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1話 とあるサラリーマンの変化していく日常

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N R K
0-0「無ノ自空」
{時間の無い世界にいる。

 それは幸せなのか?

 あの時から私は選択を間違えたとは思えない。

 故にこの空間を私は気に入っている。

 永遠と言える時間、遊戯に没頭できる。

 間違えてなんかないのだ。}

『てめェは間違えるんじャねえぞ オレみたいにナ』














2044/10/6
S F T E
1‐1「とある会社員の普通の日常」
 暗闇の淵から現実の世界に帰還した。
 部屋のベットの上で寝ぼけ眼を浮かべながら、俺は先ほど見た夢を再び思い起こした。


 暗黒の衣装を身に纏い、杖を持ち、振い、光球を放ち、それをいなしている人物が何人かいた。
 俺もその中にいるがよくわからない。
 戦いが終わりを告げようとしているところで、夢は終わっていた。

 
 夢は単純明快な物から理解不能な荒唐無稽な、物まで様々だと俺は思う。
 夢には人間の願望を寝ている間に変形させることがある。
 夢の中で美味しいものを食べるや、好きな人と過ごしていた過去の記憶ないし理想の世界などの人物の願望を叶えさせてくれるのが夢なのかもしれない。

 地球は温暖化しているという噂があるが、10月と言うのに寒く感じる。
 今日はそんな異常なことが起きる前触れのような景色を感じさせる日だったと思う。


 会社へ出かける時間が迫っていたので、俺は身支度を始めた。
 と言うのも俺の職業はいわゆるふつうのサラリーマンだ。

 別に驚くことではないが最近の就職率が低下している中、俺はよく就職という平凡な人生を選択させられたと言うわけだ。
 特に考えていなかった。
 受けた会社のこともよくわからないので、とにかく働きたいですと志願したら合格した。

 なんとなく働くそんなことしか考えてなかったからな。
 自然に身を任したということなのか、深く考えていないだけだったのかも知れん。
 企業に身を置くことは、自身の内情を変化させることにも繋がるので、俺は自分の世界、見識や構造上の理屈を見よう見まねで覚えることに尽くした。
 時間を浪費して会社の利益に変換しているようなそんな感覚に襲われることもあるが、逆に利益を得るからこそ時間を使用しているとも言える。

 と言っても体力的にしんどい状態にまでなってまで仕事に熱中するのは愚かだと俺は思う。
 前提として自分の技能や心理などを行い現実での結果を残してしまい効率の良い利益を創造するのさえ皆は当たり前のようにやってのける。
 社会を理解しているつもりだが、人は人と一緒に働いて関わりを持っていると当たり前のことだが。
 現実でのスキルをいかんなく発揮している人たちは優秀で実は一番幸福なのかもしれない。


 とまあ、こんなことを俺は脳内でしゃべっている間に用意が終わった。
 さあ後は玄関を出るだけだ。つい何か独り言を言いたくなる変な俺は扉の外に向かって一歩――いつも通りかな?

 普通が一番と心にポリシーを抱いている俺はこれが始まりの第一歩なのだとこの時は夢にも思わなかった……


1-2「現実は逃げるが負けである」

 俺はどこまで逃げればいいのかわからない。
 そういう抽象的な命題のほうがまだましなのだと、見に染みるほど感じることになるとは、まさかこの時の俺は微塵にも思わなかった。

―10分前―

 今日も元気に会社に行くぞと意気込みながら駅の方に向かい電車に乗り、長い混雑した乗客の雨あられを喰らい順調に電車から降りて、いつも以上の軽快な歩き方で会社を目指しているところであった。

 そんなときにいつもの曲がり角に来た。
ここを左に曲がりさらに進み、また左に曲がると行ったところで俺の勤める会社がある。
 なんでこんな回り道みたいなことをするのか説明すると、実は左の道は今工事中で道がふさがっていて、会社への最短ルートにたどり着けないのである。
 だから俺はこんな無駄すぎる回り道をすることになったのだ。

 そこでだ、前から気になっていた路地裏の近道がある。
 そのまさに隠れ道と言ってもいい細い大人一人分しか通れない路地裏を通ることにした。

 俺はぼんやりと考え事をするのに最適ないい天気の青空の中、少し薄暗さを感じる隠れ道へと進んで行くのであった――

――俺は少しずつ細い道を進んでいる。ゆっくりとな。
 なんせかろうじて大人一人分しか通れない道だから、少しずつ進まないとスーツが摩れてほころびる。

 しかしそれにしたって狭いな、この道は……これじゃあ進むのが遅いから近道した意味がなくなりそうな……

 せっかくの俺の少ない頭から出した名案が無意味になるかと思っていたら、少し道の幅が広くなっていった。

 これなら行けるぞ! と叫びそうになる自分は無視して俺はできるだけ早足で進もうとしたが、その時事件が発生した。

 たぶん忘れないだろう。
 自分の記憶力にはいささか不安が残るが。

「待ちな!」

 俺はあと少しで会社の道に出るはずだった。
 だがそこで知らない人物に話しかけられた。
 いきなり話しかけられたことにまず驚いたが、もっと驚いたのはその相手が小さい風貌(ふうぼう)の少年二人組だったことだ。
 まずなぜ話しかけられたのか心あたりもないし、なにか物を落としたわけでもない。

 ならばこんな路地裏であることと言ったら一つしかなかった。
 俺はいつもの倍ぐらいの速さで思考を加速させていたつもりだった。

「やあ初めまして、さっそくで悪いんだけどお金くれないかな? お兄さん」

「すまんなぁ兄ちゃん最近遊んでばかりで足りないんですよ金が。だから恵んでくれるとうれしいですわぁ。万札二枚ほどでいいからマジで頼みますわぁ」

「なっ 冗談じゃない! なんだ君達は学校はどうした! 大人をからかうなんてとんでもない子供だ!」

 しかしなんでこんな年はもいかない少年? (小学6年と中2ぐらいか?)
 がカツアゲまがいなことを……しかーし俺は大人DA! ここであわてないやつが真の大人なのDA! さあてここから上手く切り返すとするKA! などとテンションを少し上げてみる。

「で、君達みたいな子供がこんな馬鹿みたいな犯罪行為をするなんておじさんは悲しいぞ。いったい学校でどんな教育をしているのか……」

 よし! 完 璧 だ!

 自分で言うのも変だが模範的なテストの回答を見ているかのようだ。
 これでこの子供達も大人しく引き下がってくれるだろうと思っていた。

 この時なぜか俺はいつもより頭が回らなかったのか

変な夢を見たせいなのかなと自分に言い訳して見るか――



 ――雲一つない快晴の朝空を見て、俺は自分のこれまでの過去を振り返っていた。
 まず、小学時代俺は虐められていた。だけど俺をかばってくれるやつもいた(はず中には無視したりするやつもいたが)。
 なので俺はそのような虐めを乗り越えることが出来た。
 中学時代は引っ越して、不慣れな土地で習慣も言葉も微妙に違う世界で俺は仲間を作ることが出来た。
 虐めはあまりなかったのだが、喧嘩はした。気にならない奴らだったが少し注意しただけで俺に牙を向けた。
 そして殴る蹴るの暴行を受けた。最初はやられるばかりだった俺も次第にやり返すようになった。
 そしていつの間にか俺に喧嘩を吹っかけてくる奴らがいなくなったので平和が戻った。

 高校時代はクラスで何故か急に無視されるようになり、俺は学校が怖くなり引きこもりがちになった。
 正確には学校にはちゃんと行っていた。でも家に帰ると自室に引きこもりゲームばかりしていた。
 そこから三年間はたぶんゲームばかりしていただろう。だろうと言うのは何故か正確に思い出せないからである。
 ほんの5年前のことなんだが何故だろう? ゲームばかりしていたので頭がおかしくなったのだろうか?

 そこで俺は現実の世界に引き戻された。中学生Aが話しかけてきた
「で、おにいさん万札二枚ぐらい出す気になった? 普通出すよね、二枚くらいは……そのくらいは持っていてもおかしくないと思うし」

 このとき俺はこの中学生は失礼な奴だなという不快感という気持ちしかなかった。
 人の財布の中身を推定するなんてなんとも失礼じゃないか。
 子供だから仕方ないことだと俺は諦めたように許してしまうが少し腹が立った。
 だから苦手なんだよ子供は身勝手なことをよく言うし。
 俺は子供が嫌いな訳ではない、苦手なんだ考えてみても分かると思うが
 少し子供は俺達大人と違う、本音をズバズバ言う。
 しかもあまり利益を追及せず、やりたいようにやるような傾向があると 俺は考える。

 だから、俺達大人は困惑する、子供の突拍子もない発想力にな。

 子供とは大人に変化する前の変身前の状態なのか?
 それとも大人はあくまでも子供と実は同じで体だけ成長していて中身は実は子供と変化してない。
 内包的な意味では大人も子供も同一の存在だと考えられるかもしれない。
 だが、大人と子供はやはり違う。
 判断能力や物事を考える理解力など比類なき度合いを生じさせる。
 現実問題、時間経過による変化だと思われるが、本人の知識量の追及具合などもあるのではないかと俺は思う。

「で、どうしたの? おにいさん? さっきから黙って? 考えことなのかな~? つまりやっとお金を恵んでくれるつもりになったのかな?」

「とにかくですな。俺達は金が必要なんですよ。さっそくだが二枚もらいましょか。にいちゃん恨まんといてな」

 子供たちが俺に脅し文句をふっかけてくる。俺は心に余裕が出来ているとまで言えないが、考え事をするぐらいの余裕はあった。


 だけど今はこの状況を看破する方法を俺は思いつかなかった。
 あまり考えず思考停止だが反撃の言葉の杖を揮った。

「俺は君たちみたいな精神的に幼いまだ社会もしらない、困難を乗り越える方法を知らないそんな君たちに施しをやるほど甘く生きているつもりはない」

「ふーん……そうくるか、でもね おじさんにはおれたちに逆らえない理由があるんだよねぇ……」

「そうそう、アニキを舐めないほうが身のためでっせえ」

 そう言うと小さい子供のほうが俺に衝撃的な言葉を吐いた。

「あんたの熟読書は【能力者の持つ幻想現実の共同感覚】著:マーベラル・ロードテラー、訳:森嶋正治、【現実を構成する自分だけの理想の幻素的想生理論】著:ララ・ムルベル、訳:鳳麗でしょ?」

 俺の熟読書を二冊当てられた。
 偶然とは思えなかった。

 俺を前から尾行して俺が本を買うところを確認したと言う現実で少し考えつかない現象を信じるに値しなかった。
 仮定だが、あの子供は超能力者だと推測するしか俺の中では考えられなかった。


1-3 「子供の超能力者」

 第一印象は普通の一般的中学生ぐらいより背が低く顔つきは少し幼さがあるが、かなり大人を舐めているような表情で人を見るような気がする。
 でも少しだけその印象とは逆に頭が良さそうで、穏やかだがいたずら好きで天使ともとれるし悪魔にもなりそうな。
 そんな想像(イメージ)を持った。
 もう一人の尾宇野とか呼ばれていたやつは何か擦れてるような気がする目付きのあまりよろしくない不良中学生と言ったところか
 さて相手が超能力者というだけでやっかいなのは事実だとしてこいつらの目的は何だろうか。

 金が目的だと普通は思えない、異常に発達した子供の悪知恵は大人の理解を超える時があるというのが事実だと思う。
 とりあえず俺は聞いてみることにした。

「なんでおれがおまえの弱味を知ってるかわかるかな~わかるかな~♪ 教えてあげようかな~……チラッチラッ☆」

「……………………………………………」

「え~~~~~~~~!? 無反応なの!? ちょうはつしたのに??」

 俺は冷静に中学生の話を聞いていた。ちょっと頭が良さそうだと思ったのは気のせいだった。
 熟読書を当てる能力とはどんなものだろう?

 普通に考えれば対象の記憶を掘り起こす記憶解析系の能力だと思われるが、俺は前提となる超能力者の全能力情報を脳内に留めていないので判断が付かないでいた。

「だったら……これで決まりかな~……あなたの嫌いなものはわさびに――頭の悪い人か……結構いい性格しているんだ~……」

 中学生Aの的確な趣味嗜好の暴露を俺は特に反応を見せることなく聞き流していた。
 

1-4「いつの間にか増えていた超能力者」

――「明日はどんな風に走れるかなぁ~ 」――

――「マジ俺なあ昨日紙コップ浮かせたんだってぇ」
「マジで!?」 「マジマジ、オオマジ出しい~」――

――「それで○○○ちゃんを能力科にねぇ……結構厳しいらしいわよ能力科って……」――

――「あーいいなあ俺のクラスは超能力者が半分もいる中で、俺はいまだに超能力無いとか……俺も超能力者になれたらいいのになあ~……まあ帰って寝るとするか」――

――場面は今の今まで中学生Aこと美知(みしる)は俺に自分の能力の概要を話していた。

 まず自分の能力はある対象地点Xを通る人物の情報を得ることが出来て
その対象の情報は趣味や苦手なものなどを手に入れるし、相手のいわゆるパラメーター

つまり相手の力の度合いがだいたい測定出来るらしい。どこまでが真実なのかわかならいが取りあえず話半分で聞いておいた。
 自身の能力を他人に明かすなどと言う愚かな行いをしていることに気付いてない中学生Aこと美知(みしる)という人物は頭が一見緩そうだと思えるが。
 そんなことはないと想像する。
 むしろ道化を演じている面をあえて、見せて相手を油断させる戦法だと俺は予想していた。

「おれの能力の危険性を理解したよね。だからさあ…………私と共に歩まない? 私ならあなたを導けるし、あなたはこれから道を選ばずとも進めるから」

 俺は美知の言うことを頭の中で反復する。だが、言いたいことの根っこが掴めない。

「俺に何をさせたいんだ? あんたは俺と何をしたい?」

 美知は不敵な笑みを浮かべて、マネキンよりもリアルな無表情な真顔で意外な言葉を発した。

 その発言を俺は上手く聞き取ることはできなかった。否違う、聞いていたが頭の中でそれが別の何かに変わった。
 
 その後、美知と尾宇野はカツアゲなんかどうでも良いみたいな感じで俺の後ろに進んで行ってそのまま見えなくなった。
 俺は走るしかなかった。いや逃げたのだ、とにかく走り去るしかなかった。

 現実は歪められることがしばしあるが、それはあくまでも観測的な意味合いを持っているだけで、事実と異なる。
 嘘という物は虚構の存在だと論させることもあるが、それは間違いだ。
 人間の現実の体験を自身のフィルターを通して見ている。
 体験を実感するのも本人の体感力も人それぞれ違うが、現実と虚構の存在を両者均衡してバランスを取り合っている。
 虚構と現実の狭間を行きかう嘘の中にある真実を混ぜる手法などもある。
 現実の虚構的な部分は誰しも持ち合わしているし、虚構の中にも現実はある。
 科学の理論や経験や知識に虚構を混ぜるとか現実での無限とも思われる人の精神を人は理解できない。
 現実は単純ではない。
 妄想は現実と違うのだろうか? 人間の想像と現実の事実は異なるのか?

 結論は出ないが、世界はそこに存在する。
 世界を世界足りうる上で現実に有る虚構を世界に定義させるのは理解に追いつけない。
 世界は微妙に変化していき、常に解答と言える事実は残らない。
 時間により思想や法律、人間が世界を現実と重ねていてる面もある。
 ハルマゲドンが起きて文明がリセットされた場合、現実の価値観や常識に変化は有るのだろうか?
 事実時代ごとにその常識は変化している。
 
 



1-5 「能力者は快適に暮らせることもある」

 俺が高校に入学する時は世間は超能力者のことはあまり関心が無く、一部の場所では盛んに研究や発展が行われた。
 というのも俺が入学した高校は普通科ではなく超能力特区にある高校だった。
 超能力特区とは、日本でも数が少なく数えるしかない超能力者を育成することに特化した地区だ。
 俺はどうしても当時超能力者になりたかったのか、親に学費はアルバイトでほとんど工面するからそこに転入したいと希望した。
 母親は「あなたがそうしたいのならそうしなさい。学費は半分はこちらが出しときますから」と言った。
 
 そして俺の超能力特区にある通称『無限異能都市』場所は俺の住んでいるところからリニアと粒子加速バスを併用しても4時間ぐらいのとこにある。
 そこに行くことになる。俺はバラ色の三年間があると信じて疑わなかった。
 しかし最初に俺は能力開発という独自の学科を受けたのだが、それでも超能力が発現しなかった。
 しかしクラスの連中は半数ほど超能力者になった。俺は否能力者という超能力者として完全に否定をされる烙印を押された。
 それから…………毎日勉強はした。少しは努力したつもりだったが、周囲の能力者達が俺のことをイジメてきた。
 それはいまでも苦い思い出だ……それから――「 」普通の人生を過そうと考えるようになった。
 そして月日は少し過ぎて

 俺はサラリーマンと言う今では珍しい普通の職業に就いたのである。



1-6「要らない能力はたぶんない……はず」

俺の朝は早い。まず顔を洗いに洗面所に行き、トイレも済ます。
 そして朝食作りが始まるのだが、いかんせん料理は少し苦手な部類に入るので、ご飯、味噌汁、昨夜の残り物、納豆ぐらいである。
 
 突然だが今日は会社の行事の一つで祝日なのに能力測定の日なんだ……
 この能力測定は一言で言ってしまうと、その人本来の超能力を測ることなんだが、実は違うらしく、政府に対して反社会的な超能力者を探すとかあまりにも強い超能力者は政府の管理下に置いて、自由を奪うとか、そういう内部関係の裏事情なのか、ただの噂なのかわからない不確実な情報も小耳に挟むことがあるが、俺にはあまり関係無いことなんだ……

 そりゃ当たり前のことなんだけど、能力者がいるなら無能力者もいる。
 最近はどのメディアも能力者のことをついちょっと前まで取り上げていなかった反動か良く知らないが、連日連夜能力者の取材や能力者を集めた筋肉番付的な番組、ついには超能力者タレントとかいう意味わからん職業まで出てくる始末。
 と に か く、最近の無能力者に対する風当たりはあまりよろしく無い。

 人口当たりの超能力者の数なんてまだそんなにいないはずなのに。

 つまりテレビはつまらないのだ昔に比べて
 ちょっとした流行なのに大げさに取り上げて放送したり、発言を細かく切り取って、必要なところはカットしたりして重要な発言を放送しない。

 こんなことばかりしているから年々テレビの視聴率が下がるのも納得する。
 そして長々と愚痴を浮かべてしまって少し頭が疲れてしまったが、俺はそろそろその能力測定に行かないといけない。

 時間は指定されてないが、測定は体力測定やESPカードを使ったり、よくわからん試験もあって3時間ぐらいかかるからできるだけ急いで行くしかない。
 俺はカロリルメイツを片手にまたいつも通り能力測定もとい検査に向かった……

――着いた……ここだ。
 いつ見てもここはにぎやかだと感じさせるほどだ
 まるでアミューズメント施設のようだといつも思う。
 たくさんの人がごった返しになることが当たり前な場所だ。

 何せ測定は政府公認の場所でしか受けられないし、そんな場所は限られることにもなるので、一ヶ所に集中する訳である。
 俺は今整理券を貰い順番待ちをしている。
 番号は、ええと……
 126番!? 前回は60番台だったのに、来るのが遅かったか。
 やはり一年に一回の測定なので、みんな考えることは一緒か。
 そして俺はここに描くのも馬鹿らしいほど怠惰な時間を過ごした――


――そして時刻はあれから3時間、もう帰っていいですか? と聞きたくなるほど憂鬱な気分になっていた。
 ん? 建物に入った時に貰った紙には測定振替日があると書いていた。

 これは誤算だった、今日必ず受けなくても良かったようだ。
 だから前に並んでいた人がぞろぞろ帰っていったのか。
 さて帰りたいのはやまやまだが、さすがに3時間はもう戻ってこないし
 まあとりあえず受けて帰ることにすると俺は考えた――

――測定をし終わったのだが、何故か別室に呼ばれた。勘弁してくれよ今昼の2時回った所だぞ、俺は帰りにどこかでラーメンでも食おうと思ってたのに、さっさと測定とやらを終わらしてくれ! と思いながら俺は別室の扉を開けた。

 そこには初老の男が面接官のように座っていた。
 こいつが測定官の一人かな? と思い俺は正面の椅子に腰掛けた。

「あなたが最後の測定官ですか?」とりあえず俺は質問してみた。どうせ最後にちょっと会話して終わりなんだろ?

「…………あっ…………えーーと、どちらさんじゃったかなぁ…………?」

「…………………………」

 あまりにも予想外の返答に俺は言葉を失った。
 まだボケるには早い年齢だろうが、どうみても60代ぐらいにしか見えないぞこの男性は。

「いえ、あのですね、私はここに、能力測定に来ていて、最後に別室に呼ばれたんです!」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・

「ああ……そうじゃったそうじゃった。確かに儂はここの測定官じゃったか。……いやぁすっかり忘れておった」と悪びれた様子も無く俺に返答した。

「すまんのぅ~若いの」

 どうやら最後の測定官であるらしい。いちおう信じることにした。つうか思い出すの遅いから!

「それで、最後にどのような測定をするのでしょうか? もう測定は終わったと思っていたのですが?」

「いやいや測定ならもう終わっとるわい。ただなぁ……ちょいっと儂の質問に答えて欲しいだけなんじゃがのぉ…………」

 というわけで、俺はちょいっと質問に答えた。
 内容は好きなものは有るか、嫌いなものは無いのか、やおぬしの性格を漢字一文字で表すとなんだとか、完全に年寄り趣味のあるものまであった……
 
 そして最後に

「ふむ……おぬしがどのような人物かほんのちょっとわかった気がする……」

 そりゃ初めて会ったばかりだしなと考えていると、爺さんがとんでもないことを口にする。

「実はな今回測定した結果…………おぬしが超能力者になっていることがわかったのじゃ!!」

「そうですか……………………うん、…………はい?」

 俺は忘却する前の段階で爺さんの発言を考えた。
 結果、事実受け入れる前で思考が停止した、つまり混乱していた。

 俺は爺さんに聞き返した。どのような能力なのかと。
 すると爺さんは答えた。若干覚束ないような言葉の隅に濁りがあるように言いづらそうな感じで。


「おぬしの能力はなぁ……ふむぅ……これ本当に超能力に入るんかのぉ……」


「おぬしの能力を一言で言うならば……………………『逃避』じゃ」



 俺は心と体にまっさらな白い穴が空いたような心情になった。
 その穴は無限に繋がっていて、どこまでもどこまでも無情なる白の穴が開いているように見えた。
 だが裏側は黒であり、どこまで行っても黒い穴が空いて表側と裏側にいったりきたりして、外に出られない。
 地獄もぬるまゆに感じるほど穴の開いた空間にいることを想像したら寒気がした。
 コインの裏と表の違いは模様でしかないことと同じように違いなんて無いに等しかった。
 

――「それで俺、もう帰ってもいいですか?」

「おお、そうじゃったな……もう飯時をとっくに過ぎてしまっておるからのぉ。お主はもう帰っていいぞ」
 
 爺さんが最後に一つ付け加えるように言った。

「おっと、一つ言い忘れておったわおぬしにこの能力認定証とこの端末いわゆる対戦者捜索装置を渡そう」

「あ、はい、ありがとうございます」

「その対戦者捜索装置はな能力××××に――するために必要での……ただあくまで――は××で……」

「て、あの男もう帰ってしまったのか、儂の話ちゃんと聞いておったのかのぉ……」

1-7「そしてそれはあくまでも序章にすぎなかった……」
  
 点滅する信号機、スピード違反を取り締まるパトカー、ちり紙を配るアルバイトなどを後にして竹男は駅に向かう。
 闇の日暮れが迫ろうとした。ただ光の夜明けも同時に交差する十字を傾けたかのように反面、希望と絶望。
 最弱と最強。醜悪と美麗。竹男は重なり合う運命の絆の糸を手繰り寄せることをしなかったが、相手の方から糸を垂らしてきたのである。
 竹男はその糸を掴むしか選択肢はなかった。彼は戦いに巻き込まれるが、同時に助けをする側、される側の両方を任される。
 いいなれば黙示録のような物語が始まるのであった











X-X

 進とした揺るぎ無い時間を追い越すほどまで、閉塞な俺の身の混迷が底知れない現実を歪ませる。
 数多の選択肢を選択させようとする運命という名の役割を――

 俺の世界は俺しか知らない。
 故に孤独と言う真実の意味を本当の意味で知らないかもしれない。

 でも、戻れないところまで行ってしまったら人は駄目になってしまう。
 時間は過ぎ去れば、生きたあかしこそ残るかもしれないが、駄目になって罪を背負うとこまで行くと、俺はこの世界を否定したくなる。

 最後には全てのことは無に帰る。
 だから、と言ってあきらめて、何もしないというのは馬鹿のやることだと言いたい。



 
 終わりゆく世界――変異させるのは自分しかいない。


 立ち止るな―――怖がらずに行けばまだ間に合う。

 終わってると思い込む、それが愚かなことだ。

 限界を設定するんじゃない、そして――

 間違った自分を創るのは絶対にしてはいけない。

 だってそうだろ? それは本当の自分自身じゃないからさ。

しおり