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第7話

 「これで完璧よ!」

式神の城の地下室。

そこで夜毎秘め事が行われていた。

数十体に及ぶ人の体。

それは京子が秘術によって生み出した式神であった。

「どうかしら?」

京子はお札をその体に宛がっていく。

「入れない!」




「そう!」

「出来は悪くないと思うけど?」

命はお札の中に封印されているので見ることは出来なかったが。

式神の天才と言われる京子の事。

出来は良いとしても出来の問題では無いのだろうと感じていた。




「私は良く知らないんだけど!」

「本来はこういうやり方はしないんでしょ?」




「そうね、普通式神は術者が念を込めて操ってるから!」

「霊の入れ物にするとか考えもしないわ!」




「じゃあ、霊士の素人考えは諦めて!」

「何か別の方法を!」




「そうね、彼を呼びましょう!」




霊士がやって来た。

「京子でも難しいのか?」

「出来の方は問題ないと思うけど!」

霊士は周りの体を見回す。

「命の体は霊体しか見たこと無いけど!」

「こんなもんじゃないか?」

「だが、遊んでないか?」

「この命は色が白すぎるし!」

「こっちは顔が小さすぎる!」

「足が細すぎ!」

「腰が細い!」

「美形過ぎイ!」




「式神に容姿は関係ないから!」

「彼女の願いもついでに叶えてもいいと思っただけよ!」

「だが、この中で一番似てるのでも駄目だったんだよな?」




「そうね、全滅よ!」




「じゃあ、俺も試しにやってみるか?」




「無理だと思うけど!」

「どれだけ上達したか見てあげるわ!」

霊士は型紙を取り出すと念を込め人の形を作り出した。

「全然上達してないわね!」

「顔はへのへのもへじだし!」

「手足もぷらんぷらんで動くとは思えない!」

「あのね、マスコットじゃ無いんだから!」

京子は解説し始めたが霊士はおかまいなしに続ける。

命のお札をその体に貼った。

「キョンシーみたいだな命!」

「動けるか?」

「あっ、動ける!」

「動けるし、見えるし!」

「やった、やった!」

京子は手鏡を取り出し命に今の姿を見せてやった。

「やったやった?」

駄目押しに自分の作った命の体を見せてやる京子。

「やった?」

「やった?」

「えーと!」

お札暮らしに比べれば破格の待遇改善ね。

でも、でもである。

命は疑問符を払しょくすることが出来ない。

そして京子の作った体の方をちらちら覗き見ている。

「霊士、もうお手軽美容整形みたいな事は言わない!」

「せめて私の真の姿に近いこの姿で!」




「霊士!」

「みこちゃんは、こっちが良いって言ってるわよ!」




「いや、俺は式神は得意じゃないんだ!」

「機能的には問題無いならこれでいいじゃないか!」




「あなたの式神は我流でしょ?」

「この式神の天才と呼ばれる京子様が教えてあげてもいいわよ!」




「いや、しかし!」

「みこちゃんの為だけど!」

「それでも断るの?」




「確かこんな諺があったわね!」

「毒を食らわば皿までって!」

「あなたには貸しがあるわ!」

「入院中の面倒をみたという貸しが!」

「それは敵に塩を贈る行為と言ったでしょ?」

「もうあなたは私の毒を食らっているんだから観念なさい!」




「塩が毒だと?」




「すべてのものが毒でも薬でもある!」




「人間に必要な水だって飲み過ぎれば溺死するわ!」

「急激な塩分摂取ももちろんの事!」

「よく醤油を一升飲んで死ぬとか言うものね!」




古過ぎないかそれ?

と霊士は言おうとしたがこの部屋や月子の着物を見ていると。

いや、新しい方かと思い直した。




どちらにしろここまで言われては霊士には断る事は出来なかった。




「悪いわね、霊士!」

「私に出来る事なら何でもするから!」




「ん?」

「みこちゃんは何を言っているのかな?」




「え?」




「あなたもやるのよ当然!」




「え?」




「いや、待て!」

「霊体の命が式神を操れるわけがないだろう!」




「何を今更!」

「あなたが今までやってきた事だって変わりないわよ!」




「じゃあ、修行は明日から!」

「男の方はお帰りください!」




「ああ、宜しくな!」




「みこちゃん!」




「はい!」




「明日から霊士と一緒に修行してもらうわよ!!」




「なぜ私も?」




「私はね、他力本願が嫌いなの!」

「全て教えてあげるから!」

「あなたは当面その体で修行して!」

「新たな体を作れるようにおなりなさい!」

「自分で作り出した式神を操れる様におなりなさい!」




「出来なかったら?」




「人は万能じゃないから、どれだけ足掻いても成せないことはある!」

「その後なら人に頼る事は悪いことじゃないわ!」




「霊士はあのとおり滅茶苦茶だから!」

「霊体が式神を操るくらいの無茶はやってきてるわ!」

「だから最初から諦めないで全力でかかりなさい!」

「それと、自分で手に入れた力ならそれがどんな反則的な能力でも自分の力だから!」

「好きに使うことに遠慮はいらないわ!」

「理想の体を作ってもいいわよ!」













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