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妨害

目が覚めると、知らない天井が見える。引き戸の開く音がし、白衣を着た男性が俺の顔をのぞき込んでくる。俺は、
「どちら様ですか?」
と尋ねる。男性が、
「医師の大槻です。お名前は言えますか?」
と言う。俺は、
「烏丸京一。55歳。確か・・・神社の階段から突き落とされたような・・・」
と言う。大槻医師が、
「ええ。脳震盪と足の骨折で済んでよかったですね。その件で警察の方がお話を聞きに来ています」
と言い、病室を出て行った。入れ違いに、2人の男が入ってくる。そのうちの1人が、
「どうも。沖縄警視庁の木村です。烏丸京一さんですね?」
と言った。俺は、
「ええ。お久しぶりです。木村さん」
と言う。この木村と言う刑事。以前会社でちょっとした事件があった時、会っている。木村刑事は驚いたように、
「覚えていらしてたんですね。では、階段から落ちた時、犯人の顔は見ましたか?」
と言う。俺は、
「いいや。顔は見なかった。でも、外国人なのは分かる」
と言った。木村刑事が、
「なぜです?」
と言う。俺は、
「あの神社には滅多に人は来ない。だがあの日は外国人が2人いた。そのうちの1人と考えれば自然だ。あと、片方は米軍の軍服に身を包んでいた」
と言った。木村刑事は、
「突き落とされるような憶えはありますか?」
と言う。俺は、
「ああ。俺が今度平和大会でスピーチをすることは知っていますね?」
と言った。木村刑事は、
「ええ。終戦に関するスピーチだったかと」
と言う。俺は、
「そこで俺は・・・ひめゆり学徒隊の事で国家が隠匿している重大なことを発表する。それは日本とアメリカの信用を失墜させる可能性のある重大な秘密だ。今ここでは言えない。絶対に公表しなければならないんだ」
と言った。木村刑事は、
「なるほど・・・つまり、今回の犯人はアメリカの差し金と言う事ですか・・」
と言う。恐らくそうだろう。国家間で秘匿されている重大なことであり、これは日本とアメリカを窮地に追いやることができる。何故アメリカが関係してくるかと言うと、アメリカの士官のうち数人も俺の母・もう一人の女学生を慰安婦扱いしていたというとんでもない事実まで資料に含まれていたのだ。現在資料の入ったディスクは、自宅の金庫室に保管してある。自宅の警備システムはうちの系列の警備会社の独自システムを採用しており、簡単に破れるシステムではない。娘たちに任せておけばさらに安心。俺は、
「ああ。たぶんそうだと思う」
と言った。木村刑事の横にいた若い刑事が、
「烏丸さん。絶対にそのことは言ってはならないと思います」
と言い出す。俺は、
「いいや。この話は絶対に発表する」
と言った。

そのころ、豊見城の烏丸邸敷地内の別館では、源一・京志・省吾が話をしていた。この事件に関する話だったそうだ。突如として、ヘリコプターのローター音がする。別館に突如炎が放たれる。幸い、中にいた3人は地下通路から本館に避難して、助かった。別館は全焼した。

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