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「おい、宮下。何そこでブツブツ言っているんだ?
さっさと玉ねぎの皮を剥け」
邪魔するかのように課長が横から口を出してきた。
くっ……ここに課長が居なかったらやりやすいのに。
仕方がなく玉ねぎの皮も剥くことにする。
そしてみじん切りにしていく。うーん。
いくら私の容姿だとイケメンに好意を持たれなくても教えてもらうことなら出来る。
これは、やっぱり少し下手さをアピールして、先生とお喋りしなくちゃあ!
「先生~玉ねぎが目に染みて上手く切れませーん」
わざと下手さをアピールする。しかもちょっとブリっ子になりながら
本当は、高速で切ることが出来ます。
「はい。ちょっとお待ち下さい」
杉本先生は、他の人に指導しながら返事をしてくれた。
待ってます、何時間でも♡
しかし後ろから黒い気配がした。
「宮下。お前……玉ねぎもまともに切れないのか?」
その人物は、課長だった。ギクッ!!
慌てて振り向くと不知火課長は、腕を組みながら睨んできた。
ギャッー思いっきり睨んでいるし。
その怖さに思わず後退りしてしまうほどだ。
「お前……確か喫茶店のオーナー兼店長をしているんだよな?そんなんでよく経営しようと思ったな。
まさか全部コック任せでやっている訳じゃないだろうな?」
ひぃぃっ……!!
「ち、違います。ちゃんと料理は、出来ますよ!
ほら、こうやってみじん切りだって速いですし」
慌てて高速で玉ねぎをみじん切りする。
あまりの怖さでいつもの調子に戻ってしまった。
すると周りから拍手をされてしまった。えっ……?
どうやら逆に目立ってしまったようだ。
「凄いですね。手つきがプロみたいに鮮やかだ。
普段から料理とかされているんですか?」
すると杉本先生がそう言って声をかけてくれた。
しかも褒めてくれている……。