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いい上司

「いやあ君、ほんとに頼りになるよ。これも頼めるかな。よろしくね」
 目の前に書類が置かれる。誰からも好かれている上司に褒められて悪い気はしなかった。
 ふとうまく乗せられてるんじゃないかと思うこともあったが、仕事は仕事、文句は言えない。
 だが、最近回されてくる仕事が多くなった。それをこなすために無理をして少しずつミスも増えていた。
 その尻拭いを上司が他の誰かに振るから、自然と周囲の目がわたしに厳しくなってくる。振った上司にではなく。
 いたたまれない。
 そう思うことが多くなった。スキルを上げればいいことなのだろうが、それほどわたしは優秀ではない。ということはあの上司の言葉は嘘なのだ。わたしってば気付くの遅っ。
 口には出さないけれど辞めさせたいのだろう。いつ嫌味に気付くのかと笑っているに違いない。
 よし、わかった。決めた。
 嫌味にも厳しい目にもめげず、いつまでも居座ってやる。
 そう決心したら何も怖くなくなった。

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