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5 雨

「それで〜…まぁ色々あってライバル関係であり運命共同体みたいな…感じになって」
 そう、今はこの間あった出来事を話しているのだ、私の家で。
「それって大ピンチじゃないの!?」
「そうなんだけど…でもこういう友達できたので初めてで、なんだか嬉しくて!」
「はぁ〜…本当にマイペースね、あんたわ。でも落ち込んでるから心配だったから、これなら大丈夫そうね」
「心配…してくれたの?」
「そりゃ…まぁ、一番の友達が恋してんだから、しかも…初恋だし。」
あんなにいじってたのに…心配してくれてたんだ…
「ありがとう…茜!」
「そ…そんなこと、ないけど…って!今はそういうこと言ってるんじゃないの!取られちゃうかもしれないんだよ!?」
無理やり話変えられた気がするけど…まぁいいか。そっか、取られちゃうかもしれないんだよね、ん〜。
「咲祭のとき…最後ダンスあるよね?それに誘おうかと…」
「いいんじゃない?でも…篠宮くん結構人気あるから、早めに言っときなよ?」
「うん、頑張ってみる!」
少しハードル高い気がするけど…絶対に取られたくなんかないもん!ここで勝負しないと!
 私たちは、また明日、と言い合い解散した。それにしても…いつ誘おう?
 翌日、天気は雨で、登校中いつ誘おうかな?なんて思ってたけど、雨なのでそんな気分にもなれず、トボトボと歩いていた。
 学校に着くと、蓮くんがいた。ただ、それだけで嬉しくなった。でも…顔を見るだけで緊張する…今から緊張してもどうしようもないけどね。
「おはよう、白石さん」
「おはよう、篠宮くん!」
そういえば、いつも蓮くんからあいさつしてくれるよね…たまには自分から言わないとな。
 一時間目、二時間目…と気付いたら授業が終わって放課後になっていた…まぁ、今日は帰ろう。
「あれ?傘がない?」
登校するときは傘さしてたのに…
「あれ?白石さん、今帰りなの?」
「そうなんだけど、傘がなくて…って篠宮くんも今帰るの?」
「うん、偶然だね、傘がないなら一緒に入ってく?俺と相合傘になっちゃうけど…」
これは…絶好のチャンスなのでは!?帰りに咲祭のダンスにも誘えるし!
「うん!入ってく!…あ、でも嫌じゃないの?私となんて…」
「そんなことないよ、白石さんと帰ることができて嬉しいよ」
「う、うん…」
嬉しい…!?そっか…でも良かった!
 傘の中では、少し気温が上がってる気がした。なんだか、触れ合ってる肩が熱いよ…。あ、咲祭の事話さなきゃ…あれ?なんか色々考えすぎて何から話せば…
「白石さん、話があるんだけど…」
「は、はい!」
「その…俺たちさ、同じ係だし、結構話してるよね、」
「うん…」
「だから…その…」
蓮くんの顔が赤くなってるのがわかった。よく見ると、右肩が少し濡れてる。気を使ってくれてたのかな。
「白石さんのこと…名前で呼びたいなって…」
「…え?え!?なんで…!?」
なんで…!?別に好きとか…じゃないんだろうし…でも本当にそうだったら嬉しいというか…!
「いや…特に理由はないんだけど…せっかく仲良くなったんだからもっと仲良くしたいし。」
「あ…うん!わかった!」
だよね…うん、わかってた、友達として、あくまで友達として…だよね。
「それで…佐倉、俺のことも名前で呼んでくれないか?」
 う、改めて名前で呼ばれると恥ずかしいというか、なんか特別な感じがするな…って、蓮くんを蓮くんって呼んでいいの!?
「本当に…呼んでいいの?」
「うん」
本当にいいのかな…でも、呼んでいいんだよね。
「じゃあ、れ、蓮くん…」
「う、うん…」
…恥ずかしすぎるんだけど!?!?でも…少し、というか結構進展したよね…嬉しいな…
 その後の時間はあっという間に過ぎていった。
「じゃあね…佐倉」
「うん…また明日ね、蓮くん…」
私の家まで送ってくれた蓮くんは少し急ぎ足で帰ってしまった。私も…限界…早く家に入ってこの早まった心臓をなんとかしなければ!
 その後、私はいつものようにご飯を食べ、いつものように寝支度をして寝るはずだった。
「全然寝れない…!」
今日あったことを思い出すだけでにやけてしまうのに…一人になった途端にやけが止まらなくなってしまった。それにしても…心の中で思ってただけなのに、今では口にできちゃうんだ…
「蓮くん…蓮くん…」
…まだ恥ずかしいな、学校でちゃんと呼べるかな…
 気がついたら朝になっていた。
「うぅ…少し寝不足…」
「佐倉…あんた昨夜少しうるさかったから、もう少し静かにしてね」
「お、お母さん!?そんなにうるさかった?」
どうしよう…蓮くんのこと考えてたらはしゃいじゃったのか…少し浮かれすぎたかな…
「と、とりあえず行ってきまーす!」
 そういえば、たまには自分からあいさつしてみようって思ったっけ…でも名前で呼ぶのは…恥ずかしいし…
 学校へ着くと蓮くんがいた。
「お、おはよう、佐倉」
「おはよう、蓮くん…」
 なんだか周りが静かになった気がする…けどすぐにいつもの騒がしさに戻った。
「おい蓮〜!ずいぶんと仲良くなったな〜!」
「うるさい…気分だよ…」
染咲くんと蓮くんがそんなことを話してた。そういえば、茜にこのこと話してないや…帰りに話そうかな。
 そして放課後、茜にこのことを話した。
「あんた!やればできるじゃない!すごい急接近だよ!」
「でも…提案したのは蓮くんだし…」
「それ本当に!?もしかして…蓮くんが好き…だったり?」
「なんか、せっかく仲良くなったんだからって…」
「ん〜…まだわからないね…ていうか、佐倉、何か忘れてない?」
「…あ、ダンス…」
「はぁ〜…明日言いなさいよね」
「うん…」
 完全に忘れてた…名前呼び合えた嬉しさで誘うの忘れてた…やっちゃったな。明日…言おう!

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