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「ママ、お腹大丈夫?」

「うん。
 大丈夫よ」

 理香が、心配そうに私を見る。
 私は、理香の頭を優しく撫でる。

「本当に?」

「ええ……」

 本当は、ちょっと辛いけど。

「そろそろ妹が、産まれるかもしれないわよ」

「え?」

「理香、お姉ちゃんになるんだよ」

「うん!」

 理香は、まだお姉ちゃんになると言うのがどういうことかわかっていないようだ。
 でも、理香は、元気に頷いた。

「理香。
 良い子だ!」

 私は、理香の体を抱きしめた。

 それから、数日後。
 赤ちゃんが産まれた。

 赤ちゃんの名前は、由香。
 可愛い響きが、欲しかった。
 少し無理やりかもしれないけれど……
 由香の『由』は、良しとするの『良』を『由』に変えて……
 良い縁の香りに包まれるようにと願いを込めて……
 

 だけど、やはり現実は厳しく。
 現実は、残酷だった。

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