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閑話休題

「ええっすごい! エッザールって火吐けるんだ!」
「いやいやフィンさん、吐けるとはいっても専用の強いお酒と火種が必要ですけどね」
「けど、どんなふうに吐くんだか一回見てみたいな。そうだろチビ?」
「ぼーってだすの?」
「ええ、この……私の先祖代々から醸造されているこのお酒をですね、ぐっ……と。飲んだあと、すぐに歯と舌を丸めた間から一気に霧状に吹き出して、そこに火を……!」

「うわ、あんなとこまで火が行った!」
「おいこらエッザール! 調子に乗って壁まで燃やすンじゃねえ!」
「……と、まあ、こんな感じで……ぉぅぷ」
「これで酒に弱くなきゃほんと頼りになるやつなんだがな……便所あっちだぞ」
「ず、ずいまぜんラッジュざん……うぷっ」

「………………」
「な、なんでずがタージアさん?」

「すごい……すごいですエッザールさん!」
「い、いや、ごれは私だぢシャウズの民だげにしがやれない技であっで……真似でぎまぜんがらね」
「こ、これは私の推測ですが、恐らくエッザールさんの咽喉部分にはもう一つ食道管に似た器官があって、そこに一時的に流動物を貯めておくことができるんだと思うのです。そして気道の収縮によって一気に逆流させることができ、さらには舌下に細い管が伸びていて、そこで射出する液体の飛距離を自由に調節することが可能となるのです! シャウズ族は水棲亜種もいることが確認されているので、肺活量に関しては相当なものでしょうし」
「は、はあ……よくそこまでお分かり……で」

「あの……それで、エッザール……さん」
「え、なんでしょうか一体?」
「さっきのブレスを見てあなたの身体をもっと調べてみたくなりました! お願いします! 舌の裏と口腔内をちょこっとだけ見せてくれるだけでいいんです! でももしよろしければ第三の器官の構造も覗かせてもらえればと!」
「や! やめ! 妙な刃物振り回さないでくださいタージアさん! 私が死んでからお調べするってあなたさっき言ってたじゃないですか!!!!」
「ごごごめんなさい! やっぱり気が変わりました! 今すぐ見てみたくなってしまいまして!」

「だれかたすけてええええええええええ!!!」

「ちょっと! なに変なとこで騒いでるのさ、二階からホコリが降って料理に落ちてきちゃうじゃない!」
「ああっトガリさんいいところに来た、助けてください!彼女に生きたまま解剖されてしまいます!」

「え……!?」
「えっと、この人……どちらさま?」
「は、初めまして私このたびこのギルドにお世話になりますタージアと申します以前はデュノ様のラボでっ……て、ええええええええええええ!?」

「なな、なんなの急に!?」

「そそその下半身に重心が置かれた小柄な体形に大きく伸びた手足の爪! それに視力補正器具! もしやあなたはアラハスの方でしょうか!?」
「そ、そうだけど……?」

「いい一回調べてみたかったんですアラハス人の身体を! どうやってあの過酷な砂漠の環境に適応できる身体へと進化したのか! ぜひ! 私に!!!!」
「ちょ! それ僕の使ってるナイフ……ってうわあああああああああやめてええええええ!!!」


ー一方その頃、食堂では。
「このお酒すっげ美味しいにゃ~。いったい誰が持ってきたの~? もっと飲みたいにゃ~」
「おいジール……それ、エッザールが大事にしてた……」




その後、全員エッザールにむちゃくちゃ怒られましたとさ。

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