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 私の許可も取らずに……。だからなのだろうか?
黙ったまま姿を消されると気になって仕方がない。
 まるで私が失礼な事をしたかのようで、後味の悪い気分だ。

「あの……すみません。
この後、知り合いと会う約束をしていまして……」

「そうなんですか?それは、残念だ」

 あぁ、そんな寂しそうな表情をしないでほしい。
私だって本当は、行きたいのに……。
 でも課長を捜さないといけないし……。

「……すみません。
お気持ちは、凄く嬉しいのですが……」

「俺から急に誘った事なので気にしないで下さい。
 それなら、またお誘いしてもいいですか?
電話かLINEで連絡をするので」

「それは、もう……いつでもお待ちしています♡」

あぁ、これよ……これ。
 断ったとしても紳士で嫌味も言わずに次のお誘いをする姿勢。イケメンの中のイケメン。
 課長もこれを見習ってほしい。
勝手に居なくなるのではなくて……。
 くぅ……本当なら安西さんと食事に行けたのに。
でも、課長を捜さなくちゃあ……。

 このまま後味の悪いままにするよりも、ちゃんと課長に素敵な相手が見つかったと報告しないと。
 で、もう婚活をしませんって伝えなくちゃあ!!
せっかくのチャンスを逃したくない。
 頭の中は、課長と安西さんの板挟みだった。

 名残惜しく教室が終わると安西さんと別れる。
笑顔で去って行くのを確認すると課長の行きそうな場所を慌てて捜した。課長どこに居るのかしら?
 行きそうな場所……。前に行った小料理店とかは?

 私は、もしやと思い一度連れて行ってもらった小料理店に行ってみることにした。
 課長は、いろんなお店を知っている。
なのに何故かそのお店に居るような気がした。

 そこまで向かうと扉を開けた。
すると……居た!!
 予想的中。そこには、課長の姿が会った。

「宮下!?何故ここに……?」

 カウンター席に座っていた課長は、驚いたようにこちらを見ていた。
 何故ここじゃないですよ~!!

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