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第11話~出発と告白と~

『英雄クレスの末裔、アルモ。そしてワイギヤの末裔アコードとその仲間達。よくぞ魔道船を復活させ、手中に納めてくれた!!』

 正面の大きなモニターに映ったザイールが、満面の笑みを浮かべながら、俺たちの功績を称えている。

「ザイール!」

「よく俺たちが、漆黒の翼を手に入れたことが分かったな!!」

『同盟本部の機械と、漆黒の翼が通信によって繋がっていたようで、つい先ほど、封印が解除され施設上空へと飛行を開始したと、こちらに連絡が入ったのだよ』

“同盟本部は、この船の航行をサポートする機能を持っています。もちろん、私だけでも航行は可能ですが、より広範囲で、かつ迅速な情報収集を行うためには、同盟本部のサポートが不可欠です”

『そういうことらしい。で、早速だが…』

 モニターが一瞬にして黒くなると、緑のラインで描かれた世界地図へと切り替わる。

「これは、私たちが本部で見た世界地図ね」

 確かに、よく見ると所々に赤い点が点滅している、本部で俺たちが見た世界地図のようだ。

「…あの、左上にある船のマークは何だ!?」

 シューの一言で、その場の視線がモニターに映し出されている船のマークに集中する。

“この船のマークは、私たちの現在地を示しています。この船の封印が解かれたことで、同盟本部の世界地図の機能も回復したということです”

「…で、ザイール殿。俺たちに、単にこの世界地図を見せたかった訳では…」

『その通りだ。本部で話をした通り、この世界地図の赤い点に、クレスとワイギヤが遺した聖遺物(アーティファクト)が眠っているはずだ。そして…』

 ザイールの言葉に続き、世界地図が俺たちの今居るグルン大陸の南部にある、タマーン大陸の赤い点付近にピックアップされる。

『君たちのいる現在地から一番近いのが、今拡大したタマーン支部だ。まずは、そこから探索を始めてくれ!!』

「分かったわ!」

“…アルモ様。目的地は、タマーン大陸の同盟支部でよろしいですか?”

「ステラ、お願いね!」

“かしこまりました。周囲から見えないステルス走行は速度を稼ぐことができないため、目的地への到着は、明日の夕刻以降になりそうです。安定航行になりましたら、ベルトを外させて頂きますので、到着まで船内でおくつろぎください”


***


“ヒュゥゥゥゥゥゥゥ…”

 吹き飛ばされない程度の、それでも爽やかに感じる風が私を包み込んでいる。

 ステルスの機能を維持したままの安定航行に入った漆黒の翼の船内で、私たちは安全ベルトから解放され、目的地であるタマーン大陸の同盟支部付近に到着するまでの間、自由時間となった。

 船内の施設も気になったが、ステラから『甲板に出ても大丈夫』と告げられた私は、風を浴びようと外に出た。

 今は春。北部に位置するここグルン大陸でも、色鮮やかな花が咲き乱れ、地表に彩を添えている。

“バサッ”

 後ろで一つに束ねていた髪留めをほどくと、金色の髪が風になびき、ハラハラと上下を行ったり来たりしている。

「(…私のご先祖様…クレスも、この甲板に立ち、こんな風を受けたのかしら…)」

“バタン”

 少しだけ物思いにふけっていると、後方から扉を開閉する音がした。

「アルモ!」

 聞き慣れた、私の心をいつも癒やしてくれる声が聞こえる。

「アコード…風、強いから気を付けてね」

「ああ!分かってるさ…って………おっとと…」

 言ってるそばから突風にあおられ、よろけるアコード。

「ちょっと!大丈夫!?」

“ギュゥ…”

 よろけた彼は、鎧を船内に置き、白のワンピースを着た私の胸に飛び込む形で倒れこみ、私はそれを受け止めた。

 図らずも、彼の腕が私の背中を包み込み、互いに抱きしめ合う形となる。

「ちょっ!………」

 『離れて』という言葉が出掛かった私だったが、やめておいた。

 なぜなら、彼とこうしていたいと思ったから…

「アルモ!ごめ………」

「いいのアコード!このままで良いから……」

 私は、彼の謝罪の言葉を断ち切った。

「…アルモ………」

「私ね…あなたと出会う前、付き合っている人がいたの。でも、その人は三日月同盟の人だったから、いつも危険と隣り合わせで…」

「…何となく、だけど、気づいていたよ…」

「えっ!?」

「でも………今の君は、俺のことを見てくれている。そうだろ!?」

「………うん………」

「だったら、それでいい!」

 彼の両腕の力が強くなったかと思うと、次の瞬間には私の視界が奪われた。

 彼の暖かい温もりが、私の唇に伝わってくる。

「…やっぱり、君は意地悪だね!」

「…嫌、かな?…」

「嫌だったら、英雄クレスの子孫が、こんなことを君に許すとでも!?」

「違いない!」


 漆黒の翼は、ステラが告げた予定通り翌日の夕方に目的地であるタマーン大陸へと進行した。

 夕方から行動をするのは危険と判断した私たちは、翌朝、情報収集のため支部の近くにある街へと降り立ったのだった。

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