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第十三話

「それより、うら若き女子が、無垢な額を汚すのはよろしくなくてよ。さあ、これで拭きなさい。あれ?いませんわ。どこに行ったのでしょう。どこかで見たことがあるような、ないような。」

 ハンカチを握ったままのオヨメ姉。

「ハンカチ姫は終わりよ。あの子はもうここにはいないわよ、大悟。・・・あれ?どうして、馬嫁下女をそんな風に呼んだのかしら?」

「楡浬様。ちょっと引っかかりますわ。宇佐鬼大悟。・・・これってオレの生前の名前では?いや、オレは死んでいませんわって、自分へのツッコミどころはそこではありませんわ。つまりオレが誰かというと。」

「お、思い出したわ!馬嫁下女は、下女じゃなかったのよ。」

「そうじゃないですわ!オレは宇佐鬼大悟ですわ。正確には宇佐鬼大悟だった女子ですわ!つまり、オレは宇佐鬼大悟で、元は男だったのではありませんこと?おぞましいですわ!」

「そうよ。実に阿鼻叫喚な事実発見だわ。いきなり寒気がしてきたわ。」

「そこまでひどく言わないでくださる?」

「自分がおぞましいと言ってるんじゃない。そうだわ。アタシは馬嫁のご主人の神様だったはずよ。」

「それは否定したいところですけど。でも違和感だらけで、前を歩いているのか、後ろを向いているのか、わからない世界よりはマシかもですわ。」

「圧倒的に絶対的に究極的にアタシがご主人様よ。今の状態は下戸苦情なんてものではないわ。」

「下戸苦情という用語は慣用句ではありませんが、酒飲みの気持ちを察するとこういう感情が湧いてきますわ。」

「未成年が言うな!」

「オレたちには大きなミッションがありましたわ。それがすべての解決につながるような気がしますわ。」

「そうね。まずはアタシの神痛力を上げるための、神楽天ポイント稼ぎ、神経垂迹よ。神頼みをどんどんさせて、それを叶えて、カードレベルを上昇させるのよ。そして、ご主人様のポジションを不動のものにするのよ。あははは。」

「最後の計画はすでに実現していますわよ。」

 大悟は楡浬を背中に乗せて、おんぶズマン制度を遂行中であった。
 

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