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第56話 アタック・オブ・ザ・タンブルウィード

Gは「GOTHIC LOLITA」のG 古城ありすとうまい棒

 漂流町のとある辻。すなわち交差点に、ギャングスターバックスがデンと構えている。このチェーン店は、基本ギャングしか利用しないコーヒーショップ兼酒場である。当然、漂流町にもあるはずだと考えたありすは探していた。ここにキラーミン・ガンディーノが居るとありすは踏んでいたのだ。ありすはJ隊のジープを停めると、右手にガトリング銃、左手にメキシコ金貨の詰まったジェラルミンケースを持って店内へと単身乗り込んだ。ブランコ一味の中で最強であるキラーミンを倒さない限り、このゲームに終わりはない。
 店内の壁には、ありすたちが賞金首のWANTEDの張り紙になって張られていた。
 キラーミンは中央にあるテーブルで、へのへの部下達とカードゲームに興じていた。古城ありすは一斉に振り向いたへのへのもへじを無視して、テーブルの上にジェラルミン・ケースをドンと置いた。
「五十万ドルよ。センセイ、あたしと勝負しない? あたしが勝ったら雪絵さんは返してもらうわよ」
 それだけ言うと、さらにうまい棒をテーブル上に十数本積み上げた。
「これ、あたしのチップ代わり。さぁ、カードを配りなさい!」
 ありすは左隣のへのへの部下に指示する。ギャングの世界のゲームといえば、ポーカーと相場が決まっている。そしてポーカーといえばイカサマである。ゆえにポーカーフェイス(能面)と呼ばれる。だがイカサマは、バレなければイカサマではないのだ。キツネと狸の騙しあい、それがギャングのカードゲームというものだ。
「フルハウス!」
 ありすが先に手札を見せた。
「スペードのAのフォアカード」
 ポーカーはあっさりとキラーミンの勝利で終わった。さて、どこにイカサマが潜んでいたのか、あるいはありすが実力で負けたのかは不明だ。
 ところがありすはそこにメンコを叩きつけて、丸テーブル上のカードを全部ひっくり返してしまった。
「誰も勝負がポーカーだとは一言も言ってないわよ! これはメンコで勝負なんだからネ」
 ありすはにやにやと笑っている。いつの間にかルールを、メンコのルールに変えてしまうというルール違反。
「さあっ、雪絵さんを返して貰いましょーかッ! センセェーッ」
 この、強力な子供の遊び意味論に抗えるのか、キラーミン・ガンディーノは?
 するとキラーミンはうまい棒を葉巻のように銜えて言った。
「……よかったよ」
 秘め事の後のセリフか! ありすは顔を赤らめた。
 ……効いてない? キラーミン先生だけは、いつどんな時でも何も変わらなかった。そう、常に余裕ぶった態度だ。
「やっぱり……あなただけはヒトモドキではないようね」
 外から地響きが聞こえてきた。
「な、何の音よ?」
「はい注目ぅ~。『ヒトモドキ』という字は、漢字で書いて『人擬』。『擬』は『もどき』、あるいは『なぞらえる』と読む! つまり『人になぞらえる』、人であって人でなきモノ!」
 キラーミンは長い金髪を右手でクイッと耳にかける。地響きは大きくなった。
「ヒトヨヒトヨニヒトモドキ! お前らが終了という合図よ。この町に侵入した、お前の仲間たち全てがな。行って、自分の眼で見てみるんだな」
 キラーミンは立ち上がってスイングドアを指差した。
「……くっ。キラーミン! おまえのかあちゃん、デベソ!」
 ありすはまた小学生みたいな喧嘩で、子供の遊び科術を乗り切ろうとした。だが地響きが激しくなって、ありすはグッとジェラルミンケースを持って外へと出た。
「ありすさん、大変です、ヒトモドキの大群が!」
 いつかJ隊のジープの運転席に、レート・ハリーハウゼンが乗っていた。ここまで逃げてきたのかもしれない。ありすはレートに鍵を投げると、ジープはすぐにエンジンが掛かった。レートの運転するジープに、ありすは飛び乗った。

Fは「FOOD FIGHTER」のF レート・ハリーハウゼンと麩菓子

 地響きがどんどん近づいてくる。住宅街から垣間見えるピラミッドの頂点から、無数のヒトモドキがあふれ出して来ていた。両手を水平にしてバランスを取り、回転草の上に乗ったヒトモドキの群れは、洪水のようになだれを打ってこちらへ向かって全力で走ってくる。もはやピラミッドに近づくことさえできなかった時夫と雪絵は手をグッと握った。
 そこへありす達のジープが駆けつけた。
「よかった、雪絵さん。時夫も一緒ね」
「ウーは?」
「……まだどっかで戦ってるみたい」
 時夫に尋ねられても、ありすも石川ウーに関して確たる情報を持たない。
「時夫君。安心して下サイ。時夫君と雪絵さんは、必ずTOKIOに連れて行きマスから。このワタシの働きで!」
 下車したレート・ハリーハウゼンの碧眼が煌々と光っていた。
「……あ、ありがとうございます」
 時夫は大の大人にそういわれると恐縮してしまう。
 西部は無法者の世界……北の宇宙帝国の侵略に比べたら全然物量からいっても大した事はない、はずだった。それが今や、「バイオハザード」か「ロード・オブ・ザ・リング」かという物量作戦で総攻撃を受けている。迫り来るヒトモドキを凝視すると、時夫はおかしな事に気づいた。
「ありゃ何だ。み、みんなランドセル……?」
 背中にランドセルを背負っている。だが子供ではなくあくまでオトナだ。海の向こうでは、日本のランドセルがオサレな「大人」に人気だというが。
「どーやらこの西部で今、子供の遊び意味論がますます優勢になってきた結果として、西部劇一辺倒だったヒトモドキが影響を受け始めているらしい」
 ありすはキラーミンが、子供の遊び意味論の影響を確実に受けている事を確信したが、逆に相手はそれをうまく乗り越えようとしているのではないかと察した。
「グレーステ・シュタルケ、フェアタイディグング・マウアー!」
 大群を目前にしたレート氏が、ドイツ語で科術の呪文を放った。
「なんかこっちの方が呪文に相応しいわね!」
 ありすは感心している。
『まぁそりゃ『無限たこ焼き』よりゃあな……』
「なんか言った?」
 ありすはキッと時夫をにらむ。
「別に、……ただ、たこ焼きが食いたいなぁと」
「たっぷり食わせてやろうか?」
 ありすの両手はフライ返しを持ったポーズで、迫る大群に無限たこ焼きを放とうとしている。
「い、いえ。結構です」
 突如前方のへのへの・ヒトモドキ軍団とは別に、反対方向から突撃ラッパが聞こえてきた。
「あの軍団は?」
 後方から猛スピードで迫る集団、それは騎兵隊である。
「敵か、味方か?」
「ウェルダン少佐の騎兵隊、ドイツ麩菓子擬人団デース!」
 レート氏が駄菓子の陰に意図して忍び込ませていたもの、それはドイツ人のスイーツ好きが生み出した、麩菓子で出来た騎兵隊だった。白彩店長が雪絵を創造したように、レートもまたドイツ兵を麩菓子のみで作り出した。レートは近所の森の谷間に棲むワニをマジパンで作り出したように、白彩店長に対抗できるほどの科術師なのだ。
「はぁっはっはっはっは! Mr・ウェルダンにこんがり焼いてもらえ!!」
 そしてレート本人はというと右手にピースメーカー(銃)、左手に麩菓子剣を構え、騎兵隊の先頭に立って突撃を開始していく。って神羅万象チョコか?! 両者は激しく衝突した。
「バーバリアン共め。この銃弾はクリント・イーストウッド菌で焼いている。それに加えて磨き上げた麩菓子剣、みじん切りにしてくれる!」
 レートはヒトモドキをちぎっては投げ、ちぎっては投げ、まるで「バイオハザード」の一シーンか、「戦国無双BASARA」のように一騎当千の大立ち回りを演じていた。
 ありすは無限たちやきを撃ちまくる。ポップコーンマシンガンは雪絵に任せ、金沢時夫はしょうがないのでライトセーバー警棒を構えた。
「あれは一体どういう仕組みなの。なんでこんなに湧き出してくんのよ!」
 全員必死で戦っているが、漂流町の中央に建つピラミッドを何とかしないと、いずれ数に圧倒されてしまう。しかしレートの騎兵隊科術の活躍は目覚しいものがあり、やがてピラミッドから湧き出すへのへの達は収束していった。
「ふぅー。一仕事の後は、キンキンに冷えたラムネがウマい!」
 ドイツ人のレートが飲むとビールに見えてくる。
「……またウーを探さないと」
 時夫らは、いつも石川ウーを探しているような気がする。
「駄菓子が足りなくなったわね。ちょっと漂流町のコンビニへブンへ行って来る!」
 ありすはここに来たのにも一苦労したはずなのに、彼女の店であるヘブンは普通に営業しているらしい。本当にどこにでもあるなヘブン。無法地帯の荒野だろうと何だろうと、緊張感まるでナシ。
 しばらくして戻ってきたありすは慌てたように駄菓子を配布した。
 地響きが再開した。ピラミッドの頂点から再びランドセルを背負ったへのへの達が湧き出してきた。
「さて、第二回戦だ!」
 レートは再び洪水のように向かってくるヒトモドキの群れを睨んだ。

メカメカフォース 死ぬのは奴らだ

 ズゴゴゴゴゴゴォオオオ……。
「ようやく来たわね、メカメカフォース! 送水口ヘッドが呼んでおいたのよ」
 いつの間にか登場したA子がにやりとして仁王立ちしている。
「送水口ヘッドが? 何よそれ」
 ありすは怪訝な顔で訊く。
「自称超大作脱力系映画として有名な超B級映画。タンクがポスターの絵と実際に登場する大きさがまるで違ってがっかりするパターン。メカメカフォースはテキサス州に秘密基地があるという設定なのよ」
 劇場で見たのか。一体幾つなんだよこの人。二十位と思いきや、実はアラフォーだったりして。
「おいおい『メカメカフォース』なんて、さすがに誰も知らないんじゃないの、プロジェクトA子!」
「ウンベルトA子! どうせならA子師匠とお呼び! でもダメダメ邦画SF『白湯(さゆ)ならジュピター』よりはマシでしょ」
 「プロジェクトA子」は知ってるのかね、古城ありすは。
「どーせなら『SF3D』の方が」
「何それ」
 目の前に現れたのは「メカメカフォース」のポスターそのままの巨大さのタンクだった。
「ホワッツアップ?」
 乗っているのはレイバンのサングラスをした小林カツヲだった。じゃあこれは、J隊の秘密組織だったのか。
「アイム・ファイン・センキュー・アンド・ユー?」
 ありすは答えた。コイツ、それしか英語を思いつかなかったのだろう。
「Fine!」
 そう答えたのは助手席に乗った石川ウーだ。生きていたらしい。
「満を持して登場! モチロン超合金製だ」
 と言ったのは後部座席から身を乗り出した送水口ヘッドである。何がモチロンだ、と時夫はぼやいた。
 アンタッチャ・ブルの缶詰工場で爆死したはずの送水口ヘッドだが、いつの間にか復活していたらしい。というか、送水口なんてどこでもある。西部では「ギーボック製」のサボテン化した擬木として、サボテンの中に紛れていた。そうしてありす達を、ずっと監視していたのである。うかつには信用できない相手だ。そこからニューッと身体が生えれば復活完了。本当にガムダン星人かどうかは分からない。だが、こいつに「死」という概念はない。
 かくてレートのお麩騎兵隊にJ隊のメカメカフォースが加わり、壮大なヒトモドキ掃討作戦が開始された。

三すくみ大怪獣決戦

「火麺団のヒューマンのカスの敵は取らなくっちゃあ」
 ギャングスター・バックスからゆらりと出てきたキラーミンは、ニヤけた薄い唇にくわえたタバコに火をつけた。火を司る火麺団に代わって、キラーミンは何かを企んでいる。
「マッチ一本、火事の元……」
 キラーミンが捨てたマッチは、回転草に引火した。
「フッフッフ。西部に相応しくない萌えアニメのキャラクター達は……」
「誰が深夜萌えアニメだ!」
 聞き捨てならないキラーミンのセリフに、百メートル先に居た地獄耳のありすが反応する。
「萌えるゴミに分別だ! カム着火インフェルノォォォオウ!」
 このギャル語は魔学の呪文だ。キラーミンの呪文によって火は猛烈な速度で燃え広がっていった。引火したへのへの達が暴れまわっている。部下に引火して自滅の道を辿っても、キラーミンはおかまいなしだ。火の着いた空飛ぶ回転草が大規模な火災へと発展していった。そこへさらに、竜巻が発生した。竜巻が炎を巻き上げ、漂流町は炎に包まれていく。……ろくなことしやがらない。
「送水口ヘッド、なんとかしなさいッ」
 消火活動といえばそう、コイツだ。
「ブラジャー」
「ブラジャーじゃないッ! もう服着てるでしょ」
 さてはどっかで観てやがったなこのヤロウ、あたしのガータベルト姿を。
「そんな事もあろーかと既に準備中ですわよ!」
 インフラ系担当の送水口ヘッドの指示を受けたその仲間、ウンベルトA子が電柱にしがみついて叫んだ。
「トンテンカン♪ トンテンカン♪」
 さては、トーテムポールを頂点に取り付けてサンダーバードを召還するつもりか、安全ベルトA子。
「あっ、ちょっと誰かスパナ取ってくんない……下りるのめんどい」
 A子は右手をぷらんぷらんさせる。道具箱が下に置かれている。しかし、一同は無反応だ。
「バブリー♪ ラブリー♪ ロンリー♪ うわーん!」
「俺が手伝おうか?」
 声を掛けたのは、電柱を見上げたシャッターガイだった。
「サンキューにいさん」
 唐突なその登場に、A子は少し戸惑いつつもにっこりする。
「そんなトコで何してやがる? 話を途中から聴いてたんで、何をするつもりなのかは知らねーが。初めてだぜ、あんたみたいなナウい女は……」
 ひょいひょいとよじ登ったガイは、A子にスパナを手渡した。そうか、西部劇のシャッターガイにとってはバブル女はナウでヤングなチャンネーに見えるのか。いつも恋文銀座で人の往来を見ていたはずなのに、どれが最先端のオシャレか彼にはいまいち分からないらしい。
「あんた、ならず者気取りしてるといずれジャバ・ザ・ハットに凍結されるよ」
 といいながらA子はニッコニコ。
 お? 何やら二人がイイかんじに。
「おーいお前ら。そんな上で『ときめきメモリアル』してないで、さっさと完成させてくれよ」
 つい時夫が冷やかした。
「人のことが言えんの?」
 ウーが時夫と雪絵の関係を突っ込んだ。その後、ガイがシャッターに戻ることはなく、ぷらんで~と恋武八階のタイムドーム跡に出来たジュリアナ恋文でA子と踊っているのをレートは目撃したという。(って、レートもジュリアナに行ったんだな?)
 電柱の頂点にトーテムポールが取り付けられた。瞬く間に空が曇り、暗くなってくる。怪鳥の叫び声が鳴り響く。サンダーバードを召還したのである。
「サンダーバードを、呼んだぁバードか!」
 雷が鳴り、突風が吹きすさぶ。地上では相変わらず火事が続いている。だが、サンダーバードは猛烈な雨と共にたちまち鎮火していく。
「……便利な奴」

 町の異変を感じ、様子を見に来た男が現れた。長めの七三分けに浅黒い肌。それは、日焼け王・松崎しげるではない。
「あいつがブランコ・オンナスキーです!」
 雪絵が指差した。ブランコは追い詰められた状況にも関わらずにやりとし、手にしたタコスにバンバンとタバスコをかけてを食い始める。ブランコ・オンナスキー。こいつこそ、タコス片手にこの世界を辛く染めようとしている張本人。
「タバスコ・バスクル・バスコナイ・バスコダガマノアブラヲチョントツケ・一枚ガ二枚・二枚ガ四枚・四枚ガ八枚・八枚ガ十六枚・十六枚ガ三十ト二枚……」
 すると今度は上空に、竜巻とは別の黒い渦の回転が生じつつあった。またしても、嫌な予感。今度は空から、八つの巨大な足が伸びてくる。タコスライダーである。それも、ぐるぐる公園に鎮座していた時よりはるかに巨大化している。サンダーバードはというと、あさっての方向に飛んでいった。これが自然現象の権化のやっかいなところである。コントロールが全く効かないのである。
「ここのゲート・キーパーは、タコスライダーだったって訳?」
 ブランコは要するに、魔学のパワーが込められたタバスコをかけたタコスでタコスライダーを呼んだらしい。
「まさにタコく籍軍の襲来ね……」
 ウーはぽかんと口を開けているが、ウーがぐるぐる公園と西部を行き来していたせいではないかと、ありすは気に掛けた。そういえば、ぐるぐる公園の闘いも西部劇風だったし、ネイティブ・アメリカンのトーテムポールを最初に見かけた場所でもある。
「今度はタコスライダーか、マイッチャウナモウ!」
 時夫はガックリした。
「タコを獲(や)るなら♪ ウツボ・オフ♪」
 レートが科術の呪文を唱えている。今度はドイツ語ではないらしい。
「タコの天敵はウツボでーす」
「それってお麩科術って事?」
 ありすは振り向き様に訊いた。
「ナイン(イイエ)、ちりめん・モンスター科術デス。恋文銀座で、いつも愛する千代子が買っています。この通り、持ち運びにも便利デス!」
 レートの言う「ちりめん・モンスター」とは、ちりめんじゃこの中に混在しているじゃこ以外の海産物の事であろう。タコやイカ、たまには河豚の子供まで居る。さすがに、河豚など多くは取り除かれてから市場に出されるが、中にはウツボの子供まで出てくるのだ。レートの科術の呪文で空中に巨大なうつぼが出現し、タコスライダーに襲い掛かった。
「……あらららら。あわわわわ」
 一同が見守る中、両者の対決は、地上の闘いと関係なく大怪獣決戦のような展開に発展していった。火災に引き続き、漂流町はめちゃめちゃにされていく。ウツボは海の中で天敵は居ない。ウツボがタコスライダーを倒した後、それをどうするかが心配だ。ややウツボが優勢だったが、そこへ何故か舞い戻ってきたサンダーバードが加わって、勝手にウツボに攻撃を開始する。しかし今度はタコスライダーがサンダーバードに触手を伸ばしている。サンダーバードはぐるぐる公園のタコスライダーには勝てないらしい。これでウツボは満足にタコスライダーを倒すことができなくなっていた。
「……こ、これは! 児雷也の蝦蟇と、ナメクジを操る綱手(つなで)と、蛇をあやつる大蛇丸の、三すくみの状況と全く同じデース!」
 レートは日本の文化について詳しすぎだ。
「ねぇちょっと聞いていい? レートさん。こんな状況になるって予想してた?」
 かくして町の上空で、三すくみのような状況が展開した。このままでは怪獣共の放つエネルギーだけで町が破壊されていってしまう。
「い、いや~! やめて~! あたしのために喧嘩するのはやめて~!!」
 ウーが頭を抱えて叫んだ。
「しとらんわ!!」
 ありすと時夫が怒鳴った。
「ちょ、ちょっと、送水口、サンダーバードを止めて!」
「アルテーシア! できない相談だ。自然現象だから」
「誰がアルテーシアだ」
「……しょーがないわねぇ。キリンの生首……長っ!!」
 ありすの科術でバタバタとトーテムポール着きの電柱が倒れていった。するとまず最初にトーテムポールで召還されたサンダーバードが消失した。サンダーバードが消失したことで、ウツボはタコスライダーを倒し、再び元のちりめん・モンスターの姿に戻った。
 しかし漂流町は火事で消失し、大雨に怪獣決戦と、数々の惨事で破壊し尽くされている。
「この町の時空、早く正常化しないと」
 ありすは腕を組んでいる。
「どうやって?」
 ウーが訊く。
「今なら、私の再生の科術を最大限に発揮できるかもしれない。セブン・ネオンの力を見せ付けてやるのよ!」
 ありすの提案で、A子を先頭にバニーのB、石川ウーが二番手で「ABCDEFGH」の順で、セブン・ネオンはチューチュートレインをする。ユニゾン・ダンスする内に、一行はピカーッと輝き出し、急速に雨が晴れて虹が出てきた。それと同時に、なんという事でしょう! 町がどんどんきれいに戻っていく。これこそ真の、科術のもたらした奇跡というものだった。

テオティワカンでグリコのオマケ

 ブランコは町の中心へと単身逃げていった。
「……あれは太陽のピラミッド」
 セブン・ネオンは全員足で追いかける。
「これが禁断地帯……?」
 時夫は呟いた。漂流町の中心にあったのはテオティワカンの主要な建築物だ。確かに時夫は、以前からピラミッドに行ってみたいと思っていた。だがまさかそれが、千葉にあったなんて。
「……行ってみないとまだ分からない。ゲートルームには、あの頂上から入るみたい」
 頂点の入り口は、サボテン・ヒトモドキが湧いて出ていた出口でもある。この下はどうなってるんだ? 兵馬俑の土人形状態か?
「皆さん、ブランコより先にゲートルームに入らないといけません。サボテン・ヒトモドキ発生装置を止めるんです!」
 事情を知る雪絵は叫んだ。奴はおそらく、ヒトモドキ製造を再開するつもりだろう。ところがピラミッドの真下まで来ると、この階段ピラミッドは階段部分が全て下りエレベータになっている。古代アメリカ大陸のピラミッドは、皆階段ピラミッドである。
「進めん」
 そこら辺の事情は、敵とて同じことのようだ。ブランコもどうガンバっても上がれならしく、悔しさを滲ませながら何度も転がり落ちていった。階段ピラミッドは、全ての石の壁面が下りエレベータと化していた。
「自動防御システムが作動し始めたらしい」
 レートが状況を推し量る。
「しかし何故、ブランコも上がれない?」
 隣のガイがいぶかしがっていた。
「ユーガイズ! 忘れたの? こんな時も、子供の遊びよ。グリコのじゃんけんならひょっとして上がれるんじゃない?」
 ウンベルトA子がグリコを提案する。
「さすがバブル」
 言う事なすこと、昭和の香りがする。
「ヘイ、ブランコ! あんたもグリコじゃないと上がれないんだヨ!」
 相変わらずブランコもずっこけて、一段も前に進めていない。
「フ、フン……ここはガキの遊び場じゃねぇんだ!」
「う、うっさい変なガイジン! 遊び場よ! それが認められなきゃ最下段で永久に踏み台昇降してな!」
 A子のいうとおり、ブランコも含めて誰が一番で頂上の入り口へたどり着けるのか? 決戦地テオティワカンにて、遂に子供の遊び科術のラストバトルの火蓋が切って落とされた。
「我々は子供の遊び科術の手練。貴様に勝てる見込みはないぞ。ブランコ某」
 じゃんけん前にレートがけん制した。
「某とは何だ!」
「じゃんけんポン! ……やった勝ったぞ」
 勝ったのは時夫だった。
「グ・リ・コ・ノ・オ・マ・ケ」
 なんと、あがれるではないか……下りエレベータが沈黙している。やはり子供の遊び科術で解決か! 子供の遊び意味論は、確かにここも例外ではなかった。それどころかもはや、子供の遊びは西部最強の意味論として支配している。
「千代子とレートッ!」
 チョキで勝ったウンベルトA子がピョンピョン飛び跳ねて上がっていった。
「からかってるのかねっ」
 下に居るレートはA子に憤慨した。
「へっへへ~」
 真面目なレート氏にとって、予測不能な味方ほどやっかいなものはないだろう。
 この急勾配の階段ピラミッド、一体何段あるのだろうか。そして上には、何が待ち受けているのだろうか。おそらく実際の神々の都「テオティワカン」の階段ピラミッドで、「グリコ」を実践した猛者は皆無だろう。(良い子の皆は真似しないでね)だが彼らは確かに、「グリコ」を真剣に、いいや子供の遊び科術として死闘を繰り広げていた! それが西部の、いや伏木有栖市恋文町の命運を掛けた最後の決戦であると、己に言い聞かせつつ。
「パ・イ・ナ・ツ・プ・ル!!」
 パーを出したブランコ・オンナスキーが、白い歯を輝かせながら飛び上がっていった。
「フハ、フハハハハ。どうやら俺様の勝ちのよーだな!」
 だが、ブランコのエレベータがひっくり返った。転びそうになる。
「馬鹿なッ。なぜだ?」
「ふっふっふ。残念ながら階段の数が合わなかったよーね! 『グリコ』はゴールはぴったりでないと上がれないルールよ。だから折り返されてしまったのよ。どうやらルールを知らなかったみたいだねブランコさん」
 A子は勝ち誇ったように次のじゃんけんに勝利すると、最上階へとぴったり上りきった。そこを計算しながらじゃんけんの手を出していたカイパーベルトA子はグリコの達人だ。これはA子のお立ち台科術だったか。
「そんな、そんなローカル・ルールは認めんぞぉぉ~!!」
 ブランコははるか下へと落下していく。
 シャッターガイが腰のロープを投げた。ロープは月のピラミッドと連結され、さらにガイは「ひとりのぞうさん」を口ずさむ。
「う、うわぁあああ~~!!」
 ロープがブランコの腰に引っかかり、ブランコ・オンナスキーはハイジのアニメのオープニングに登場するようなブランコの上に乗った格好になって、大きくグラインドして太陽ピラミッドから離れていく。
「降ろしてくれぇぇー」
「落下せい!」
 ガイは決め台詞を吐く。
「千葉だけに?」
 ウーは寒いギャグにも乗っている。
 やがて見えなくなった。勝った!
「みんなありがとう。乾杯したいわね。あいにくラムネは品切れだけど、そんな時には、子供ビール!」
 ありすは人数分、隠し持って運んでいたらしい。手品師か。特にレート氏がうまそうに飲んだのは言うまでもない。ビールを飲んだドイツ人は陽気だ。
 最上階の入り口の屋根に、ぽつんと石仏が乗っかって座禅していた。
「……この仏像は?」
「これは鎌ヶ谷大仏ね!」
 違和感ありまくり。
「大仏?」
 その大きさは二メートルしかない。
「日本一小さな大仏よ」
「ここ、鎌ヶ谷だったのか」
「そうよ。成田の十余三、十余二、十余一、十倉、九美上、八街、七栄、六実、五香、豊四季、三咲、二和、そして鎌ヶ谷の初富と……。道路標識の千葉の地名の数字をさかのぼるほど西へ、近づいていていっている。この数字は、千葉西部の開拓の歴史を示す地名なのよ」
「西部といえば開拓。それで、西部劇の意味論か……」
 妙に納得する。
「しかしなぜ恋文町、いや伏木有栖市ではないのに、不思議の国のアリス現象が外に広がっているのか。いや、ここは正確にはまだ『外』ではないという事よ」
「外ではない……」
 どういう意味なのかさっぱりである。
「匂いがしない」
 自動防御システムが停止し、最上階へ上がったありすは入口でクンクンする。
「何? まさかありす……」
 ありすはピラミッド全体に無限たこ焼きを撃ち放ち、ゲートルームを封印した。
「ここは確かにゲートルームではある。下で、ヒトモドキの製造が行われているでしょう。でも、禁断地帯じゃない」
 ありすの鋭い嗅覚は、差し迫った危機をも嗅ぎ取っていた。そしてセブン・ネオンは自分達が闘いに興じている内に、いつの間にか白井雪絵の姿がない事に気がついた。
 ピラミッドの横をキラーミン・ガンディーノのハーレーダビットソンが通過していった。その膝には、気絶した白井雪絵が横たわっている。キラーミンは雪絵を連れ去った。激闘の漂流町は禁断地帯ではなかった。そして、真のラスボスはキラーミン・ガンディーノだった。
「禁断地帯はこの先よ!!」
 ありすの言葉に、セブン・ネオンを代表してレートが言った。
「ありすさん。申し訳ないが言わなければならないことがある。我々は、ここまでです。禁断地帯に行く事はできない。同行できなくて申し訳ない」
「なぜよ?」
「セブンネオンの科術が、禁断地帯だと無効になってしまうからだよ。あたし達は存在すらできなくなる。悪いけど、恋文町へ戻るわ」
 A子の言葉は重く響く。
「もし禁断地帯で危なかったら、あんたら、舞浜・バイスに連絡しな」
「あるか、そんなもん」
「マイアミ・バイスでしょ。チョン・ドンチョンだっけ?」
 ありすは確信を持って言った。
「ドン・ジョンソンだろ。韓流ドラマか!」
 時夫はなぜか知っていた。
「分かったわ。みんな、ここまでサンキュ。ちゃんと戻れるかしら?」
「何、浮かんだトーストを辿っていきゃあ、恋文町に戻れるさ。ついでに腹が減ったらトーストを食えるしな」
 ガイが答え、こうしてセブン・ネオンの連中は恋文町へ去っていった。ちなみにメカメカフォースはというと、怪獣たちが暴れた後もサボテン・ヒトモドキ掃討作戦を続け、その後、北へと帰っていった。
「行くのか?」
 時夫はありすに念押しする。
「モチロン!!」
 ウーも頷く。

渡る世間はオニオングラタン

 漂流町の西側出口には、スフィンクスがデンと鎮座していた。
「スフィンクスって確かエジプト……」
「ピラミッドつながりじゃないの? 考えたってしゃーない」
 ありすはハンドルに手を掛けたまま睨んでいる。
 ここに太陽ピラミッドがあるからとはいえ、スフィンクスはエジプト。無節操な設定だが、問題はそいつが口を開くという方だった。
「こっから先に通すことはできぬ」
「あっそ。邪魔しないでね」
 ありすが無視してジープを走らせようとすると、
「待て! なぞなぞに答えられるかな? 答えられたら通してやろう」
 スフィンクスの目が光った。おそらく自動システムらしいスフィンクス像に、ありすは禁断地帯のゲートだと推察した。
「分かったぞ。……確か、『ネバー・エンディング・ストーリー』でも、地の果てみたいな場所に行く時にスフィンクスを通るシーンがあったはず。目からレーザーを出すんだ」
「柿ピーの……、柿の種とピーナッツの黄金比は?」
「六対四!」
 ウーがありすより先に答えた。
「チッ」
「……正解」
 それきりスフィンクス像は沈黙してしまったので、ありすはジープを発進させた。正解だったらしい。どんななぞなぞだよ。
「キラーミンはさっきの問いに答えられたのかしら? 白彩店員だった雪絵さんの知恵を借りたのか」
「いや、雪絵は甘いものしか詳しくないと思う」
「だとすると奴が自力で……。ヒトモドキとも思えないわね。まさに人間か!」

 いつの間にか日が暮れたらしい。新宿の高層ビル街は、人っ子一人歩いていなかった。時夫の隣で、雪絵はものめずらしげに東京の夜景を眺めていた。
「久々来たけど……夜も眠らない町なのに、活気がないなぁ」
 ありすのつぶやきを、二人とも黙って聞いている。疲れているせいだ。
 車は真っ暗な市街地を走っている。スフィンクスから、体感で五分しか経っていなかった。
「俺の実家の近所だ」
 時間はもうすっかり深夜だった。
 きっとスフィンクスを通り抜け、脱出に成功したから時空が少し異なったのだろうと、時夫の疲れた頭は勝手な結論をはじき出す。疲れているので、考え事をしたくなかった。
「あたしたちも泊めてもらえるかな」
 ありすが車を減速しながら時夫に尋ねる。
「あぁ。大丈夫だ。俺に任せろ」
 角に建つ、二階建ての白い家の前に、ありすは軍用ジープを停めた。
「おい母さん、時夫が帰ってきたぞ?」
 ベルを押す前から、車の気配を察した父親が飛び出してきた。
「まぁ、アパートの大掃除は済んだのかしら? そちらさんは?」
 母親は、両手を広げて父の後ろから出てきた。
「友達だよ」
 両親は喜色満面でありす達を迎え入れ、食堂のテーブルに、温かい飲み物と軽食を並べていった。終始、興奮しているように見える両親、それに妹に気おされながら、時夫は苦笑しつつ食べ物を摘んだ。
「すまんなぁ夕食を済ませてしまった後だったんだ。連絡をくれれば」
 家族たちはそっちの高校はどうだとか、ガールフレンドがもうできたのかとか、何だかんだと時夫に質問しては大笑いしている。
「今日は泊まってくんだろう?」
 父は笑いながら訊いた。
「そのつもりだけど。……友達も一緒に泊めてもいいかな」
「あー、いいともいいとも!!」
「お父さん、悪いデスネ~~~」
 家族達のテンションに、唯一ウーだけが乗っていた。時夫は適当に相槌を打っている。
「あのぅ……。泊めていただくお礼に、差し出がましいですが私も、何か、お料理を作らせていただいてもよろしいですか?」
 終始、黙り込んでいたありすが顔を上げて、突然提案した。
「ほぉ~~関心関心、おい時夫、こんな嫁さんを貰わん手はないぞ? わははは」
「ちょっと、父さん」
「そうよね~ありすちゃんでしたっけ? どうぞキッチンを使っていただいて結構よ。時夫、連れてってあげて」
 母に促されるまま、時夫はキッチンを案内した。そうしてありすが作ったオニオングラタンを食べると、四人はすっかり疲れ果て、すぐに寝た。

 夜半、ありす達が寝ている隣部屋のドアが開いた気配があって、時夫は目を覚ました。耳を澄ましていると、ありすは外へ出て行った。時夫は上着を羽織るとその後を追った。
「金時君……」
 ありすは振り返った。
「さっき町で物音がしたのよ。君も起きたの?」
「ウーは?」
「起きないのよ。それが」
 時夫は、大きな鼻ちょうちんを膨らませているウーの寝顔を想像してにやっとした。
「お父さんテンション高めね。それにお母さんも」
「う~ん、女の子がたくさん来て舞い上がってるのかも」
 そんなキャラじゃないはずなんだがな、普段は。
「寒いわね。さすがに」
「あっ雪絵……」
 雪絵は月明かりでダンスをしている。
「月光浴だ。……あれ? 止めたぞ」
 雪絵は両手をだらんとさせて、じっと満月を見上げている。
 時夫は驚いた。何か周りの景色がおかしいなと感じていたが、彼らは今、新宿の摩天楼街に突っ立っていた。実家のある住宅街から徒歩にして一、二分で副都心ビルに着くはずがなかった。まだ、寝ぼけているのだろうか? 大きな箱庭に造られた模型のような景色を見ていると、奇妙な感覚にとらわれる。
「なぁありす……」
「君も気づいているんでしょう? 実は君のご家族の寝室をこっそりと覗いたんだけど……ごめんね。気になって、何か繭みたいなカプセルに包まれていた。少し手足が見えていたけど、『それ』は人間には見えなかった。きっと、茸人じゃないかと思う」
「----えぇ?!」
 時夫が大きな声を出すと、ありすは「しっ」と言って、人差し指を唇に持っていく。
 雪絵が歩き出した。
「どこにいくのかしらね。こんな夜中に」
 どこからか、大勢の人間の声が聞こえてきた。声は次第に二人の方向へ近づいてきた。街路樹に隠れて様子を伺うと、それはデモ隊だった。夜の車道に、何百、何千という人がプラカードを手にして雄たけびを上げていた。車は全く通らず、事実上夜の歩行者天国と化している。
「真灯蛾サリーの独裁を許すなぁ~~~」
「横暴な専制君主を打倒しよう~~~」
 デモと合流した白井雪絵は、一緒になってシュプレヒコールを上げた。なぜ雪絵が? なぜこんなデモ隊が東京のど真ん中に、こんな夜更けに歩いているのかなどと、頭が混乱していると、ありすは言った。
「金時君、この東京は偽物よ!」
「何?!」
「あたし達、スフィンクスの謎にちゃんと答えたはずだけど、ベッドの中でよく考えてみたのよ。もしかして千葉北西部と北東部では、柿ピーの割合が違うんじゃないかって。スフィンクスが建っていた禁断地帯って、千葉の北西部でしょ」
「あぁ」
「北西部は、千葉都民と呼ばれる東京のベッドタウンの住人が住んでいる」
「それで?」
「ピーナッツの割合が違うのよ! 奴らの感覚は、生粋の千葉県民とは違っていて、ほとんど都民と変わらない。北東部のあたしたちより、ピーナッツの割合が少ない! つまり、郷土愛が希薄で、ピーナッツに対する思い入れがそんなにないのよ!」
 そんなことも……ないかもしれないが。
「じゃあ、正解の割合は?」
「七対三よ」

 ヴロロロ-----……。

 時夫は後部座席に座っている自身に気がついた。まだ彼らは国道を走っていた。太陽が空にある。こんな事が前にもあった。走行中、送水口ヘッドの幻術で、スネークマンション・ホテルの一室にいる夢を見たのだ。
「スフィンクスめ。騙しやがったな!」
「正解だったみたいね。禁断地帯は越えている」
 時夫が後ろを振り返ると、スフィンクスがかすかに地平線に見えた。
「もし、あのオニオングラタンがなかったら……。ありす、君が一番に気づいたんだな」
「うん」
 スフィンクスの幻術を破ったのは、ありすの科術料理だった。
「この先どうなる?」
「そうね。『見る』ことね」
 それが映画「遊星からの物体X」のラストシーンの有名なセリフであることを、金沢時夫は成人してから数年後に知ることとなる。
 禁断地帯には、彼らをずっと恋文町に閉じ込めていた、箱庭とは全く違う「何か」が三人を待ち受けている。そこには、彼らを震駭(しんがい)させる真実が待ち構えていた。一体、禁断地帯とは何なのか?!

 次回、笑撃の展開! 「マンガンの湾岸のガンマン」。瞠目して待て!

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