29
誰かが、僕の体を揺らす。
僕は、ゆっくりと目を開ける。
眠ってしまったのか……
僕は、時計の針を見た。
午前の7時
「起きる起きると思ったら、なかなか起きないんだもん。
びっくりしたよ……」
「……え?」
「大丈夫?
なんかあった?」
瞳が心配そうに僕の顔を覗き込む。
「何でもない」
一瞬だけ瞳が可愛く見えた。
僕は恥ずかしいので顔を隠す。
「あ……」
すると瞳は、小さな声で声を上げた。
「真白、泣いてるの?」
「え?」
僕は、頬に手をやった。
すると涙の跡がきっちりと残っていた。
そっか、わかった。
あの泣いている子供は僕だったんだ。
そして、あの時の僕の夢。
実の姉との最後のやりとり。
両親は、僕が生まれてすぐに死んだ。
そのあと、年の離れた姉とふたりで住んでいた。
そして、それから間もなくしてその姉も死んだ。
僕は、どうやら昔の夢を見たみたいだ。
僕は、もう一度、時計を見た。
朝の7時を過ぎた頃だった。
「瞳…」
「ん?どうしたの?」
「お腹すいた……」