包まれている。
「それはそうよ。憎しみを糧に戦う私と、希望や優しさなんてものを掲げて戦うあなた。相容れないのは始めからわかっていたことよ」
 私もアーサーもにらみ合ったまま動かない。
「それでも」
 アーサーの力強いその目に、見られただけで動けなくなる。穢れなんて知らない、人の黒い感情を知らない。その綺麗な透き通った目に見られるだけで、息が苦しくなる。
「絶対に優しさは必要だってことをわからせる。俺の優しさで、あなたも救って見せる!」
 まっすぐなヒーローらしい言葉。だけど、この私を救う?
「あなたには私を救うことなんてできないわ。それだけは断言してあげる。私はもう落ちるところまで落ちたのよ」
 槍に灯った炎だけでなく、左目の炎も。感情に比例するかのようにその勢いを増していく。
「今さら救いなんて求めて無い、私にあるのはこの憎しみだけ。燃え盛る憎しみの復讐の憎悪の炎だけなのよ!」
 そう、何にもない私に残された唯一の物。ヒーローの力に消されてしまうなら。消されないくらい強い憎しみの炎を燃やせばいい。
「これで終わりにしましょう」
「絶対に救って見せる」
 距離を詰めるのは同時だった。
 先に攻撃したのは私。アーサーの足元から槍を突き出す。でも最初からわかっていたみたいに、アーサーはそれを上に飛び上がって回避した。
 最初から当たらないのはわかっていた。ただ、アーサーを上に誘導するための攻撃に過ぎない。
 力の弱い私が勝つために必要なことだった。飛び上がって、剣を振り下ろすアーサーに下から槍を突き刺す。地に足を付けた私の方が有利なはず!
「アーサー!」
「はぁぁぁ!」
 剣と槍がぶつかりあい、光と炎を散らす。そしてアーサーが後ろに着地した。
「やっぱり、ヒーロって存在は嫌になるわ。情けをかけられるなんて」
 兜がなくなっていた、槍がまとっていた炎は消えて。地面を包んでいた炎すらも消えてしまった。でも左目の炎は消えてないみたいね、謎だわ。
 地面の炎が消えたのはヒーローに対する憎しみが、今じゃほとんど無いからよねこれって。戦うことで発散したのか、あの光で消されたのか分からないけど。完全に私の負ね。
『今どこにいるの』
『枝垂さん無事なんですね。よかった。今家に帰ったところです』
『そう、今からそっちに行くから』
『わかりました』
 さて逃げる準備をしないとね。
「情けをかけたんじゃない。救う相手を傷けないようにしただけだ。なあ、こっちを向いて顔を見せてくれないか」
「隠していた顔を見たがる男はモテないわ」
「別にそういうつもりじゃ」
「でもそうね、いいわ。少しだけ見せてあげる」
 敗者は勝者に従うものだものね、普通は。
 ゆっくりとアーサーのいる後ろに、振り向く。その途中で私の周りを炎で包む。話し方がイラついたから簡単に炎が出たわ。
「何をしてっ」
「敗者はただ消えるだけよ。それに炎の隙間から少しは顔が見えるんだからいいでしょ」
 体を覆っていた鎧と、槍を消す。服はジャンヌが来ていた服のままね。
 ちょうど沈む夕日が後ろにあるからアーサーの焦ってる顔がよく見えるわ。もしかしたら逆光で私の顔が見えてないかもしれないけど、私の知ったことではないわ。
「待ってくれ、俺はただ」
「あなたの言って言ったこと、否定だけはしないでおくわ。確かに優しくすることはいいことよ。時と場合を選べばね。それじゃあさようなら」
 そういえば、ジャンヌにやり方聞いてなかったわね。今更消えれなかったら、これ恥ずかしいことになるわね。
『ジャンヌ、そっちに行く方法ってどうやるの』
『ふぇ。んん、私のとこ。ええっと枝垂さんのことを強く思い浮かべればこっちに来れます』
『何か食べてるでしょ』
『お腹すいちゃって……』
 はぁ、とりあえず方法はわかったし。この炎を消される前に居なくなりましょう。
 自分のことを強く思う。毎朝よく見る顔だから簡単ね。
「待っ……」

 体が引っ張られるような感覚がして、周囲の音もなくなって。次に聞こえてきたのは、何かをすする音だった。
「私にあれだけカップ麺がああだこうだって言っておきながら、今私の目の前でカップ麺を食べてるのはどこの誰かしら」
「ほはえひははい」
「飲み込んでから喋ってくれる?」
「ん。ごちそうさまでした。おかえりなさい枝垂さん。今戻しますね」
 ジャンヌが手を握ってきて、目の前が真っ暗になると。体は元の戻って、目の前にはジャンヌが居た。
 あと、空腹が消えてほどほどの満腹感がある。すごく変な感じだ、さっきまで腹がっ減ってたのに、今は腹が減ってない。しかも食べてたのはジャンヌだから食べた実感がない。
「ジャンヌ」
「はい?」
「夕食抜きだ」
「そんな!」
「今食べただろうが。俺の体で」
「私は食べましたけど、食べてないからお腹減ってるんです。それに戦ったから余計に!」
 戦ったのは俺だが体はジャンヌの体だったしな。仕方ないか、半分は俺の責任だ。でも、俺が食べれないのは納得がいかない。
「わかった、食べてもいい。ただし、二時間後な」
「二時間も待てませんよー」
「俺の腹が減るまで待て」
「そんなー」
 まあ、今日は俺が料理しよう。ジャンヌが頑張ってくれたからな。

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