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秘密基地の改装

 一応聞いてみたが、9999からの更なる上限開放は流石に無かった。 しかし9999にいずれ到達するのは目に見えている為、妥協案として何か代わりとなるものを幾つか要求して構わないと、リアジュウは渋々認めた。

「それじゃあ、まずはこの秘密基地に地下室を追加してもらえないかな?」

『地下室? 地下で何をするつもりなのだ?』

「厳密に言えば、地下に畑と作業場を4つほど設けたいのだけど?」

『畑と作業場?』

「うん、畑で蚕やミミズを飼おうと思って。 糸や塊はアイテムボックスで保管出来るし、それを使って新しいお友達が出来たら色々と服とか作ってあげたいの」

 新しいお友達……それはきっと彼女(マイスイートハニー)にするターゲットの事に違いない。 だけど、この場でそれを指摘出来る神は居なかった。



『他に何か欲しいものは有るか?』

「罠とかを見つけたり、解除出来る力を貰えませんか?」

『残念だがスキルは1人3つまでしか持てない……だが、待てよ? しばし待つのだ』

 何か思いついたリアジュウがセラの頭の上に手を置くと、モゴモゴと聞き取りづらい言葉を言い始めた。

『スキル【私だけの秘密基地】を、ユニークアイテムとして新たに作り直した! 先程言っていた地下の畑や作業場はもちろんだが居住区の部屋数も10に増やしてある。 更に……』

 リアジュウが胸を張って自慢気に話す。

『どうせお前がこの中に入れるのは、彼女(マイスイートハニー)にするつもりの相手だけなのだろう? なので、この中に入る鍵をお前の唇に変えておいた』

「唇?」

 周囲の神々が不穏な気配を感じた、リアジュウの頭にまでボッチの毒が回り始めてきたのだろうか?

『この中に入る条件はただ1つ、お前とのキスだ。 お前とキス出来た者だけが、この中へ入る事を許される!』

 リアジュウはセラが大喜びする顔を想像していたが、実際のセラの反応はあまり芳しくない。

『どうしたセラよ、部屋数も増やしたし文句のつけようが無いのではないか?』

「うん、部屋の数を増やしてくれたのは嬉しかったんだけど、どうせ増やすなら20人30人でも暮らせる様にすれば良かったのに……」

 あ、そっちなのね。 リアジュウ達は納得した反面、セラがそれだけの彼女を囲むつもりでいる事に驚いた。



「あ、でもセラ。 冒険者となってパーティーを組めるのは6人までだから、ぞろぞろと女の子を連れて歩けないわよ?」

 どう言ってセラを納得させるのかリアジュウ達が悩んでいると、近くに居たリリアが助け舟を出してくれた。

『おお、そうだそうだ! リリアよ、良い所に気付いてくれた。 褒美としてお前の魔力の上限も999に変更し、もし到達しても神の試練を免除する事を約束しよう』

 とんでもない約束をする神のリアジュウ、リリアはドラゴンと戦う事無くエスカレーター式に魔力の上限が上がる事が確定した。

『先程の話の続きだがセラよ、これを代わりにお前に授ける』

 リアジュウが1冊の見覚えのある本を取り出すと、力任せにセラの頭の中に押し込み始めた!

「痛い痛い! 何をするの急に!?」

『少しだけ我慢しろ!』

 ズボッ! 強引に頭の中に本が押し込まれると、セラの空いたスキル枠が1つ埋まる。

『よし何とか成功したな。 早速だが実験してみよう、幸いその目の前に居る子はスキルを2つしか持っていない。 お前がその女の子の役に立つスキルを授けるのだ』

 リアジュウがリィナを指差しながら、スキルを使う様に促す。 セラが無理やり覚えさせられたスキルの名は【スキル付与】、セラが認めた相手だけにスキルを与える事が出来る。 その証明方法とはもちろん……。


『セラ、お前とのキスだ。 お前がキスをした相手にのみ、スキルを与える事が出来る』


(もう駄目だ、リアジュウの頭の中の隅々までボッチの毒が浸透している!?)

 リーダーの1人を止められるだけの力を持たない神達は、パニックを起こしかけていた。



 そんな事など知らないセラはリアジュウに言われるまま、リィナの残り1つのスキル枠を埋める為にスキルを発動させる。

「【スキル付与】」

セラの手の上にスキルブックが現れ、リィナにもっとも役に立つと思えるスキルを探した。 そして、リィナの持つ【ポーション変換】を最大限活かせるスキルを授けたのだった。

「セラ・ミズキの名において、リィナに【自動大回復】を授ける。 HPやMPを仮に失っても、すぐに大きく回復し元の状態に戻れ!」

 リィナの残り1つの枠に【自動大回復】が入り、これでリィナはある意味で無尽蔵にポーションを作り出せる存在となった。そしてリィナの魔力も上限がエスカレーター式に9999まで上がる様に変えられた。

『1人だけ999以下の上限のままでは寂しかろう、だが上限を自動で上げるのはこの場に居た2人だけだ。 そうしなければ、神の試練の意味が無いからな』

「分かった、今回の事は他の子たちには内緒にしておく」

『そうしてくれるとこちらも有り難い、あとリリアとリィナにも忠告しておく。 このセラという少女と共に生きるつもりならば、修行を絶対に怠るな。 少しでも怠れば彼女との差は開いてゆく、あとに続く者達の手本となれ』

「「はい、ありがとうございます!」」

 神の試練を無事(?)終えたセラ達が家に帰る準備を始めた時、ようやく簀巻きの状態から解放されたボッチがセラの胸に飛び込んできた!

『瀬良~! 次は何時会えるか分からないけど、私はいつまでも君を大切な友人だと思っているからね』

「ボッチ……」

 胸が締め付けられそうになったセラだったが、ボッチがセラの胸に手を伸ばそうとしているのに気付くとその頭を力一杯殴りつけた!

「お前は節操ってものがないのか! 中身が男でも、女なら誰でも良いのかよ!?」

(まったくこいつは、どうしようもない奴だな)

 半ば呆れていると、リリアが青ざめた顔でセラを問い詰めた。

「セラ、中身が男ってどういう事?」

「!?」

 リリアとリィナに正直に話すべきかどうか、セラは答えに窮してしまった。

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