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5-3「頼まれました!!」

「っつ!」

 瞬間、クロウは宇宙に放り出されていた。いや、そのように見えただけで実際には宇宙空間に漂っている椅子に座らされているような光景だった。

「全天周囲モニター……」

 周囲を見ながらクロウはつぶやいた。クロウが今いるのはVRシミュレータの仮想空間内、DX-001の球体をくり抜いたようなコックピッドの中、その天井からアームによって支えられた操縦席の上であった。

『今回はクロウ少尉が単機という条件であるため、多少のハンデを設定させて頂きます。状況は、地球衛星軌道上、哨戒任務に当たるミーチャ中尉編隊が、味方から正体不明機を目撃したという情報を元に、そのポイントへ急行し、その正体不明機を撃破するという命令を与えられたという想定で実行させていただきます』

 クロウに聞こえたのは通信越しのルウの声だ。つまり今回はユキと対戦した時のようにすぐに相手が見つかるというシュチュエーションでは無いという事である。多少時間があるという事だ。クロウは素早くコックピットの中身を見回し、全天周囲モニターに表示されているレティクル、方位表示、自身のすぐ近くに浮かぶ半透明のコンソールモニタの機体状態表示、右手左手にそれぞれ握られている左右対称の操縦桿、スノーボードのように左右一体型となっている足のペダルを確認し、自分が座るDX-001の操作系統がインストールされた知識通りであることを確認した。実は、クロウはこの全天周囲モニターを有するコックピットに乗った事があるのだ、これよりももっと解像度が低く、全天と言いながらも前半分しか表示されない疑似的なものであったが、クロウの生きた時代のゲームセンターにはこのコックピットを模したゲームが実在していたのである。

「タイラー艦長内密にご確認したいことがあります」

 呟くクロウに、タイラーの声はすぐに返ってきた。このDX-001はその操作の多くを脳波コントロールシステムで動作させる。クロウの呟きは瞬時に秘匿回線を乗ってタイラーにのみ届いた。

『なんだ?』

 極めて冷静に、クロウはタイラーへ問う。
「DX-001のベースは僕が生前生きていた時代のアニメ作品ですね?」

 クロウは、そのDX-001の特徴を一つ一つタイラーへ確認する。DX-001は人の可動域に近い動力と構造を持ったフレームに装甲版を上に被せ、そのフレームの可動域を阻害しないように装甲版が稼働する機構を伴った内部構造であること。そのコックピットブロックは球状をしており、その球体状のコックピットは機体が撃破された場合の脱出ポッドとなること。クロウはこれほどの再現度をもって再現された機体が偶然ではありえないと看破した。

 クロウと同じく『ロスト・カルチャー』であるタイラーはクロウの時代のサブカルチャーであったロボットアニメの知識・技術を応用し、この時代の技術でそれを再現・アレンジした機体を作り上げたのだ。

『そうだ。それを知った君はどうする?』
 即座に肯定し、逆に聞き返したタイラーに対して。クロウは断言する。

「この機体の有用性を証明します。艦長は航空隊のみんなを『生き残らせる』ためにこの機体を作ったと断言できます」

『頼む』

 それを聞いたタイラーは、そのクロウの発言を肯定する訳でも無く、その発言を実行しろと命令する訳でも無く、ただ頼む。と言った。だとすれば、クロウの答えは決まっていた。

「頼まれました!!」

 瞬間、クロウの乗ったDX-001がクロウの意思に従うように起動。頭部のメインセンサー及び、眼部のサブセンサーが淡く緑色に発光させた。それは発光するために搭載された機能ではなく、そのメインセンサー及びサブセンサーから特殊な粒子が放射されたために発光したように見えただけである。そして、それらのセンサーの役割は索敵に他ならない。

「センサー範囲内に敵機は、無し。さすがにすぐに接敵はさせないか、ルウ中尉も過保護だ」

 感想を漏らしながら、クロウは自機の兵装を確認。基本的な装備はクロウの知るロボットアニメとそう差異のあるものではなかった。DX-001の右手に当たるマニュピュレータには射撃武器である大型のライフルが握られている。左腕には自在に稼働するアームを内部に搭載し、今はぴったりと左腕に固定されているDX-001全体を隠せるほどの大型の盾が装備されていた。

 その盾の内側には二本DX-001のマニュピュレータで掴めるほどの大きさの筒が取りやすい位置に装備されていた。その筒の正体はDX-001の近接格闘兵装であるビームサーベルである。それ以外にもDX-001には多数の内部兵装が搭載されていた。その内のいくつかを連想しながら、コンソールモニタでクロウは現在のDX-001の装備を確認。その兵装がDX-001の基本となるオーソドックスな兵装構成であることを確認すると、敵機をおびき出す事とした。この装備であっても、6機のF-5889-Sコスモイーグルを恐らくは圧倒できる。

 だが、単純にF-5889-Sコスモイーグルを狙撃するだけでは、DX-001の性能を示したという事にはならない。DX-001でクロウは圧倒的な性能差をF-5889-Sコスモイーグルに乗る航空隊員に示さなければいけないのだ。

 一方、クロウの相手役となるミーチャ達航空隊6人はそれぞれF-5889-Sコスモイーグルを駆り、ミーチャ機をトップとするマリアン機、ヴィンツ機の3機と、トニア機をトップとするケルッコ機、アザレア機の3機に編成を分け、宙域を索敵していた。

「このポイントは地球圏の中でもデブリ(宇宙ゴミ)が多いデブリ溜まりだ。各機、デブリとの接触に注意しろ。死角も多い、不意の接敵にもだ!」

 ミーチャの命令に即座に各機は了解の返事を返す。この時代の宇宙戦において電波を使用するレーダーはステルス技術の向上で無力であり、粒子の反射を利用したセンサーと、熱源を探知するサーモセンサー、そして有視界のみが頼りの戦闘であった。そのため、機体及び艦船の通信手段は限られており、機体同士の連絡には互いの位置情報を同期させリンクさせた光学通信(レーザー通信)が使用されていた。つまり、互いの機体はそれぞれの機体に対して目視出来ない程の細いレーザを互いに発射しており、その細い繋がりで通信を取り合っているのである。当然、互いの機の間に遮蔽物がある場合、通信は途絶された。互いの機体の間の遮蔽物が無くなった時には自動で即座に通信が復帰されるものの、その一瞬が命取りとなることも十分にあるのがこの時代の宇宙戦であった。

 やりにくい、心の中でミーチャは呟く。指揮官として決して僚機に聞かせてはならない感想だった。ミーチャはこの戦場の怖さを十二分に理解していた。この手の遮蔽物が多い宙域の場合。戦闘機の軌道は制限される。3次元ノズルや各種スラスターを使用しても、通れる幅や動きにはどうしても限界がある。だが、それは敵も同様の筈であった。また、クロウは地上で学生をしていたのだ、無重力下での戦闘はこれが初めてであるはずで、彼の乗る機体はあのコンテナの大きさである、むしろこの宙域では自分たちよりも不利であるとミーチャは考えていた。

 だから、この戦場において、どちらが相手を先に発見するかが重要なカギとなる。それ故にミーチャは戦力を分断させるという判断をしたのだ。

 だが、実際は異なっていた。クロウはその人型のDX-001の優位性を十二分に理解していた。特にこのように障害物の多い場所ではDX-001はマニュピュレータで遮蔽物自体を掴み、それを引き寄せる力で機体を移動させ、足で蹴ることで自在に位置と向きを変える事ができた。一切のバーニア(姿勢制御用補助エンジン)などの『熱源を発生させない』で、だ。

 さらに、ミーチャはDX-001のその全高のみを印象していたため考えも及ばなかったが、DX-001はF-5889-Sコスモイーグルの尾翼を含めた全高よりもその背中と胸の幅は狭い。つまり頭から遮蔽物の間をすり抜け、遮蔽物に身を隠す事すらできたのである。さらにDX-001の両肩の間の長さ、全幅はF-5889-Sコスモイーグルの主翼の両端の長さの半分程度の大きさしかないのである。

 デプリに完全にDX-001を隠したクロウは既に6機のF-5889-Sコスモイーグルを目視で捉えていた。

 瞬間、ミーチャから見た左手の50kmほど奥のデプリの陰から発光が輝く。何らかの爆発であった。

「各機状況報告!」

 素早くミーチャは各機に自機の状況を確認させた。

『異常なし!』

 即座に各機は異常なしの報告をした。デプリ同士が衝突して不発弾などの爆発物が爆発することもままある事だった。あるいはクロウが何らかの行動をしたか。ミーチャは神経を尖らせる。あの爆発はどっちだ。と、先ほどとは別の方向で二か所同時に爆発が起こる。僚機は無事だ。どの機体とも通信は途絶していない。

「トニア班は3時の方向の爆発元を探れ! アタシの班は10時の方向だ!!」

 流石にこの短時間でデプリの自然爆発が連続発生するとは考えられない。ミーチャはこの爆発がクロウの何らかの行動の結果であると判断した。

『ミーチャ中尉! 粒子センサーとサーモセンサーが妨害されています!!』

 トニアに随伴していたケルッコが異変に気付き叫んだ。

「各機散開しろ!!」
 攻撃が来ると察知したミーチャは即座に命令する。

「掛かった」

 クロウはまず自機から離れたデプリに対してDX-001の腕に内蔵されたグレネードを発射。

 爆発を確認すると、今度は違う方向に向かってグレネードを発射すると同時に、DX-001のバックパックに搭載されたセンサー攪乱用のミサイルを時限信管で発射した。グレネードと同時に炸裂するように、である。

 次の瞬間、蜘蛛の子を散らすように駆けるその6つの光点をクロウは見逃さなかった。DX-001のセンサーは光学、粒子反射、電子的なレーダー、そして熱源を探知するサーモセンサーなどの種類がある。

 だが、ミーチャ達がまさにそうしたように、極力熱源を発生させない慣性移動で敵機が接近してくる場合、その表面材質の構造、そして特殊塗料の影響で敵機を発見することは難しい。そのため、索敵は光学情報。つまり、パイロットによる目視に頼らざるを得なかった。だが、DX-001の全天周囲モニターには死角がない。360度すべてを見渡すことが出来たのだ。さらに、クロウは行動開始と共に四方八方にレーザで自機に情報を送信する索敵用の小型ポッドをDX-001から射出。いち早くF-5889-Sコスモイーグル6機がその一つのポッドを通して接近していることを察知していた。

 その6つの光点を目撃したクロウは即座にそれらをマーク。光点の光学情報と熱源情報は即座にDX-001のメインコンピュータに記憶され、彼らが高速で移動するスピードのまま彼らの動きがDX-001の全天周囲モニターに画面上にレティクルで囲まれ強調表示されたそれはそれぞれの距離情報も伴った情報であった。

 3機編隊で行動する片方、クロウから見て直線方向に移動していた3機のうちの1機に向け照準を合わせるとクロウは静かにDX-001のライフル引き金を引いた。

 瞬間、マリアンの通信が途絶した事をミーチャは察知した。ミーチャのコックピット内のコンソールに表示されたマリアン機のステータスは『撃墜』となっていた。マリアン機が居た宙に光の線が直線として描かれていた。

「ビーム兵器だと!?」

 ビーム兵器はこの時代において珍しいものではない。実際ミーチャ達が駆るF-5889-Sコスモイーグルにもそれは装備されている。よく、レーザとビームは混同されるが、その実まったく異なる兵器だった。

 レーザは光を一か所に集め光子の熱量によって対象を焼き切る兵器だったが、ビームは重金属の粒子を一定の方向へ亜光速で打ち出す兵器だった。従って、ビームが命中した対象物は核分裂反応を起こして爆発する。

 対ビームコーティングが施されたF-5889-Sコスモイーグルであっても、強力な出力のビームに対してはその装甲を溶解され、ビームコーティングの層を貫通されれば爆散する。

 だが、相手のバーニアなどの痕跡が一切見えない。敵はどうやって『マリアンに照準した』と言うのか。そこまで考えて、ミーチャは自分が恐ろしく愚かな問いをしている事に気が付いた。相手は敵を照準するのに『移動する必要』などないのだ。クロウが駆るDX-001は人の形をしていた。つまり、腕を動かせる範囲であれば自在に照準出来るのだ。

「各機、全速力で飛べ! 狙い撃ちされるぞ!!」
 その命令が聞こえたかどうか、次の瞬間トニア機、ヴィンツ機が撃墜された。二条の光線が彼らの機体を貫いていた。

 その二条の光線が発射された延長線上の交点が発射箇所であることは明らかだった。ミーチャはその発射点のDX-001クロウ機を望遠光学センサーで補足。僚機全員へ光学データ共有する。

『くそっ! ただでやられるかよ!!』
 ケルッコが即座にその方向へ機首を向けバーニアを噴かした。

 ここに来てクロウとミーチャ達は互いの場所と距離をお互いに認識し合った。だが、こちらは既に3機落とされているのだ、とミーチャは警戒感をさらに高めた。

「ケルッコ! 不用意に近づくな!!」
 ミーチャは叫ぶが、瞬間ケルッコの機体が爆散した。

 1機目を撃墜した後、クロウは即座に2機目、3機目を狙撃した。クロウは移動させずとも腕を動かすだけでそれらを標準することが出来た。クロウは近場のデブリを蹴り、バーニアを噴かさずに移動させると、DX-001の胸部に内蔵された機雷を敵機の方向にばらまいた。小型の機雷はまるでショットガンの弾のように空間に広がって飛んでいく。そこに1機の敵機が突っ込んで来た。それがケルッコ機だった。

「……あと、2機」
 クロウは静かに呟く。残った敵機体はクロウから見て垂直の方角へ飛んだ二機だった。

 ケルッコが撃破された事を察したミーチャは残ったアザレアに指示を飛ばす。

「アザレア! 迂回しろ! 敵機との直線上には機雷が撒かれている!」

『了解』

 アザレアは機首を反転。大きく円を描くようにクロウ機へと迫った。6機居た僚機があっという間に2機。ミーチャは焦りよりも恐怖しか感じなかった。自身たちが乗る予定の新型機を敵に回すと、今の今まで頼もしく感じていたF-5889-Sコスモイーグルが無性に無力に感じた。だが、アザレアの正反対の方向からクロウ機を捉えようと旋回する。『私達にはこの機体で訓練してきたプライドがある!』と自分自身を叱咤激励した。

「挟み撃ち、のつもりだろうけど……」

 クロウから見ればその二機の軌道はあまりにも直線的すぎた。航空機の軌道はどうやっても弧を描く。それは航空機の形を選んでしまっている以上逃れられない宿命だった。

 クロウはデプリを陰にするように1機の射線から隠れると、そのデプリを背にしてもう一機を迎え撃つようにDX-001の左手に装備された盾を構えた。

 敵の攻撃予想位置は既にDX-001のメインコンピュータによって算出されていた。DX-001のコックピットがある胴体部分、その中央だった。クロウにまっすぐ向かってくるそのF-5889-Sコスモイーグル1機は機首のメイン兵装であるビームランチャーを発射。そのままクロウの真横を通る軌道を描く。クロウはそのビームをDX-001の盾ではじくと、即座にその機体を追うようにクロウ自身の首を動かす。DX-001の頭部はクロウの頭部の動きとリンクして駆動し、通り過ぎようとするF-5889-Sコスモイーグルの動きを完全に捉えていた。そのままDX-001の頭部、眼部に当たるサブセンサーの両脇に装備された頭部バルカンの弾丸がF-5889-Sコスモイーグルに殺到し、コスモイーグルに無数の弾痕を刻む。その内の数発がコスモイーグルの機関部へと命中し、爆散した。

 アザレア機と反対方向から旋回するミーチャはアザレア機と直線軸に自機が乗った時点でアザレア機との通信が途絶したことに気が付いた。前方にはデプリしかない。クロウはあのデプリの向こう側である。そのデプリの反対側からビーム発射光が輝くと同時、アザレア機の機首がデプリから飛び出すのをミーチャは見た。

「やったのかっ!? アザレア!?」

 だが次の瞬間見たのは、バルカンの曳光弾(戦闘機などに搭載されたバルカンなどの実弾連射兵器は数発に一発の間隔で、曳光弾と呼ばれる発光しながら飛ぶ弾が照準のために装備されている)に貫かれるアザレア機の最後だった。爆散するアザレア機を見て、ミーチャは操縦桿を引いた。機首を上げそのデプリから距離を取る角度を取ったのだ。

 バルカンで敵機を撃墜したクロウは、爆散した敵機の爆発にDX-001を突っ込ませると、デプリの反対側から迫っているであろう敵機を補足した。敵機は既に機首を転回しクロウから直角に離脱しようとしていた。

「賢明だ。でも逃がさない」

 クロウは右手のビームライフルを投げ捨てるとDX-001の全バーニア、スラスターを全開に燃焼させ、逃げようとするF-5889-Sコスモイーグルに追いつき、キャノピー横の両翼の付け根をDX-001の両マニピュレータで掴んだ。

 瞬間、キャノピー内のパイロットとDX-001の両眼であるサブセンサー越しに目が合う。

 ミーチャだった。その判断の正確さ、行動の速さをクロウは素直に賞賛する。同じ機体同士で戦っていれば、クロウに勝ち目などはあり得なかった。

 このDX-001の性能こそが規格外なのである。

「流石です。ミーチャ中尉」

 その声は通信をお互いに繋いでいない両名に伝わるはずが無かった。その自機を掴んでいるマニュピュレータと目の合ったDX-001のサブセンサーを見上げて、ミーチャは自分たちの負けを悟った。そしてDX-001は自分たちの新しい『翼』になるのだと、次の瞬間何が起こるのかを悟りながらも言わずにはいられなかった。

「これが、私達の新しい『翼』……!」

 ミーチャが言うと同時、クロウはそのままDX-001の頭部バルカンを発射。ミーチャはその大口径のバルカンの直撃を受けVR上でひき肉となった。瞬間クロウはF-5889-Sコスモイーグルを掴んでいたDX-001の両マニュピュレータを開きF-5889-Sコスモイーグルを手放した。

 コックピットを破壊したため、最後のF-5889-Sコスモイーグルはその機首を失ったまま推力を保ち虚空へと消えていった。

「Mission complete」

 クロウはつぶやくと、VR空間から通常空間へ意識を引き戻されるのを感じた。

 その光景をモニター越しに全神経、全感覚を持って目撃したタイラーは、ようやく自身の『計画の最後のピース』がそろった事を確信した。VR空間から通常空間に復帰し、航空隊員達から興奮を持って迎えられたクロウを見ながら、『九朗、よくやった』と心の中の自身の本当の声で労う。

 タイラーを名乗るこの男、東郷平・八郎の戦いは1年も前から既に始まっていたのだ。今日この出来事も、これからの戦いもその通過点に過ぎない。タイラーはその仮面越しに静かに目を閉じ、静かに回想する。これまでの戦いの記憶を。

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