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アレックスはウィリアム卿と、多国籍軍、国際連合との衛星会議を終えると司令官室に戻った。

ウクィーナ共和国の国境警備自体は、今は落ち着いた状態が続いて続いている。

ガンバレン国は国際安保理から2ヶ月後までにウクィーナ共和国から撤退するよう要求されているが、いまだ返事は来ていない。

「殿下はどうお考えですかな」

司令官室にクロードとテッドもいた。この2人は自分の側近であると同時に軍人でもある。
戦地ではそれぞれ部隊を抱えるトップだ。

アレックスはしばし考えたがウィリアム卿を見返すと口を開いた。

「ガンバレンが撤退するとは考えにくいな。国際連合の言うこと聞かないんじゃ、停戦合意に持ち込むのは難しいだろう」

ウィリアム卿も、そうですね、と同意した。

「かっーーー、したら、いよいよ本気で拠点を潰さないといけないっすね!」

クロードが血気盛んに言うのを、アレックスは苦笑した。

クロードは続けた。
「我が王国軍はヘルムナート高原の襲撃に対して、きっちり礼をしなきゃいけないっすしね」

「クロード、これは子供の喧嘩じゃない、戦争だ。仕返しを考えるのは軍人としての適正に欠けるぞ」

ウィリアム卿の叱咤にクロードは首を竦めた。
自分でも口が過ぎたとは反省したらしい。
報復措置は負の連鎖しか生まないと、ロイヤル・ドルトン軍は徹底して軍人に教育をしている。

恐れ知らずの口の悪いクロードでもウィリアム卿には頭が上がらない。
若干、ざまーみろと思いながら、アレックスは続けた。

「このまま撤退してくれればいいが、ガンバレンの中がどうなってるかも不透明だ。あの国防相、どこを落としどころにしたいのか、わからん」

「そうですね、最近のガンバレンはおとなし過ぎますし、起こす交戦も散発すぎます。指揮系統が機能してないと考えられますね」

テッドが冷静に話すとアレックスは頷いた。

「さっきのミーティングでもその話が出た。軍の求心力が低下してる可能性もあるから、我が軍で調査する。関係筋と連携して内偵を入れるぞ」

テッドとクロードが頷くと、ウィリアム卿も続けた。

「いずれにしろ、期限までに撤退しなければ、次は重要拠点の空爆です。できればその前にガンバレンに停戦合意させ、居座っている北側から撤退させたいですな」

軍歴40年の副司令官の言葉に、若い3人は同意すると、それを合図に一旦解散した。

アレックスはデスクに座ると軽く息を吐く。

このまま空爆の作戦が始まれば、この戦争は長引く。おとなしすぎるガンバレン国の思惑が見えてこないのが、厄介だ。

いい加減、この馬鹿げた戦争は終わらせたい。
ガンバレンにとって、続ける意味のない戦争だ。
国際連合をはじめ、我が王国軍、多国籍軍、非戦闘参加国を含めれば、40カ国以上の国が、ガンバレン一国を包囲している。

ウクィーナ共和国の侵攻はすでに失敗しており、北の国境付近しか抑えられていない。

続ければ続けるほど、ガンバレン国は荒廃していき民は疲弊していく・・・。

すでにガンバレン国の負けは決まっているのだ。犠牲は最小で留めたい。

ーーー真理・・・

ふと脳裏に恋人の顔が過ぎる。彼女は先日、自分の私邸に入ってくれた。

早く彼女の元に帰りたい。

あと3週間もすれば会えるのだが・・・今すぐにでも彼女に会って、彼女の声を聞いてあの身体を抱きしめたい・・・。
彼女の体温と香りを確かめたいのだ。

たった1ヶ月なのに、心も身体も真理に飢える。
想いが募るとはこう言うことなのだと、初めてアレックスは知った。

恋い焦がれる気持ちなんてなかった。
誰かを想うなんて感情はなかったのだ。

戦地では軍務に邁進し、帰国すればその高揚感を手っ取り早く一夜限りの女で宥めていた。
それがいかに虚しい行為だったのか、今の自分なら分かる。

はぁとアレックスの口から熱の篭った吐息が溢れる。

彼女のスラリとした立ち姿を思い出す。

カメラを構える真剣な横顔。
ころころ笑う愛らしい笑顔。
料理を作る楽しそうな鼻歌。
映画をワクワクしながら見る、嬉しそうな顔。
自分を見つめてくれる煌めく黒い瞳。
キスに震える睫毛。
愛撫に揺れるしなやかな身体。

そして、自分の全てを受け入れ、包んでくれるような慈愛に溢れた彼女の気質。

何もかもが、自分を虜にする。
真理を自分の中に取り込んで繋ぎとめたい。

その気持ちは、日本でお互いの気持ちを確かめ合った時から膨れるばかりだ。

この戦争が長引けば、彼女も確実に取材に出るだろう。

彼女のジャーナリストとしての立場を尊重して、守ると言っても、やはり危険な場所に行かせたくないのが本音で・・・アレックスは自分の勝手さに苦笑した。

早く、この戦争を終わらせたい。

そう独りごちながら、アレックスは腕時計で真理へコードを送信した。戦地からメッセージを送るのは傍受の危険もあるから控えてる。コードだけで我慢する。

真理があの腕時計を着けてくれているのが分かるから嬉しい。
彼女といつでも繋がっていられるのだ。

アレックスは気持ちを切り替えると、ガンバレン国内偵のための計画を考えはじめた。

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