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「あの頃は、楽しかったよね」
「うん……」
暫く間があく。
その間を埋めるかのように瞳がぱちんと手を叩く。
「さぁ、さっさと着替えてご飯食べよ?
味噌汁冷めちゃうよ」
瞳は、小さく言うと部屋を出て行った。
思い出させちゃったかな?
僕は、着替えると階段を降りリビングに向かった。
テーブルの上には、味噌汁とパンが用意されていた。
「ねぇ、瞳」
「なぁに?」
「どうして、パンに味噌汁なの?」
「えっと。
今日は、ご飯と味噌汁にしようと思っていたんだけど……
ご飯を炊くのを忘れてて……」
「そっか、パンと味噌汁なんだ」
「だって、先に味噌汁作っちゃったんだもん」