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第8話 今の場所、目指す場所

「天才の……P4型……?」

「そう。君の能力、改めてさっきまじまじと見てみたんだよ。そしたら、あれだけの威力がどうやって出ているのか分かった。説明するね」

 ミアは黒板に一本の横線を引き、これが“横から見た青い波紋の図”だと示した。

「君があの青い波紋を出した後、何が起こっているのか。答えは、『圧縮』と『解放』。君は最初、空を殴った時には微量のマナしか出していなかったんだけど、青い波紋がそれを一気に、ただ一点に集中させた。『圧縮』ね。そして、その圧縮されたマナを強い勢いで『解放』した。ただこれだけのことなんだけど、君はその力であの壁を壊した。ハッキリ言って規格外」

 ミアは波紋の絵の上に、マナが集まって前に送り出されている様子を矢印で描く。
 翔太は自分の拳を見つめた。その自分の手が、本当にそんな能力を持っているのか。少し前まで、高校で平凡で堕落した生活を送っていた翔太には信じがたいものだった。

「圧縮と解放によってマナの威力が上がるんだったら、誰でも出来そうな気がすることなんだが、違うのか?」

 翔太は疑心からそんな質問をした。

「それが、そうともいかないの。個人に合う型っていうのはとても極端に決まってるの。君はP4の段階で魔法の威力を上げるけど、P2で上げる人もいる。でも、君がP2で魔法を強くしようとしても、反対に他の人が君みたいに圧縮と解放を真似しても、どちらもそんな上手くにはいかない。そこには相当な特訓の時間が掛かる。自分の得意な型から外れたことをしているから。だから、君の能力は唯一のものだよ。自信を持って」

「…………はい……!」

 翔太はミアの言葉にとても励まされた。見知らぬ世界で自分の居場所が見つかったと感じ、才能を認められつつある翔太は、本当に心が温まって安心していた。彼は、ここで存分に生きられる道が見えてきた。
 翔太ととミアは自習室を出た後、さっきの闘技場の騒ぎについて謝罪するために、担当の先生を訪ねた。先生は、弁償の方は良い、代わりに早くこの学校の生徒になってほしいよと、笑って二人との話を済ました。
 夕方、もうすぐ帰宅という時に、ミアは翔太にまだ少し話があると言う。

「まだ言っていない、大事なことがたくさんあるんだけど、下校前に少し、この世界のことを話そうと思って。……魔法の世界は厳しくてね、このうちらの国はオーガン王国、世界で三番目に魔法に強い国。まだ上には上がいるんだけど、そのオーガンの国の中でもうちらの高校は実力が二番目の高校なの。うちらがいるのがオーガン第二魔法学校で、その上にはオーガン第一魔法学校。ずっとこの二校は魔法で競い合ってきていたけど、一位、二位の座は今まで入れ替わることが無かった。でも今年、その歴史が覆るかもしれない」

「覆るって……どんな風に?」

「オーガン・マジック・トーナメント。略してOMTっていうのが近々開催される。これはあらゆる魔法の実力を競い合う大会で、その中でも花形とされているのが戦闘部門の試合。今年、うちらの学校はギースとか優秀な人たちがいるから、勝てるかもしれないって期待されてるの。君も、出場するチャンスがあるかもしれない」

「お、俺にも……? そんな国ぐるみの大きい大会に出れるって? そんな、まだ俺は経験不足だし、出ても足引っ張るだけ……」

「経験は関係ないよ! 強ければ良い!! 魔法の強さが全て!! それが戦闘部門というもの!」

 ミアは目力で強く翔太に訴えた。

「当日は二週間後! エントリーは一週間前! まだ一週間の期間のうちに、君は強くなれる素質があるから、目指してみる価値はあるよ!」

 短い期間で翔太は、ミアはとても強引で熱血な人だと分かった。だが、その気持ちの熱さは嫌なものではなく、逆に他人を的確に鼓舞する力を持っている、翔太はそう感じた。そんな熱い応援に翔太は応えたくもあり、もっと上の世界の気色を見てみたいと感じた。OMT、まずはこの大会に向けて、俺の学校生活はスタートする!! そんな志を持ちながら。

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