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第8話 救国の聖乙女殺害未遂の罪で牢獄に……?

 ドレスの裾をはすっぱにたくし上げ、ユージンを突き飛ばしてアリスが前に出る。

「ちょっと! フォーチュンナイトたち! なにを、ぼーっと突っ立っているのよ? この言い逃ればかりするクソジジイを捕えなさいよ! 早く!」

「は、はい! ただいま!」

 動かぬ衛兵の代わりに、フォーチュンナイトと称する元同級生たちがブレンダンに襲いかかる。

「国庫を無断で……離せ! 国王陛下の御前で、なにをする!」

「でたらめなんか言わせないわよ!」

「でたらめでは……うわぁっ……離せ! 無礼者め!」

 ブレンダンは9人がかりで押さえつけられ、もみくちゃにされてしまった。
 9人の若い男に一方的に暴力を振るわれる父を目にして、ローゼマリアは慌てて国王陛下へと陳情する。

「国王陛下! お、お父さまをお助けください! あんまりでございます!」

 それを目にしたアリスが、忌々しいとばかりに舌打ちをする。

「ちょっと! フォーチュンナイト! 半数はこの女狐を捕えなさいよ! ホントに指示しないと動かない連中ばかりなんだから!」

 苛立ったアリスが吠えると、5人のフォーチュンナイトがブレンダンから離れ、ローゼマリアに近づいてくる。

「あ……」

 恐ろしくてじりじりと後退するが、フォーチュンナイトのほうが足は速かった。
 その背後で悪魔のような顔をしたアリスが、人差し指をローゼマリアに向けて突きつけてきた。

「捕らえて牢獄に入れるのよ! それがその女……ローゼマリアの運命なんだから!」

(わたくしの……ローゼマリアの運命……? ああ……)

 前世の自分と、今世のローゼマリアの記憶が混濁し、意識が朦朧としてくる。

(そうよ、このあと……悪役令嬢のローゼマリアは……王太子妃となる救国の聖乙女殺害未遂の罪で牢獄に入れられ、そのあと修道院へとおくられる。……いえ、待って。それは確か全年齢版のほうで……)

 自分の進退に関わる大事なことを思い出しかけたとき、クラリと目眩がして足からスーッと力が抜けていった。

「あ……」

 あまりに衝撃的な事実に、精神が耐えられなくなる。

「ローゼ!」

 いくつかの声がローゼマリアの名を叫ぶ声が、意識はどんどん闇に溶けていってしまう。
 そのまま床に倒れこんでしまい、気を失ってしまった。

(これは夢よ。次に目が覚めたときは、もとの四畳半のアパートでベッドに寝転んでゲームをしているはず……)

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