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9話

続いて2階へ上がる。広さは1階と同じだ。
まず初めに、1階の入口側に当たるところの壁の位置をずらす。
外には、壁のあった部分に柵を付けてバルコニーを作った。

「あ…」

バルコニーを作った後に気づいた。あの丸窓の位置が移動してしまったのだ。

「ココロ?」
「何か間違った?」

不安そうに伺ってくる妖精達

「あ、ううん。次どうしようか考えてたの」

慌てて否定する。間違った事には違いないが、それは妖精達ではなくココロの方だからだ。丸窓の位置は別の所へまた付ければ良い

それから、階段に面した所は廊下にした。突き当たりにはバルコニーがあるので、扉も付ける。
残りの部分を壁で仕切る。バルコニー側を狭めにした。
バルコニー側はココロの寝室、反対側はクローゼット含めた収納部屋だ。
それぞれに行き来出来る扉、それから廊下への扉も付けた。

「あ、もう外暗いね。もうじき夜になるね」
「暗いねー」
「夜になるー」

ココロの言葉を真似しながら妖精達は飛び回る。
妖精達の力で家が出来たとは言え、流石に家中歩き回ったので少し疲れが出た。
食事も朝軽く摂っただけで、昼は移動で食べていない。

「あー、ご飯、どうしよう」

食器や調理器具は何も無い。
それどころか、食材すらないのだからどうしようも無かった。
もうこのまま寝てしまおうかと、考えた時、タブレットが光った。全体ではなく、画面下の中央部分だ。
一定間隔で点滅しているので、そこに触れれば良いのだろうか。

恐る恐る人差し指で触ってみると、3D映像が現れた。
映ったのはライラ女王陛下。と、その後ろにハロルドが見える。
ビデオ電話みたいな物だろうか

『ココロさん、ハロルドからお聞きしました。やはりココロさんで間違いなかったようですね。』
「ライラ女王陛下?え?これはどういう…」
『お礼の物を受け取ってください。また何かあれば、ハロルドを頼って貰って良いので、その子達を、お願いします』

会話にはならなかった。通話では無いようだ。
映像が消えると、メール画面に切り替わる。
一番上に再生の文字。選択すると、先程の映像が流れるのだろう。
その下に、何か添付されている。それも2つ。
1つ目を選択すると、注意書きが表示された。

「”広い、何も無い場所で開いて下さい”?」

表示が消える。もう一度選択しても同じだった。廊下では狭くて開けないようだ。
一先ず寝室へ入る。広さは充分で、まだ何も置いていない。
改めて選択してみると、今度は違う物が表示された。

「ベッド?」

数種類のベッドが写っている。
天蓋付きのベッドやキングサイズのベッドから、シングルベッドまで色々ある。

「これをくれるのかな?」

流石に全部ではなく、どれか1つだろうが。
表示を消す事が出来ないので、受け取り拒否は出来ないようだ。せっかくなので良さそうなのを見繕う。

「流石に天蓋付きはないかなー。小さい頃なら憧れたけど」

流石に豪華過ぎる。身の丈に合わない。キングサイズのベッドも同じ理由で止めた。
だからといってシンプルなベッドにしてしまうのはもったいない気がする。
少し迷って、フカフカして気持ちよさそうな、少し広めのベッドに決めた。
選択すると、「YES・NO」の表示。迷わずYESを押すと、部屋の中央にベッドが現れた。

「おおー気持ちよさそう」

思わずダイブしたくなる衝動を抑え、タブレットへ視線を戻す。
ベッドが表示された添付は消えていた。
もう1つは何だろううと選択すると、見覚えのあるものが手の中に落ちてきた。

「メニュー表示?」

朝見たものと同じだった。
一つ違うところを上げるとすれば、”1度きり”と表示されている所だろうか。
中身は同じだった。

「1度きりかー。なら、ちょっと豪華なのにしようかなー。あ」

ココロの周りで様子を伺っている妖精達に視線を向ける。
頭に乗っている子や、メニュー表を上から覗き込んでいる子等もいた。

「何か気になるの、ある」
「?」

せっかくだから、色々頼んで妖精たちと食べようと声をかける。
けれど、意味が伝わらなかったのか、総じて首をかしげるだけだ

「これ、なぁに?」
「え、これはご飯だよ」
「ごはん?」
「えーっと、食べ物、の方がいいかな?」
「??」

どうにも伝わっていない様子だ。
もしかして、と一つの仮定が浮かび上がってきた

「皆、食事しないの?」

こころのその質問に、やはり皆首を傾げるだけだった。
どうやらここにいる妖精たちは食事を必要としないらしい。
能力はそれぞれ違うけれど、あれだけの力を使って疲れないのだろうか…

「ん?」

ふと、タブレットが目につく。表示されていたのは、朝、タブレット起動したときに映っていた物だ

「HPとFPが、減ってる?」

HPはほんの少し、FPは驚くことに、半分近く近くまで減っていた。
一番上のHPは体力(health)だと思われる。何かと戦って攻撃を受けたわけではないので、ヒットポイントではないはずだ。
入り口から家を建てた所までと、家の中も歩き回った分が減ったのだろう。
SPはスキルポイント、EXPは経験値。コチラ2つは変動無しだった
この2つは横に並んで表示されているので、もしかしたら連動しているのだろう。
スキルを使うことで経験値が貯まり、レベルが上がる。そして各ポイントの上限が上がる。RPG等のゲームと同じなのだろう。
しかし…

「このFPのFって、何だろう」

あまり見かけたことの無い物だ。代わりによくあるMPは見当たらない。
Fから始まる単語を思い浮かべてみる。最初に思い浮かんだのがファーストフードなのは、お腹が空いているからだろうか。
けれど、この疑問の解決は済ませたい。

「F、F……ん?」

先程と同じように、タブレットを覗き込むいくつかの妖精。首をかしげるココロの真似をしているのもいた。
確か妖精は英語でフェアリーだ

「もしかして、フェアリーポイント?」

そう思えば納得が行く。
木を切ったり加工したり、それらを組み合わせたり。一つ一つの工程を行う際に、FPを使用しているのだろう。
食事を取らずに動けるのは、人とは違うからだろうか。

ひとまずポイントについては納得いったので、食事を取る。
外はもう真っ暗だった。
贈り物のベッドへ入り、ココロの異世界生活一日目は終わりを迎えた。

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