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第4話

「三郎はカッコ良かった!」
 「最高だった!」
さて、そろそろ私も恰好つける番よね?
命は霊的な事は未だによく解ってなかったが。
一つ解った事がある。
それは霊士が生きているという箏だ。
霊士が言っていた魂の尾。
ごくたまにだが見えるのだ。
やっぱりあれは魂の尾よね?
だったらあれを辿れば霊士は自分の体を見つける事は簡単だろうし。
霊士ほどの者が見えないとか気づかないとかは無いだろう。
「やっぱり!」
「私に気を使ってるのよね?」

「どうした?」

「霊士はやっぱり早く生き返ったほうがいいと思う!」
「私に見えて霊士に見えないわけ無いでしょ?」
「魂の尾を辿れば自分の体なんかすぐ見つかるよね?」

「いつから気付いていた?」

「気づいたのはちょっと前だけど!」
「心を決めたのは三郎君のおかげ!」
「ううん!」
「強い意志を貫いた三郎君と!」
「守られるだけの価値のあるほのかちゃん!」
「あの二人を見たから!」
私には守られる価値は無い。
死んでも(仮死状態になっても)。
必要な事はけっして忘れなかった霊士。
長い間、愛を育んできたほのかと三郎。
それに比べて大事なことを何も覚えていない私。
初対面の零士に助けてもらうだけの私。
長い間一人ぼっちだったから。
一人ぼっちでさえなければ良いと思っていた弱い私。
でも、そんな私にサヨナラする。
私は明らかに死んでいるから。
それは仕方ない。
でも、霊士はまだ死んでない。
助かるんだ。
私が足を引っ張っちゃ駄目。

「ごめんね霊士!」
「あなたに助けられてばかりで!」
「でも私は!」
「あなたに生きてほしい!」

「そろそろ潮時だな!」
「生き返るとするか!」
「だが聞いてくれ!」
「さっき二人のおかげで心を決めたと言ったな!」
「実は俺もある人物のおかげで!」
「心を決めたんだ!」
「そいつは記憶喪失で自分のことはおろか!」
「役に立つ事など何も覚えていない!」
「そして自分の力だけでは満足に動く事も出来ない!」
「しかし運命に必死で抗った!」
「他人の運命にも必死で抗い!」
「一人の少女を一度救った!」

「そんな!」
「嘘!」

「俺はそんなたいした人物では無い!」
「たまたま自由に動けるから!」
「他の幽霊から逃げまくってた!」
「弱虫野郎さ!」
「自分で身に着けた覚えの無い知識を!」
「必死で総動員して切り抜けてきた嘘っぱちさ!」
「がっかりしたか?」

「嘘でも良い!」
「人のためを思っての嘘なら!」
「だから私は今から嘘をつく!」
「がっかりしたわ!」
「だからとっとと生き返っちゃいなさい!」
「せいせいするわ!」

「じゃあ行くか!」
「やっと本格的に霊士の!」
「体を探す旅が始まるのね!」

「いや、青山総合病院に行こう!」

「青山総合病院?」
そこは確か以前。
ほのかが入院していた所。
「まさか?」
「また、ほのかの身に何か?」

「いや!」
「実は前に行ったときに見たんだ!」
「大きな病院にもかかわらず空室があったので!」
「気になって覗いたら!」
「俺がいた!」
「空室に見せかけていたのは!」
「なんらかの理由があって隠しているのだろう!」
「裏の世界ではよくあることだ!」

「まだ隠してたのね!」
「言いたいことは色々あるけど!」
「生き返ることが先決ね!」
「早速向かいましょう!」


青山総合病院の霊士の個室。
「入れる?」

「自分の体だ造作もない!」
霊士は何の抵抗もなく自分の体に戻り。
そして城戸霊士は目を覚ました。
 
そして記憶を取り戻す。
「そうだ!」
「俺は依然霊能力者として!」
「悪霊退治を生業としていた!」
若くして実力のある霊士はある者からは慕われ。
ある者からは疎まれていた。
その中でもとりわけ霊士を疎んでいたのは。
霊士が来るまではNO.1だったある女だった。
彼女も若くして実力のある霊能者だったが。
霊士とは意見が食い違うことが多く何かと対立していた。

「大月京子と言ったな!」

「良いも悪いもないわ!」
「この世の理に反するものは全て排除すべき!」
彼女は霊の意見など聞く必要は無いと主張し。
霊士は話が通じるなら、まずは話を聞いてやろうと主張していた。
その為、とかく対立していたのだ。
結果、霊士は良い霊のフリをした悪霊に騙され、命を落としかけた。

「あいつのいう事が正しかったのかもな!」

「霊士!」
「霊士!」
霊士がわれに返ると命が必死で呼びかけていた。
霊士の生還を喜びはしたものの。
ほのかの様に生き返ったとたん。
命の姿が見えなくなることを危惧しているのだ。
「せっかく生き返ったんだ!」
「少しくらいは余韻に浸らせてくれ!」


「見えるの?」
「修行を積んだからな!」
「じゃあ帰るか!」
霊士は荷物の中からお札を取り出した。

「吸引!」

「ちょ!」
「何よこれ!」

「準備が出来たら出してやる!」

命はお札の中に封印されてしまった。
「しばらくは辛抱しろ!」
「会話くらいなら出来るから!」

この病院は普通の病院だが霊能者協会の登録病院で。
わけありの者も受け入れてくれる。
一般患者に紛れて霊的ダメージを受けた霊能者も入院可能な貴重な病院だった。
費用は万一の為に協会に預けている個人資金から賄われる。
調べてみると残金は残り僅かだった。

「やばかったな!」
身寄りのない霊士の場合。
残金が尽きれば処分される。

戻ってみると以前住んでいたアパートにほ他の住人が住んでいた。

「今日は野宿して明日は不動産屋を回るか?」
「協会に行って金も借りて来ないとな!」
「なに、除霊をいくつか行えばすぐ返せる!」
「そんなところでいいか?」
「命?」

「何でもいいから早く出してよ!」

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