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 こうして世界は少し平和に近づいた。

「ガイルは死んだのかい?」

 ベッドの上で安静にしていたベルがジャキに尋ねる。

「ああ。俺が殺した」

「そうかい、ジルは?」

「ジルも俺が殺した」

「そうかい。
 なんだろ、私はなんにもできなかったんだねぇ」

 ベルが寂しそうにそう言って涙を流す。

「……すまない。
 俺にもっと力があれば」

 ジャキが小さくため息を付いた。

「学校はどうなるんだろうね」

「力を求めた奴は、検査入院さ。
 学校は壊滅したからな。
 系列の学校に転校だとよ」

「そうかい。
 これから先の世界はどうなるんだろうね」

「まぁ、なんとかなるんじゃねぇか?
 今までなんとかなったし。
 フィサフィーも死んだし。
 クローンのふたりは、それぞれの世界でサラリーマンになるってよ」

「そっか……
 前に向かっているんだね」

「ああ。進まないとな。
 それが俺らの生きる道さ」

「アンタはどうするんだい?」

 ベルがジャキに尋ねる。

「俺は旅に出る。
 いろんな世界を回るさ」

「世界旅行かい?」

「いや、異世界旅行かな」

「異世界?」

「ああ、元無極躰主王大御神さんの力を借りて異世界を旅して実力をつけるさ」

「さみしくなるねぇ」

「でも、また戻ってくるさ」

「ああ、楽しみにしてるよ」

「そんときは、『ただいま』を言わしてくれ」

「じゃ、私はアンタに『おかえり』を言わしてもらうよ」

「ああ、とびっきりの笑顔を見せてくれよ?」

「もちろんさ」

 ベルが笑う。

「また強くなって戻ってくるよ」

「ところで、セロやオトネはどうしたんだい?」

「あいつらは一足先に異世界さ。
 俺とは別世界を旅するらしいから。
 会うかどうかはわからんがな」

「そうかい」

「ああ。今頃は元気にやってるさ」

 ジャキがそう言って笑う。

「そうだね、あの子らは元気だろうねぇ」

 ベルはそう言って窓の外を見る。
 世界はほんの少しだけ優しくなった気がした。



















 ――某世界

「ご主人さまー」

 メイド服の少女が少年を追いかける。

「オトネ遅いぞ」

「ご主人さまが早いんですますよ!
 こういうとき、男の方は女性に歩幅を合わせるんですますよ?」

「そうかい?」

 少年が歩くペースを遅くする。

「そう!できるざないですますか!」

「はは……
 やっと旅ができるね」

「はい」

 メイド服の少女が小さく笑う。
 その笑顔はどこまでもどこまでもしあわせそうだった。


 ―完―


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