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 愛は……物じゃない。彼女には出汁から料理を作るような時間はなかっただろう。だからと言って、子供への愛情がないなんて、そんなこと言う人がいるなら、私は、そんなことない!って言うよ。
 私が、子供たちに服を作ってあげたくても作らなかったのは、あの女……彼女がいつも一緒にいられない子供たちのために一着一着大切に服を選んで着せていたのを知っているから。動きやすいように。体温の調整がしやすいように。洗濯も赤ちゃん用の肌に優しい洗剤で丁寧に洗れていた。石鹸の匂いのする洋服……。
 そんな彼女が、なぜ主人と浮気なんて非人道的なことを……。
 ふと、疲れた時、ふと寂しくなって……ふと……誰かに頼りたくなったのかもしれない……。
 ああ、華菜さん。あとどれくらいで子供が生まれるの?
 あの時は動揺して……家を飛び出してしまった。
 まさか、こんな……戻ることができない異世界に来てしまうなんて思ってなかったから。
 離婚しなくちゃ。
 子供が生まれるまでに絶対……。どうしたらいいんだろう。男性は離婚した当日でも別の人と結婚できたはずだ。
 私は主人とうまくいかなかったけれど……もしかすると、子供がいれば華菜さんは幸せな家庭を築けるのかもしれない。
 どうしたら、帰れるだろうか……。
 帰りたくない。
 でも、離婚はしないといけない。
 転移魔法……。
 転移魔法なら日本に帰れるかもしれない。
 でも……。
 帰りたく、ない……。
 ううん、ああ、違う。例え帰ったとしても、すべきことをすべて終えたら……ここに戻ってきたい。
 誘拐されたときは、連れていかれて、そして戻された。
 転移魔法で行って、転移魔法で帰ってきたんだ。だったら……。
「ブライス君、私、転移魔法のことが知りたい」
「転移魔法ですか?」
 ブライス君がびっくりしている。
 そういえば、私の言葉はあまりに唐突だ。何の話をしていたんだっけ?
 手作りの品には魔力が宿るだっけ?その前は?えっと、そうだ。武器を買いに来て、ブライス君は付与魔法を自分で武器に施してて……。
 魔法に興味を持ったって言えばいいかな……。
「あれ、不思議だったのよ!あっという間に遠くに移動できるの!ブライスお兄ちゃんも転移魔法使えるの?」
 ほっ。
 キリカちゃんも知りたそうに言葉をつづけたことで、唐突さが紛れたかな?
「転移魔法は失われた魔法と言われてますから。使える人はごくわずかですよ。魔力消費量が激しいということもありますが、学ぶための本や教えられる人も少ないので」
 そうなの?
「なぁ、でもブライス兄ちゃんは魔力は足りるんじゃないのか?だったら、転移魔法の本とかあれば使えるかもしれないってことだろう?」
 ブライス君が困った顔をする。
「探してみたことはあるんですが……この王都の図書館でも見つかりませんでした」
「じゃぁ、あっち行って教えてもらったらいいんじゃない?すんごくおっきな魔法陣いっぱいあるって言ってたよね?あっちの国」
 キリカちゃんがあっちの国と言っているのは、私たちを誘拐した国のことだ。
 確かに見た。大きな転移用の魔法陣があるのが。私たちを転移させたのも、その大きな転移魔法陣だ。
 ブライス君がキリカちゃんの肩をつかんだ。
「転移魔法陣がいっぱいですか?失われた過去の遺跡がいくつも残っているということですか?」
「うんとね、キリカわかんないのよ?」
 遺跡?
「ねぇ、カーツ君、あれは遺跡じゃなかったわよね?人が多く住む場所の近くに個々何十年かで設置していったようなこと言っていたから」
「あー、そうだっけ?」
 ブライス君の目がキラキラしている。
「設置?それが本当だとすると、ユーリさんたちをさらった国には、失われた魔法が、失われぬまま伝わっているということでしょうか……?一度、行って確かめたいですね」
 うん。
 あれ?
 目の輝きがますます……。この目……。
 もしかして、ブライス君は勉強熱心というよりも、単に魔法好き?好きだから習得も早いとか?
「ブライスお兄ちゃんが行くなら、キリカも一緒に行くのよ!」
「あ、それなら俺も!あそこのダンジョン便利だったもんなぁ!」
 ブライス君が首を傾げた。
「ダンジョン?別の大陸にある国にさらわれたんですよね?ダンジョンに行かせてもらうことなんてできたんですか?」
 そうか。ブライス君は細かい話知らないよね。えーっと、話せば長いこと?なので、また後で教えてあげようかな。……というか、まぁ行く機会があれば、その時にでも見せて説明した方が早いよね?
 そんなことよりも……。
「もう一度行けるなら、私も行きたい!」
 海産物チェックだよ!海産物チェック!したいよ!

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たぶん、ユーリの目も、ブライス君と同じように輝いていると思うのです。

海苔、わかめ、昆布、ヒジキ、もずく……海藻類だけでも天国!

(*'ω'*)


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