バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

決別


 話はいつの間にか終わっていた。
 そして、それぞれ席を立ち店を出る。
「じゃあ。サファ」
 そう言ったのはリィーグル。
「えっ?」
 私には何がなんだか分からなかった。
「ええ、それでは・・・」
 それに答えるイファ・・・。
 もっと一緒にいたい。
 せめてもう少し。
 少しでいいから、リィーグルと一緒に・・・
 クルリと背を向け行ってしまおうとするリィーグル。
 イファが私の手を掴もうとする。
 私はそれを無意識に払いのけた。
 視線はリィーグルだけを見つめている。
 待って。
 行かないで。
 置いてかないで。
「リィーグル!!!」
 叫び声で道行く人が振り返る。
 リィーグルも。
 私は駆け出していた。
「ディメル?」
 私を抱きしめてくれる。
「行かないで。独りにしないで」
 私は泣きながらリィーグルにしがみつく。
 彼はなだめるように頭を撫でる。
「大丈夫だよ。ディメル」
 それでも、私はしがみついたまま叫んだ。
「いや。このまま、別れるのはイヤ!!」
 いやだ。リィーグルと一緒にいたい。
 ずっと・・・。
「しょうがないですね。明日、サファを引き取りに行きます」
 後ろから、イファの声が聞こえた。
「そうしてください」
 リィーグルが困ったように答えていた。
 私は嬉しかった。
 まだ、リィーグルと一緒にいられる。
 その事が嬉しかった。
 それに――

「さあ、帰ろうか」
 何事も無かったかのように車のドアをあける。
「うん」
 そうして車に乗り込み、森の中へ。
 また、あの場所に戻る。
 リィーグルの家へ。
 カタカタと揺れる車内。
 ここちよい振動が伝わってくる。
《何も知らないあの頃なら》
 声が・・・。
 また聞こえる。
 うとうととした頭の中で
《ごめんなさい》
 響く・・・・・・
 響く・・・。
 何を?なぜ?謝るの?
《幸せに》
 ダレ?
《どうかあの頃のように》
 重く響く響く声。
 闇と不安と安らぎと
 ――――。

しおり