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俺とキュウスケはひたすら歩いていくとついに森から抜けることに成功し、たどり着いた場所はいかにも異世界っぽい街並みだった。
レンガで建てられたであろう家とか、2本足で歩いてる動物達。そして、武器を持っていて頑丈な装備をしている人間達がたくさん……てーー。

「武器を持った人間多くねぇか!?」
思わずツッコミを入れるとキュウスケが大きく頷いた。

「当然! ここは勇者の集まる街。“勇者街(ヒーロー・ロード)”だからな!」
「まんまだな!」
まぁ、名前はいいとして、この光景に微かな違和感がある。

「そのさ、勇者って1人しかいないと思ってたんだけど……」
俺が違和感に思っている事を聞くと、キュウスケは鼻で笑った。

「そんなんじゃ、雑魚い奴が勇者になったらなかなか悪者倒せなくてこの国が滅びちゃうよ」
「な、なるほど……」
異世界でも意外と現実を見ている国で驚きつつも、それよりもキュウスケが毒舌という事に少しばかりショックを受けた。
森の中でも少し思ったんだけどな。ただ、見た目が可愛いから余計キツく感じる……
俺が割り切れない気持ちでいると、キュウスケはまた説明しだした。

「ここにいる勇者達は勇者(仮)という感じだよ。もちろんサタンも含めてね」
キュウスケは大きく手を広げて言った。
俺は釣られて周りを見渡すが勇者(仮)と思われる人達は主要都市レベルにたくさんいる。
この国の王様は相当心配性なんだな。
ステータス見た時の勇者(仮)はそういう事だったんだな。

「じゃあよ、(仮)を外すのはどうすりゃいいんだ?」
「それは“アゲート”を1番初めに見つけることだね」
「アゲート……か。そいや、おっさんも言ってたな」
「なら、話が早いね! このボクが説明してやろう!」
キュウスケが胸を張り、右前足だか、右手を胸に当てた。
あ、やばい。可愛い。尊い。

「おいおい。なんだありゃ?」
「ふははっ! ケット・シーがパートナーとか勇者の顔を見てみたいわ」
「って、あのダサい格好してる奴じゃねぇの?」
「「「ギャハハハハハ!」」」

俺の可愛い可愛いキュウスケが説明をしてくれようとしていたのに、3人のガッチガチに装備をし、通行人の邪魔なりそうなくらい大きなドラゴンを引き連れた男が割り込んできた。
おいおい。もしキュウスケがいなかったら灰にしてたぞ。それか、髪の毛毟ってハゲさせる。

「あの3人の装備……ドラゴンの皮で出来てる“ドラゴンスキン”。手に入れるのが難しいらしくて、最低でもレベル80かつ強い装備じゃないととれないんだ」
「レベル80? ここにいる奴らってみんな低レベルの奴らじゃねぇのか?」
「ううん。ここは勇者の休憩場所でもあるんだ」
「へぇ。詳しいんだな」
「まぁな!」
キュウスケは嬉しそうに鼻をさすった。
にしても、ドラゴンの皮を着てドラゴンを引き連れるとか……あのドラゴン達はどのようなお気持ちなのでしょう。可哀想に。

「おい! お前、俺たちを無視するんじゃねぇぞ!」

俺がドラゴン達の心中を察していると、真ん中にいる金髪の男に怒鳴られた。
カッチーン。そんな怒鳴る事ねぇじゃねぇかよ。俺、怒られたら煽りたくなるタチなんだよなぁ。

「ごっめーん。お前らに眼中無さすぎて忘れてたわっ!」
俺はわざと煽るように両手を合わせ口元だけ笑って言った。
その様子に金髪野郎は苛立ちを隠そうともしないで表情を引きつらせた。

「おい! てめぇ! この方を誰だと思ってるんだ!」
「泣く子も黙る剣士イアン様だぞ!」

両端にいる2人が御丁寧に真ん中の奴の自己紹介をしてくれて、俺にもなんとなくどんな人物かは伝わった。
とりま、強い装備と家来で固めないとイキがれねぇ奴か。
ていうか、こんな紹介の仕方、似たようなやつジャパニーズで見たことあるような。ないような。なんとか黄門……?

「イアンって、あの!?」
「うそっ! 本物!?」

俺達の周りが微かにザワつき、人がワッと寄ってきた。こいつはそれだけ有名らしい。


「俺はな、レベル95なんだよ。だから、到底のやつは俺に媚び、俺に刃向かえない」
「だけど、童貞のお前は女に媚び、女に刃向かえねぇのか。なるほど」
「なっ!?」
俺が頷いていると、イアンって奴は顔を赤くして目を見開いた。
おや、これは図星かい?
途端、周りにドッと笑いが起きた。

「兄ちゃん面白いこと言うな!」
「ほんとね! ギャグのセンスあるわ!」
「そうかな? いやぁ、照れるなぁ」
俺が周りから褒められて頭をかきながら照れていると、ズボンのスネ辺りを軽く叩かれた。

「ん?」
俺が下を向くと、キュウスケが俺のスネの所に手を置いたまま見上げている。

「どうした?」
「イアンって人めっちゃ見てるぞ?」
キュウスケに促され、キュウスケからイアンの方に目線を移すと、真っ赤な顔と鋭い目付きで俺達の方を睨んでいる。
ちょっとバカにしすぎたかな?

「てめぇ……装備も何もしてなくて、ケット・シーしか連れてねぇ低級のくせに……この俺様をコケにしやがって……っ」
「おい! お前キュウスケをバカにするな!」
聞き捨てならない言葉にすかさず俺が反抗すると、イアンの両端にいる男達が大きな声で笑った。

「キュウスケって! ダサい名前だなぁ!」
「装備がなくてもあんなダサい格好はしねぇわ!」
「うぐっ……」

自分のネーミングセンスの無さも、今の格好の悪さも自覚してるから反抗できない。
イアンも調子を取り戻したようで一緒になって笑っている。
くっ……好き放題言いやがって……もう、いっその事サタンって名前やめてダサ男にすんぞゴラァ!

「ーーそ、そんなことない!」

「……キュウスケ……?」
男達が大笑いしている中キュウスケが俺を庇うようにして俺の前に出た。
小さい両腕をめいいっぱい広げているが、その腕は恐怖からかプルプルと震えている。

「ボクは、キュウスケって名前を気に入ってるし……う、嬉しかった! だから、サタンをバカにするやつは許さない!」

キュウスケの勇気ある行動に周りは水を打ったようにしんとなる。
男達も眉をひそめてキュウスケを見た。
そして俺は、

「……う……うわぁぁん!!」
あまりの感動に両目から大粒の涙が溢れ出し、周りを気にせず両手で顔を覆って大号泣した。

「サタン!?」
キュウスケが驚いた表情で俺の方を見てきて、イアン達や周りの人も目が点となっている。

「ギュウズゲ……おばえっでやづばほんどうにいいやづだな……あでぃがどう……」
「ごめん。サタン。何言ってるか全然わかんないし、キモイ」
涙ぐみながら感謝の気持ちを伝えたのだが、軽くあしらわれた。
ふっ……これがツンデレってやつか。
俺は何度か服の袖で涙を拭い、充血した目でイアン達の方を向き直った。
キュウスケが俺を守ってくれたんだ。次は俺が守ってやるぜ。
俺は右手で握りこぶしを作って、左手の手のひらに思いっきりぶつける。

「キュウスケが許さねぇ奴は俺も許さない。って事で、お前をボコす!」
「はっ! 戯言を。良いだろう受けて立つ! 闘技場で決闘だ」
「おう!!」

ところで、レベル95ってどんだけ強いんだろ?

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