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みわときょうすけは不動明王火炎陣を

唱えた。

(ノウマクサンマンダ、バサラダ、マカ

ロシャダ、ウンタラカンマン)

呪文を唱えると、黒い力に縛られてい

た不動明王がみるみるうちに体が燃え

さかってきた。

みわときょうすけは力の限り呪文を詠

唱し続けた。

赤く光輝いた不動明王は言う。

(一切魔性降伏、汝らの魂はとこしえの

光の中に誘わん、フン)

すると不動明王の持っていた大剣が燃

えさかり、レギオンが放った

黒い力を焼きつくした。

レギオンはなおも口から不動明王めが

けて黒い力を放つが、それはすべて燃

え尽きる。

不動明王は言う。

(ノウマクサンマンダ、バサラダ、セン

ダ、マカロシャダ、ウンタラカンマン)

不動明王は燃え盛る剣をレギオンめが

けて振り下ろした。剣をから炎がて

で、レギオンを包み込んだ。レギオン

の悲鳴がこだまする。

(熱いー、熱いーよー、いやー、助けて

ー)

しかし、この業火の炎はすべての霊た

ちの悲しみ、つらさ、憎しみ、ありと

あらゆる煩悩を焼きつくす大慈悲の力

であった。

やがて巨大なレギオンが燃え尽きる

と、300体の魂たちは、みな歓喜しなが

ら成仏して、霊界に誘われていった。

巨大な不動明王はククトたちを見ると

(では、さらばだ)

といって空間に溶けて去っていった。

ククトたちは力を使い果たすと、その

場にへたりこんだ。

ククトの魂は元の猫の体に帰っていっ

た。きょうすけとみわは

(ハァ、ハア、)

といいながら言う。

みわ

(やったわね、これでこの辺はもう大丈

夫よ)

きょうすけ

(疲れました、あとはバルボアさんの無

事を祈るだけです)

先程までの異常な冷気はなくなり、穏

やかな風が吹いた。空には満天の星た

ちが、宝石のように美しく輝いてい

た。

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