第四話
「べ、別におふくはロリコンじゃないから、若い子はストライクゾーンに入らないんだよぉ。これはローブの中にブラックホールが見つかったから、監視しているだけなんだからぁ。」
「ツンデレしても誤魔化すことはできんぞ。」
「嘘つきは大人の特権なんだよぉ!だら~。」
「こら。このままではまるでこのババがおもらしギャルゲー主人公になってしまうではないか。」
「幼女に十八禁はダメだよぉ。」
「誰が幼女じゃ!この豊満な肉体を見よ・・・って、いつまでローブ内で全身検診をしているんじゃ?」
「う~ん、脳内が五臓六腑カタルシスさせるぅ。」
「しかし、こうして、神たちから教育という大きな情報伝達手段を奪うということがどういうことか、馬主人たちは分かっておるのかのう。」
寿老人が不安を抱いている中で、授業は淡々と進められていた。寝息を立てている教室内の生徒たちが、どこまで授業内容を真剣に受け止めているかは不明である。
次の授業は美術で、教室を移動する女子生徒たち。生徒たちは廊下に出ると、大交通渋滞を起こしていた。通路を阻むものは豪華な戦車のような牛車であった。
牛車を引いているのは、灰色メイド服である。
「もっと早くこいでよ。」「授業に間に合わないじゃない。」「本当に牛神様ね。」「これが本当の牛車神なのね。」「鈍牛という言葉はこのためにあるものだわ。」
車内の女子生徒たちは、優雅に扇子で顔を冷やしながら口だけを激しく動かしている。
労働者たる神様牛たちは額に汗して息を切らしている。
「こんなのろまじゃお賽銭はあげられないわ。」「昼ごはんも同罪で抜きだね。」「どうしてもお賽銭ほしかったら、あたしの靴をなめなさい。その姿勢をキープしたままでね。」「それいいわね。」「あははは。牛神様いじめ、いや教育は楽しいわ。」
灰色メイド神様牛たちに無理難題を吹っ掛けて、完全に遊んでいる女子生徒たち。
一方的な攻撃にも見える女子生徒たちの命令に、額に皺を寄せながらひたすら耐え忍ぶ灰色メイド神様牛。
「牛を神様と信じる宗教があるよね?」「ヒンズー教のことでしょ。」「そんな下賤な宗教、信じらんない。」「そうそう。ヒンズー教徒は日本への入国禁止よ。」「北の暴君独裁国家に送りこむといいわ。」
神様牛への非難の声が聞こえなくなることがないまま、美術室に到着した三人寒女の女子生徒たち。むろん、三人寒女も牛車を引いて、呼吸を荒げている。
「いつもながら神様の酷使は限度を超えてるような気がしますわ。神様が神頼みを聞かなくて、存在意義がないから、こうなってるんだから仕方ないですけど。ウチにもいる神様も同じようなものですわ。」
牛車を引っ張る楡浬にオヨメ姉の声は届かなかった。
「このアタシが馬嫁下女の使用人になっているなんて、当たり前のことなんだけど、どこか変なのよね。」
楡浬は牛車を引きながらひたすら疑問が脳内を支配していた。