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「こんな奴でよかったら、お兄ちゃんと思っていいよ」
瞳が、そんな事を言い出した。
「じゃ、お兄ちゃんって呼んでもいいですか?」
「いいよ。いいよ。
じゃんじゃん呼んじゃって!」
「わーい」
僕を無視して、そんな話が進んでしまっている。
「あの……
僕の意見は……」
そう言うと、月城さんは、じっと僕の目を見て言った。
「あの、お兄ちゃんって呼んじゃダメですか?」
う……
そんな目で、僕を見ないで……
「ダメですか?」
「澪ちゃん、あとひと押しだよ!」
何が、あとひと押しなんだ。
「ダメですか?うるうる」
うるうるって言葉に出す人はじめてみた気がする。
でも、この可愛らしい目……
「はぁ……
好きに呼んでいいよ……」
ま、負けた…
「じゃ、私のことは澪って呼んでね!
お兄ちゃん」