7話 明かされた衝撃の事実 その1
「私は冒険よ! 美憂ちゃんも一緒に行こう!」
「いくか麻衣!」
「瑠偉ちゃんも行こう!」
「私は少し疲れたので休みます、二人で行ってきてください」
「そ、っそう」
「麻衣、美憂、くれぐれも、軽率な行動はとるなよ?」
「わかってるって!」
「私は日ごろから鍛えてるから大丈夫だ」
「美憂ちゃん、さあ行くよー! 「おぉぅ!」」
楽しそうだな、話聞いてなかったのか? どこに行っても木と雑草しかないんだぞ?
「では、私は少し花摘みに」
3人とも木々の中に入っていき見えなくなった、さて俺は飛行機の中で少し寝るか。機内に直接テレポートし適当な座背に座り目を閉じ眠るのを待った。
少しウトウトし始めたころ、音が聞こえた。
コツンッ、コツンッ
飛行機に何かあたる音がする、音がする場所に移動し窓から外を見る。
瑠偉が小石を拾っては飛行機に投げて窓に当てているのを何度も繰り返してた。
「入れない、入れないよ!」と開きっぱなしの出入り口から瑠偉の声が聞こえる。
飛行機の出入り口は地面から3メートルほどの高さにある、空港では階段付きの車が横付けされて乗り降りできるが、そんな物はここにはない。
ジャンプしても届かないだろうな、俺の力で上にあげてやるか。
出入り口まで移動し瑠偉の姿を確認し俺の
「きゃっ え? え? え? 浮いてるよ? 浮いてるよ?」
そう言った瑠偉は、かなり驚いた表情をしている、出入り口正面で静止させると、半口を開けてこちらを見ていた。
ふむ、人は本当に驚くと2回言うのか、参考になった……
「事実なの? 本当なの? そんなことあり得るの?」
「隠さず話すって、言ったはずだが?」
「まさか、そんなありえない」
「疑ってたのか? まぁいい、あったかい飲み物でも飲んで落ち着くといい」
あっさり信じていたのが引っかかっていたが、妄想発言だと思っていたのか? 扉から離れ瑠偉を飛行機の中に入れるが、何かを考えているのか動く様子が無い。
「ぼーっとしてないで中に入って座れ」
瑠偉は若干ふらつき気味に歩いて、座席に座りため息をついた。
俺は手持ちのカバンから缶を取り出し、中身の温度を上げる力をこめる。
「ほら、温めてやったぞ」
「なぜ、おしるこ?」
「なんだよ? 俺は甘党なんだよ、酒飲まないしな」
瑠偉におしるこ缶を渡し通路を挟んで隣に座る、瑠偉は肩を丸くし両手で缶を持ち下を向いている。
かなりの長い無言が続いた…
「あ、あの、実は……」
瑠偉の声には力なく下を向いた姿勢のままで小さな声で話し始めた。
「ここは地球で無人島だと思ってました、麻衣と美憂には、写真撮ってた時、私が話をするから二人は黙ってて、と言ってあります。たぶん、彼女たちも信じてないと思います。
さっき3人で打ち合わせして<狂気の妄想中二おやじ>と言う結論に達したところです」
なにそれ、俺が真剣に説明してる姿を、哀れな妄想おっさんとして見てたのか? 正直、むっちゃ凹むぞ。俺の方が落ち込みたいわ。
「ミカンの解析の話だって、ボロを出してやろうって思ってたけど、なんか上手い事かわされたし・・・」
「いや、あんな大きなミカンは地球にないだろ? おかしいと思わなっかったのか?」
「いえ、晩白柚という大きな柑橘類があります。それかと思ってました」
「あ、あるのか。大きなミカンが地球に・・・俺もびっくりだよ」
「そこで、見習い心理カウンセラーとして、貴方を正気に戻してあげようと来ました」
衝撃的な事実が今ここに、これは麻衣と美憂にも俺の力を見せて信じさせた方がいいかな、あと見習い心理カウンセラーってなんだよ。怪しすぎる……
「本当にここが地球じゃないんですか? 本当ですか?」
「本当だ、疑うなら大気圏外から惑星を周回して地球じゃないと言う事実を見せてやるぞ?」
かなり落ち込んでるな、ここは少し元気になる種を撒いてやろう。
「ラモス、元気出せ。なんとかなる」
瑠偉は、頭を下に向けたままの姿勢で右手でペンを持ち、俺の太ももめがけて振りかざす。
「うあぁおぅぅ」
俺は素早く隣の席に移動する
「ごめんなさい、つい……手が」
ついって、何時もこんなことしてるのか? 恐ろしい子
あっ、若干涙目だな……居た堪れないので、逃げよう
「俺は外に出ている、少し休んで心を整理するといい…」
俺は何度も振り返りながら瑠偉の姿を確認し飛行機から出る、近くにあった横たわった木に座り考える、しかし瑠偉達、まだ何か隠していることあるんじゃないかのか、そんな気がする。
落ち着いたら聞いてみるか、はぁ、なんかすごく疲れた。
麻衣と美憂は俺の力のすごさを見せて納得させるとして。
あとは、地球に戻る方法を考えるか、まったくいいアイデアが出ないけど…
う~~~ん う~~~ん と空を見上げ唸ってみるものの、なにも浮かばない、空っぽだ、すっからかんだ、このまま死ぬのか……
いや、なんとしても地球に戻って俺を跳ばした、あいつらにお仕置きをせねばならん、俺の気もおさまらないし、小物を放置しておくと調子づくしな。
気が進まないが、4人で話し合えば何かいい案が出るかもしれないな。
……
…
丸太に腰かけ何も考えずに呆けていた、気づいたら辺りが若干暗くなっている。
正面の木の隙間から麻衣と美憂の姿が見えた、彼女達は俺に気づくとこちらに向かって歩いてきた。
「おーーーい兼次ちゃーん、戻ってきたぞー」
麻衣が手を振りながら小走りになり俺の前で止まる、遅れて美憂も俺の前に来た。
「織田さん、何もなかった……」
「そうだね美憂ちゃん、スライムぐらいはいると思ったんだけど」
「は~、幸せだな。お前たち」
「織田さん、どうしたんだ? 元気ないぞ?」
「さっき、衝撃的な事実に直面したところだ」
「やっと、正気になったんだ?」
なんだよ美憂そのニヤケ顔は・・・
まぁ、これからその表情がどうなるか見ものだがな。