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「え?」
 キリカちゃんとカーツ君はすでに唐揚げが口の前。
「えっと、ハズレMPポーション菜種油と、ハズレ増血草と、新しい食材二つ使っあるから、ステータスの確認が……」
「ああ、そうでしたね。では僕はハズレ増血草を使ってないほうから食べますね」
 カーツ君がほっとして口に入れた唐揚げを食べる。
「ユーリ姉ちゃん、これ!」
 食べ物が口の中に入った状態でしゃべっては駄目ですよ、カーツ君。
「すげぇうめぇ……」
 はい。仕方ないです。おいしいの伝えたかったんですよね。
「にゃっ。これ、キリカは駄目なの。苦手なのよ」
 ありゃ。
 そうか。キリカちゃんはニンニクだめか。
「うん、そっか。故郷でも苦手な人もいたからね」
 いったん口に入れようとした唐揚げを皿に戻した。
「ステータスオープン」
 そうだったそうだった。
 カーツ君の視線が上下に動く。
 おっと、私はニンニクなし唐揚げを皿に引き上げブライス君とキリカちゃんに渡す。
「ステータスオープン」
 ブライス君もステータスを開いてから、唐揚げを口にする。
「ああ、美味しいですね。この間とは別のハズレMPポーションなんですよね。違うものを使っても、揚げるという調理法はどれも素晴らしくおいしくなる。時間をかけて煮込んだわけでもないのに肉は柔らかいですし」
 ブライス君も気に入ってくれたみたい。
「キリカ唐揚げ大好きなのよ。今日のもおいしいの!」
 ブライス君が一つ食べ終わるとステータスを確認し始めた。
「威圧レベルがプラス1になってますね」
「へぇ。菜種油は1つしか上がらないのね」
 他のは補正値10とかなのに。
「ああ、そうか。ユーリさんは知らないんですね。威圧はレベル1からレベル3までしかなくてそれ以上はMAXです」
 え?3までしかないってことは……。
「僕の威圧は1ですが、補正値で2になります。威圧が2になれば初級モンスターは恐怖で動きは半減すると言われています。威圧3で中級モンスターの動きを半減させることができ、MAXで上級モンスターの動きを鈍らせられます」
「え?それって……」
「威圧が2になった状態でポーション畑に入れば、動きの速いスライムも動きが遅くなるでしょうね」
 もしかしてすごいことなんじゃ……。
「あ、キリカね、威圧はゼロだったけど、1になったよ!」
 ん?1だとどんな効果が?
「おー、だったら今度おやじをにらんでやれよ。キリカのおやじ、威圧ゼロだろ?」
 カーツ君が楽しそうに笑った。
「……キリカ、生意気だって殴られるのよ?」
 殴られる?
 そういえば、キリカちゃんにはろくでもないお父さんしかいないって……。
「大丈夫ですよ。威圧レベルが高い人に睨まれたら、耐性があるか、よほどの信念がない限り目をそらしてしまうでしょうから」
 そうなの?
 え?でもそれって、威圧を上げれば逆らう人が減るってこと?怖くない?
 ふと、主人を思い出す。
 主人に睨まれると、すくみ上ってしまった。言いたいことも言えず、ただ目をそらしてうつむいていた。
 ……あれは、主人の威圧に私がおびえていたというんだろうか……。
 信念がなければ目をそらす……か。
 私の信念……。主人に逆らってまで何かを突き通そうとしたこと……なかった。今はどうだろう。
「ああ、人にはレベルゼロかレベル1しか関係ありませんよ。レベル2だろうが3だろうがMAXだろうが人に対しては効果は1と同じです。威圧レベルが高い人がむやみに低い人に言うことを聞かせるようなことはほとんどありませんよ。」
 私の顔色を見てブライス君が説明してくれる。
「だよなー。威圧なんてなかなかレベル上がらないもんな。レベルが30超えると威圧1が付くかつかないかだろ?」
 えっと、普通に生活してたら死ぬまでにレベルが5とか6なんだよね?
 ダンジョンのモンスターを倒すと経験値がいっぱいたまってレベルを上げられると言っても、レベルが10になるまでにも何年かかかるわけで。
 レベル30ってかなり頑張らないと駄目で……え?
 あれ?
 えっと……。
「もしかして、レベル1の威圧も結構すごいこと……なんじゃ……」
 たかが1つしか補正値で上がらないってことじゃなく……。
「まぁでもさ、威圧レベル1じゃぁ、モンスター相手じゃ役に立たないからなぁ。全然すごくもなんともないよな?」
 とカーツ君。

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